住宅購入の平均年齢は40歳程度ですが、できるだけ早くマイホームを実現すれば、それだけローン返済から解放される年齢が早くなり、人生設計が楽になる……そう考えて、若くして持ち家を叶える人も珍しくありません。「年齢があがれば、給与も増えるだろうし」。そう考えて、ローンを利用するケースも多いでしょう。しかし目論見通りにいかなかったら……みていきましょう。

「自分の家を建てた」…20代での強者も

総務省平成30年住宅・土地統計調査結果』、全国に「持ち家」は約3,280万2,000戸あり、持ち家率は61.2%。さらに持ち家について、住宅の購入・新築・建て替え等別にみると、「新築(建て替えを除く)」が990万2,000戸で持ち家総数に占める割合30.2%。続いて「新築の住宅を購入」で738万9,000戸で全体の22.5%。マイホーム、「自分の家を建てる」という人が多数派を占めています。

国土交通省令和3年度住宅市場動向調査』によると、新築注文住宅(土地を購入し住宅を新築)購入者の平均年齢は40.4歳。土地と建物の総額は平均4,606万円で、そのうち平均3,409万円はローンを活用しています。返済期間は、住宅建築費で32.1年、土地購入費で33.8年と、多くが30年近くかけてローンの返済をしています。

ただ、ローンの完済を考えると、できるだけ早く終えたい=できるだけ早く家を建てたい、という人も多いでしょう。総務省『家計調査』(2021年)によると、20代でマイホームを手にしている人は33.6%。

――20代の3人に1人が持ち家!?

もちろん、相続などで手にしている人も多いでしょう。そこで、持ち家のうち、住宅ローンを支払っている人の割合をみていくと、20代では25.6%。20代でローンを完済した、という人はそうそういないでしょうから、単純計算ですが、20代でマイホーム購入を実現させた人は8%程度だと考えられます。

20代であれば、返済期間を長く設定できることができますし、これから収入もあがるので、金融機関から「返済能力、良好!」と評価されがち。20代ではまだまだ収入も心許ない、という人も多いでしょうが、若くして家を持つことのメリットも加味して考えていきたいものです。

【年齢別「持ち家率」の推移】

~29歳:33.6%/25.6%

30~39歳:65.0%/50.1%

40~49歳:77.7%/52.9%

50~59歳:85.1%/39.7%

60~69歳:88.8%/16.5%

70歳~:87.3%/9.1%

出所:総務省『家計調査』(2021年)

※数値左:持ち家率、数値右:持家のうち住宅ローンを支払っている世帯の割合

これから給与は増えていくから…売り文句にのせられ、借入をしたけれど

20代後半の平均年収は450万円程度。住宅ローンを活用する際、年収に占める返済額の割合である返済負担率は、年収400万円以下であれば30%、年収400万円以上であれば35%といわれています。20代後半でローンを利用するとなると、年間155万円、月々の返済は13万円が限度といったところでしょうか。

【年齢別「月収」と「推定年収」】

20~24歳:254,400 円/3,399,300 円

25~29歳:306,500 円/4,476,500 円

30~34歳:355,500 円/5,274,100 円

35~39歳:407,800 円/6,168,400 円

40~44歳:442,100 円/6,760,900 円

45~49歳:478,600 円/7,385,100 円

50~54歳:528,600 円/8,315,300 円

55~59歳:523,700 円/8,145,400 円

60~64歳:392,700 円/5,684,100 円

出所:厚生労働省令和3年賃金構造基本統計調査』より算出

※数値左:月収、数義右:推定年収

また年功序列の傾向がまだまだ強い日本。これからも年収が増えていくことを前提に考えると、返済負担率の上限ギリギリで借入をしても、年々ローン負担は軽くなるだろう、と考える人も多いでしょう。実際、40代前半の推定年収からすれば、年間155万円のローン返済であれば負担率は22%。余裕のあるローン返済となる水準です。

ただ目論み通りいかない場合はどうでしょうか。平均値で考えると、20代後半で月収30万円、手取りで23万円程度だった収入は、40代で月収45万円、手取りで33万円程度になっているはず……では平均値どおりの給与を得ている人は、どれほどいるのでしょうか。給与分布をみていくと、40代で月収45万円超を実現しているのは、22%程度。およそ5人に1人の割合です。平均値達成で、いわゆる「勝ち組」といえることがわかります。そのとおりに給与が増えたなら別に問題はありませんが、その通りにいかなかったら……ローンの負担率はギリギリといった状態が続きます。

20代でマイホームを実現させた場合の40代、子どもがいれば教育費の負担も年々重くなっていくころ。子どもの教育費を削る=節約する、というのは難しいと考える人は多く、給与増が叶えられていなければ、家計はかなり厳しくなります。月々13万円の返済もできなくなり、破綻、またはせっかくのマイホームを手放す決断をせざるを得なくなる事態に陥ることも十分に考えられます。

20代であれば、金融機関は「若いのでお金貸せますよ」と太鼓判を押してくれるでしょう。将来、給与が増えることを見越して上限ギリギリいっぱいでお金を借りる人も大勢います。しかし年齢と共に給与が増えていく保証はどこにもありません。借入時点で余裕のある返済プランを組むことが、長期戦となるローン返済を頓挫させない最善策といえるでしょう。