月面は人類が居住するには過酷すぎる世界である。だが最近の研究では、月面においても場所によっては快適な温度の世界があることが分かってきている。

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 NASAから資金提供を受けたカリフォルニア大学の研究者らは、NASAのルナーリコネサンスオービター(LRO)宇宙船とコンピューターモデリングからのデータを使用して、月面に存在する洞窟内部における温度をコンピューターシミュレーションによって推定。洞窟の大部分の場所において、17度という快適な温度にあることを突き止めたのだ。

 月では15日間昼間が続き、その後15日間夜が訪れる。このため月面では昼間は最高で127度まで温度上昇し、夜間は最低で-173度にまで温度低下が起こる。月面は昼間と夜間の温度差が300度にまで及ぶまさに地獄のような世界なのだ。

 だが今回の発見で、人類が月面においても快適に過ごせる可能性のある場所として、洞窟が大きくクローズアップされることになった。

 月面の脅威は温度差だけではない。地球では隕石のほとんどが大気圏突入後に焼失し、地表に落下してくるのは稀な事件だが、月面では大気が希薄なため、隕石が表面に頻繁に落下する。このため隕石に当たってけがをしたり、家屋が損傷を受けるリスクも想定しておかなければならない。

 また宇宙から容赦なく降り注ぐ放射線は、月面では人命にとって大きな脅威だ。だが洞窟内部では、隕石や放射線によるリスクを解消できる可能性が高い。

 かつて人類は洞窟に住居を構え、自然の脅威から身を守ってきた歴史があるが、月面においても洞窟はオアシスのような存在になりそうだ。月面洞窟が初めて発見されたのは2009年で、その歴史は浅いが、現在では200以上の洞窟が発見されている。

 これらのうちのいくつかは、火山活動の名残で、溶岩洞を形成しているという。つまりこれらの洞窟の多くは横穴として、長く続いた構造になっている可能性が高く、そこに月面基地を建設すれば、多くの人類がそこに移り住み快適に過ごせるかもしれないのだ。

月面洞窟が人類に快適な環境をもたらす可能性 NASAらの研究