今季限りでのF1引退を表明したベッテルアストンマーティン提供)

 F1で4度の世界チャンピオンに輝いたセバスチャン・ベッテル(35)が28日、今季限りで現役を引退することを表明した。これまで自身のSNSを設けていなかったが、引退の発表に合わせてインスタグラムのアカウントを取得し、「僕は2022年シーズンを最後にF1から引退することを発表する。今は、多くのの人たちに感謝することから始めるべきだろう」。モノクロの動画を通じて自身の重要な決断を発表した。

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 2007年にBMWザウバーでF1デビューし、今季で16年目。レッドブルルノー時代の2010~13年にはシリーズ4連覇を飾るなど歴代3位の53勝をマークしている。

 ただし、フェラーリに在籍していた19年のシンガポールGPを最後に白星がなく、同チームで稼働した6年間では17、18年の年間2位が最高位。フェラーリの黄金時代を築いたドイツ人の先輩、ミハエル・シューマッハーのように優勝請負人として期待がかけられたが、タイトルを取ることができなかった。

 ところで、日本では「ベッテル」の表記が主流だが、ドイツ語では「フェテル」と実は発音する。これは日本のテレビ局がデビュー時に「ベッテル」の表記にしたことに起因しているといわれる。ただし、新聞メディアなどにニュースを配信する共同通信社は「フェテル」にしており、動画配信サイトの「ダゾーン」のF1中継で実況を務めるドイツ出身のラジオDJ、サッシャも「フェテル」をあえて使っている。

 F1ドライバーの表記で実際の発音と異なる例としては「バリチェロ」と「クルサード」がよく挙げられる。バリチェロはブラジル出身で実際の発音は「バリケロ」に近く、英スコットランド出身のクルサードも母国では「クルタード」と呼ばれる。現役ではマクラーレンリカルドイタリアオーストラリア人で実際はイタリア語読みの「リチャルド」を名乗っていたという。

新たに開設したインスタグラムでモノクロ動画を通じて引退の意思を表明

 最近では日本の各メディアで表記がてんでばらばらだったのは2016、17年にF1に参戦しドイツ国籍の「Pascal Wehrlein」。ファーストネームはパスカルで共通しているが、ファミリーネームは「ベールライン」「ベアライン」「ウェルライン」「ウェーレイン」「ウェーライン」と訳が分からない状況だった。

 日本のテレビ局の中継では「ウェーレイン」だったが、ドイツ人ジャーナリストは「うーん、確かに『ウェーレイン』とは言わないよ」と指摘。発音はベールライン、ベアラインが近いという。ベッテルについても「地元では『フェテル』だな。でも、Vの発音は独特だから、国際的には『ベッテル』になっても仕方がないね」と解説した。

 日本でもドイツ車のBMWをはるか昔は「ベーエムベー」と呼ぶ人が多かったが、実はそれがドイツ語の発音に最も近かった。一方、韓国の現代自動車は日本で「ヒュンダイ」と呼ばれることが主流だったが、今は韓国語読みの「ヒョンデ」とする傾向が強まっている。

 「ベッテル」「フェテル」の表記問題は、おそらくF1を引退してからも続くだろう。

[文/中日スポーツ・鶴田真也]

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元4連覇王者のベッテルが今季限りでのF1引退を表明 実は名前の発音は「ベッテル」じゃない説!?