NEWSのメンバーとして人気を集める一方、小説家としても「オルタネート」(新潮社)で直木三十五賞にノミネート、吉川英治文学新人賞を受賞するなど活躍が目覚ましい加藤シゲアキ。そんな彼が、古今東西の名著をわかりやすくひも解く「100分de名著」(NHK Eテレ)の10代向け夏休みSP「100分de名著 for ティーンズ」(毎週月曜夜10:25-10:50、NHK Eテレ)にて司会を務める。8月1日(月)の第1回放送を前に、加藤自身の読書体験や影響を受けた本、今10代におすすめしたい本や、同番組で取り上げる本などについて聞いた。

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■「キャッチャー・イン・ザ・ライ」に救われた

ーー小説家として活躍され、読書もお好きであると公言されている加藤さんですが、いつ頃から本好きに?

本を好きになったのは実は結構遅く、大学生くらいの頃でした。

僕が10代の頃はベストセラーブームで、「ダ・ヴィンチ・コード」や「セカチュー」(「世界の中心で、愛を叫ぶ」)、(綿矢りさ氏の)芥川賞最年少受賞など、本の話題に事欠かなかったので、それらの流行りの本を手にしてみたり、退屈な授業では国語の教科書を読んでいたりと、常に読書をしてはいました。でも劇的な出合い、のようなものは訪れなくて。

それが、大学生になると、周りに読書好きが増えて。面白いものを教えてもらってるうちに、「あ、こういう本もあるんだ」と、読書の幅が広がりました。本の楽しみ方も、20歳頃には理解できたような気がします。

ーーご自身が10代の頃に読んで影響を受けた本は?

キャッチャー・イン・ザ・ライ」です。

「グレート・ギャツビー」や「ティファニーで朝食を」、レイモンド・カーヴァーなどをはじめとして、僕は村上(春樹)さんの翻訳される海外小説が大好きなのですが、特に「キャッチャー・イン・ザ・ライ」は、海外の全く知らない世界が描かれているのにもかかわらず、誰とも共有できないモヤモヤや、自分がちょっとおかしいのかと思ってしまうような苦しさに共感して、救われたような気がしました。あれが入り口だったので、海外文学を好んでよく読むようになりました。

■「自分だけが面白いと思っている」と思える本との出合いを

ーー本を読むのが苦手な人へのアドバイスをお願いします。

本を好きになるためには、自分が面白く読める本との「出合い」が必要だと思っているのですが、半分運のようなもので、あとは数を打っていくしかありません。

人に勧められたものも、本当に面白いかは分かりません。僕はよく、「星新一さんのショートショートから初めてみたらどう?」とか、「僕の本読めば?」なんて言っていますが、その人に本当に刺さるとは言い切れない。

そして、全員が面白いと思う本ではなくて、「自分だけが面白いと思っている」と思える本との出合い、というものがあります。「これは自分だ、どうして自分のことを知っているんだろう」と思わされるような本に一度でも巡り合えば、読書の魅力を知ることができると思います。

なんて言いながら「キャッチャー・イン・ザ・ライ」は世界で一番売れている小説なんですけどね(笑)。僕のような体験をする人が多いんだと思います。

あとは、「100分de名著」を見ることもおすすめです。「この本はこうやって読めば面白かったんだ」という視点に気づかせてくれるので。

ーー今回司会を務められる「100分de名著 for ティーンズ」で取り上げた作品はいかがでしたか?

どの作品にも味わい深さや学びがあり、収録していて楽しかったです。

第1回のトルストイ「人は何で生きるか」は寓話なので、分かりやすい話ではありながらも、そこに込められたメッセージを「100分de名著」らしく深堀りしていく。自分で読んでも気付けなかったことに気付かされました。それに、戦争の起きている今、トルストイを読んでほしいという思いはありますね。

第2回「WHAT IS LIFE? 生命とは何か」の生物学や、第3回「父が娘に語る経済の話。」の経済学は、10代だとなかなか食指が伸びないところかもしれないのですが、それらも含め、全ての学問は他人事ではない、と気付けると思います。

第4回の「竹取物語」は、皆がすでに知っている物語ですが、新たに面白く読み解けるポイントがたくさんあって、勉強になりました。どの回もとても面白いです。

ーーもしも今、加藤さんが若者に本を勧めるとしたら?

僕自身が小説家なので、小説を勧めたい気持ちもあるのですが(笑)......エーリッヒ・フロムの「愛するということ」です。少し難しい部分もありますが、皆が根源的に持っているはずの「愛とはなんだろう」という問いについて考えるきっかけになると思います。

加藤シゲアキ/(C)NHK