ベトナム政治・経済・金融に関する情報を中心に取り扱う現地メディア『Bangkok Post』より翻訳・編集してお伝えする。

理由は「個人ファイナンス」と「定住のしやすさ」

181の国・地域に住む約1万2,000人の駐在員に聞いた調査によると、「タイは手頃な価格かつ親しみのある旅行先だが、政府機関のサービスや対応ついて不満を持っている」との結果が出た。

InterNations が実施した「Expat Insider 2022」の調査で、タイの順位は昨年の14位から8位に上昇し、「駐在員にとって最も良い国」のトップ10入りを果たした。

400万人以上の会員を持つ世界最大の海外駐在者コミュニティ・サービス「InterNations」は、世界中の約1万2,000人の会員からオンラインで回答を得て、52都市に住む外国人の生活を調査した。

この調査は、外国人居住者がそれぞれの居住国での「生活の質」、「定住のしやすさ」、「仕事」、「個人ファイナンス」に満足しているかを調査したものだ。(同調査の2022年版では新しく「デジタルライフ」、「行政問題」、「住居」、「言語」などの項目もカバーしている。)

タイは、個人ファイナンス(4位)と定住のしやすさ(11位)で特に優れている。「生活必需品における利便さ」では18位、「生活の質」では35位と平凡な順位にとどまった。海外勤務ランキングは45位と振るわず、全体的なスコアを押し下げた。だが全体としては、77%の駐在員がタイでの生活に満足していると答えており、世界全体の平均スコアである71%と比べても高い数値となっている。

今年、タイは2021年の14位、2019年の25位(64都市中)から順位を上げた結果となった。ちなみに2020年に InterNations が都市をランク付けした際には、82ヵ所中バンコクが20位にランクインしている。

メキシコ(1位)、インドネシア(2位)、台湾(3位)は、「定住のしやすさ」と「個人ファイナンス」で高いスコアを獲得し、世界トップ3の渡航先となった。残りのトップ10は、順にポルトガルスペインアラブ首長国連邦ベトナム、タイ、オーストラリアシンガポールと並ぶ。

下位3都市は、クウェート(52位)、ニュージーランド(51位)、香港(50位)で、いずれも特に駐在員の「個人ファイナンス」の面で低い結果となっている。

タイでは、ほとんどの外国人駐在員(85%)が、可処分所得について、快適な生活を送るのに十分か、それ以上であると感じている(世界全体では72%)。生活費については、世界平均が45%であるのに対し、タイは「71%で3位」にランクインしている。タイは住居の分野でも第1位で、回答者は「住居が手頃な価格」(世界平均39%に対し74%)であり、また「見つけやすい」(世界平均54%に対し85%)と述べている。

「政府の環境へのスタンス」など不満も

一方で、同調査の回答者らは、特に行政・政府のサービスをオンラインで利用できないことに不満を感じていた(不満43%、世界全体では21%)。チリ出身のある駐在員は「何から何までペーパーワークだ」とコメントしている。全体として、半数以上(51%)が現地の官僚や当局とのやりとりに不便さを感じていた(世界全体では39%)。

タイでは70%の駐在員が現地の言葉を話せなくても生活できると感じている一方(世界全体では51%)、68%が言葉の習得に苦労している(世界全体では38%)。実際、78%が少ししか話せないか(54%、世界全体では25%)、まったく話せない(24%、世界全体では10%)と回答している。

タイは、「現地への溶け込みやすさ」の項目で特に高い評価を得ている。大多数(86%)は「住民が友好的である」と回答し(世界全体では66%)、さらに81%が「外国人居住者に対して友好的である」と述べている(世界全体では65%)。彼らはタイでの生活を楽しんでおり(満足度69%、世界全体では56%)、また半数以上(52%)が「現地の友人を作るのは簡単」と回答している(世界全体では42%)。

「生活の質」に関する評価(35位)はまちまちだ。レジャーの選択肢(5位)に関しては、特別に満足感が高いようだ。料理のバラエティーや食事の選択肢の豊富さでは、メキシコに次いで世界第2位に選ばれている。文化やナイトライフに満足している人は77%で、世界の67%を上回っている。

また、タイの医療も高い評価を得ており、「健康と福祉」の項目で11位にランクインしている。全体の4分の3以上(77%)が、必要な医療サービスをすべて受けることができ(世界全体では67%)、その質も高い(世界全体では72%に対し85%)と回答している。

「環境と気候」(44位)については、タイの駐在員にとって大きな関心事となっている。5人に2人が「政府は環境保護に関する政策に前向きでない」と考えており、世界平均(18%)の2倍以上となっている。あるフランス人駐在員は「人々は公害について十分に認識しておらず、ゴミによって自然が損なわれるのを見るのは悲しいことだ」と不満を漏らす。さらに、空気の質を否定的に評価する人は45%(世界平均19%)、都市環境(緑地、騒音レベル、環境に配慮した建築物など)に不満を持つ人は32%(世界平均17%)となっている。

タイの主な弱点は「海外労働指数」(45位)にあり、「労働文化と満足度」のカテゴリーでは48位にランクインしている。現地のビジネス文化は創造性を奨励せず(41%、世界では26%)、独立した仕事を促進しない(45%、世界では28%)という。

また、給与と職の安定性についても、タイは下位10位以内にランクインしている(46位)。しかし、今回の調査では、回答者の35%がすでに職を引退していることを考慮に入れなければならない(世界平均の退職者は10%)。実際、タイの駐在員の19%が引退を視野に移住しているのに対し、この点に関しての世界平均はわずか3%だった。

参照:https://www.internations.org/expat-insider (「Expat Insider 2022」レポート)

バンコクの繁華街 サトーン地区にあるチョーンノンシー駅の交差点の様子。