PLAY/GROUND Creation #3『The Pride』が2022年7月24日(日)に東京・赤坂RED/THEATERにて開幕した。

『The Pride』はイギリスの劇作家アレクシ・ケイ・キャンベルが2008年に執筆し、イギリスで最も権威のある演劇賞とされるローレンスオリヴィエ賞を受賞した戯曲。日本ではTPTが上演して以来、約11年ぶりの上演となる。

1958年と2008年のふたつの時代を交錯しながら展開していく本作。50年間の空白を挟み、違う時代を生きる、同じ名前を持つ3人の男女が織り成すラブストーリー。
今回はPLAY/GROUND Creationの代表を務める井上裕朗の演出のもと、side-Aと side-Bのダブルキャストで上演される。
ここでは初日を前に行われたゲネプロの様子を舞台写真と共にレポートする。


劇中の登場人物より実年齢が年上で、深みのある演技が魅力的なside-A。
オリヴァーを演じるのは演出の井上裕朗。強くて弱い、繊細なオリヴァーを忠実に、緻密に演じる。池田努が演じるフィリップは年相応の余裕と落ち着きのある大人な雰囲気。陽月華はシルヴィアを愛に溢れた強い女性として演じる。鍛治本大樹は時にはゲイの男性を、時には冷酷な医者を、見事に演じ分ける。

反対に劇中の人物より実年齢が年下で、若さ故の純粋さが輝くside-B。
岩男海史のオリヴァーは陽気ながらも垣間見える弱さが愛おしい。池岡亮介演じるフィリップはとても不器用で、その人間臭さが魅力のひとつである。福田麻由子が息を吹き込むシルヴィアは優しく柔らかいムードの中にある芯の強さが素敵だ。 山﨑将平は明るい雰囲気と丁寧な演技で舞台を支える。

1958年フィリップシルヴィアは夫婦関係。そこにシルヴィアの仕事仲間のオリヴァーがやってきて、オリヴァーフィリップは恋に落ちる。
だが、「同性愛は病気」とされたこの時代。そんな当時の社会のタブーに立ち向かう活力のあるオリヴァーとは対照的に、フィリップは自らの立場と社会から向けられる視線に苦しむ。

2008年、オリヴァーフィリップは恋人同士。だが、オリヴァーの行動が原因で2人は別れてしまう。
他の男性と性的な関係を持つことがやめられないオリヴァー1958年の出来事からどこかに罪悪感を抱えたまま2008年を生きるフィリップ
2人の共通の友人であるシルヴィアはそんな2人を見かねて、彼らをそれぞれプライド・パレードに誘うのであった。

同性愛者の人々の声。1958年、2008年、そして今。
作中で描かれるのは時代の経過、それに伴う社会情勢とともに変化していくジェンダー観と、それに翻弄される登場人物たち。
今もなお、オリヴァーフィリップ達は戦いの旅路の途中にいる。
彼らに起こる苦しい事象に思わず目を背けたくなる瞬間もあるが、彼らの抱える痛みは決して他人ごとには思えない。
登場人物と俳優それぞれが自分とそれを取り巻く社会に向き合い、どう生きていくか、どう生きていけばいいのか、足掻き、時には迷いながらも模索していく姿は、観客である私達に光を与えてくれる。自由を求めて戦い続ける彼らの叫びに劇場が揺れた気がした。

舞台美術、音楽、照明と濃密な劇世界に魅了された140分、愛と尊厳のための物語。
side-Aと side-Bともに圧巻の上演であった。
ぜひ劇場に足を運んでみてほしい。

文=中田夢花  写真=保坂萌

演出・side-Aオリヴァー:井上裕朗 コメント

PLAY/GROUND Creation #3『The Pride』無事に幕が開きました。10年ほど前に出会い、強く心惹かれたこの戯曲を、自分自身の手で上演することになるだなんて夢にも思いませんでした。感無量です。

この作品は今を生きる僕たちにたくさんの大切なことを教えてくれます。人間の尊厳について。他者の立場に身をおいて共感することについて。現在に繋がる過去の歴史に思いを馳せることについて。未来への希望を持つことについて。

才能と魅力に溢れる俳優陣と、とことんプロフェッショナルなスタッフ陣とともに、この作品を生み出せたことを誇りに思います。この戯曲の持つ力を、一人でも多くの方に届けられたらと願っています。

PLAY/GROUND Creation #3『The Pride』舞台写真