コンピュータソフトウェア著作権協会ACCS)は、KADOKAWA集英社、小学館の3社が、出版コンテンツの海賊版サイト「漫画村」の運営者に対し、「漫画村」により受けたと推計される損害の一部である総額19億2960万2532円(3社17作品)の賠償を求め、7月28日に東京地方裁判所に共同して提訴したと発表した。

画像付きの記事はこちら



 「漫画村」を巡っては、出版業界をあげて対応すべき最重要案件であるとして、ACCS会員会社が刑事事件の共同対応を進め、2019年7月から9月にかけて、運営者を含む4人が6都県警察合同捜査本部(福岡県警察、警視庁栃木県警察、鳥取県警察、熊本県警察、大分県警察)により逮捕され、2019年11月から2021年6月、いずれも福岡地方裁判所で有罪判決が確定している。

 刑事事件の捜査後、「漫画村」は閉鎖に至り、運営者を含む4人いずれに対しても著作権侵害行為等に対する刑事責任の所在が示され、社会的警鐘を鳴らしたという点で大きな意義をもった。

 しかし、「漫画村」は、漫画コミックスや漫画雑誌はもちろん、一般雑誌や写真集、文芸作品などあらゆる出版コンテンツ約8200タイトル(約7万3000巻相当)を掲載し、最盛期には月間アクセスが1億に迫ると推計されるなど、違法な掲載によるタダ読みを通じて甚大な損害が発生しており、その被害回復はなされていない。

 そこで、KADOKAWA集英社、小学館の3社では、刑事裁判の進捗を踏まえつつ、同時に損害賠償請求手続きに向けた具体的検討を進め、「漫画村」により受けたと推計される損害の一部である総額19億2960万2532円の損害賠償金の支払いを求めて共同して提訴するに至った。

 提訴した3社は共同で、「漫画村は2018年4月に閉鎖されるまで、アクセス数で国内最大の海賊版サイトであり、その犯罪収益モデルは、現在確認されている多くの同種サイトに大きな影響を与えたと考えられる。いわば海賊版サイトの象徴的存在であり、刑事罰に加え民事的にもその責任が追及されて然るべきである。事実、漫画村によって漫画家や原作者らが被った被害は甚大であり、作品を預っている出版社にとって、漫画村運営者の民事的責任を明らかにすることは、現実的な回収可能性を措いても避けることのできない責務と考える。大きな情熱と、骨身を削る努力によって産み出された作品に与えられるべき対価を、いかにも安易な方法で奪い取る行為は決して許されるものではない。原告3社は、クリエイターが安心して新たな創作に挑める環境を守るため、海賊版という犯罪撲滅への重要な一石として、今回の提訴に至った」とコメントしている。

 ACCSは、「『漫画村』を通じた著作権侵害事件に関しては、外部メディアでの寄稿や職員による出張著作権講習会など、様々な機会で事件を取り上げ、社会に対して警鐘を鳴らし続けてきた。『漫画村』の事件が広く社会に取り上げられた結果、インターネットへの漫画の無許諾アップロードの被害は一旦減少したとの報道も見られたが、現在でも依然として国外サービスを悪用した大規模海賊版サイトによるコンテンツ被害が継続しているのも事実。ACCSはこうした現状を踏まえ、今後も会員への支援を行っていくとともに、関係団体とも緊密に連携し、著作権が尊重される社会の実現に向けて様々な侵害対策・啓発活動を進めていく」とコメントしている。

「漫画村」運営者に19億円の損害賠償、KADOKAWA、集英社、小学館の3社共同提訴