こんな自転車の運転を見かけたことはありますか? ある会社員が通勤途中に目撃したのは、「違法運転」なのでしょうか。

会社員サトウさんが都内を歩いていると、向こうから2台の自転車が横並びで走ってきました。

といっても、乗っているのは男性1人だけです。1台の自転車にまたがり、もう1台のハンドルを片手で持ちながら、巧みに自転車を「運んで」いくのです。

あっけにとられたサトウさんは、運転の器用さに感心する一方、「こんな乗り方、違反じゃないの?」と疑問を感じながら会社に向かったのでした。

自転車を2台所有していれば、たとえば前日の雨で1台を駐輪場に置いてきたような場合、こうやって取りに行くことも可能でしょう。

しかし、法的に問題はないのでしょうか。交通ルールにくわしい中川龍也弁護士に聞きました。

●罰金のペナルティーもありえる違反行為

——写真のような運転は法律に違反しているでしょうか

写真のように物を持ち、安定を失うおそれがある方法で自転車を運転した場合、道路交通法71条6号(運転者の遵守事項)に該当する違反行為となり、罰金が科される可能性もあります。

この条文の規定は、自転車の片手運転を明確に禁止していませんが、各都道府県公安委員会が道路における危険を防止し、その他の安全を図るために必要と認める事項を定めることができると規定されています。

都道府県公安委員会では一般的に、写真のような自転車による片手運転を禁止している規則・細則が定められています。

たとえば、大阪府では「傘を差し、物を担ぎ、又は物を持つ等視野を妨げ、若しくは安定を失うおそれがある方法で自転車を運転しないこと」(大阪府道路交通規則13条(2))などと定められております。

●事故を起こせば「著しい過失」が認定

——万一、写真のような状態で事故を起こした場合、運転者の責任はどうなりますか

運転者には著しい過失が認められることとなり、少なくとも10パーセントは過失割合が修正される結果となるでしょう。

また、このような状態で転倒すれば、頭部の外傷や骨折等の重傷を負う危険もあることは言うまでもありません。

最近は携帯電話を見ながらであったり、音楽を聴きながら自転車を運転する方をよく見かけます。このような運転も、同じく各都道府県公安委員会の定める規則・細則に違反します。

2018年12月1日施行の改正道路交通法では、自動車や原動機付自転車の「ながら運転」が厳罰化されました。自転車の運転の際も「ながら運転」をしないようにご注意ください。

【取材協力弁護士】
中川 龍也(なかがわ・たつや)弁護士
立命館大学卒。平成22年弁護士登録(京都弁護士会所属)平成28年11月に中川龍也法律事務所を設立。主な取り扱い分野は交通事故(主に被害者側)事件。
事務所名:中川龍也法律事務所
事務所URL:http://nakagawa-lawyer.com/

「あ、器用なおじさんだ」 自転車に乗りながらもう一台を運ぶ「スゴ技」目撃、弁護士は「違反行為です」