昨今、よく耳にするようになった発達障害。教育現場では、まさに「急増」という事態になっていて、その数はさらに増えるとされています。その背景にあるものとは……みていきましょう。

発達障害は脳機能の発達が関係する、生まれつきのもの

発達障害は、生まれつきみられる脳の働き方の違いによって、幼児のうちから行動や情緒の面で特徴がある状態のことを指します。この言葉が広く浸透し始めたのは、2004年に発達障害者支援法ができてから。同法第一章第二条では、以下の通り定義づけられています。

発達障害者支援法第一章第二条

発達障害」とは、自閉症アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

それまでは「周りと違って、ちょっと変わった子(人)」といわれていた人たちが「発達障害」とされ、サポートを受けられるようになったのです。

単なる個性と見られることも多く、乳幼児期に気づかれる子もいれば、就学してから初めてその特性が顕著になる子もいます。大人になってから「あなたは発達障害です」とされるケースも、決して珍しいことではありません。

就学前に診断を受けているこの場合、就学相談で障害の程度や保護者の希望などをもとに地域の教育委員会と話し合いのうえ、通常学校での対応や、通級指導教室(通級)との併用、特別支援学級、特別支援学校から就学先を決めることになります。

小学校の場合、通常学級は1年生は35名、ほかは40名が標準。特別支援教育の対象の子どもに対しては、個別の指導計画が作成され、個人のニーズにあった支援が受けられます。

通級指導教室の対象となると、通常学級に在籍しながら、週に何時間か、通常学級では難しい内容を学ぶことができます。特別支援学級は、通常の学校にある特別な学級で、1学級あたり8名が標準です。ここでは特別支援学校の学習指導要領が適用されます。

文部科学省『特別支援教育に関する調査』によると、2020年、通級による指導を実施した児童生徒数は16万4,693人。前年より3万人近く増加しました。図表のとおり、発達障害者支援法ができた2004年(平成16年)以来、右肩上がり。特にADHD(注意欠陥多動性障害)は10年で6倍に増えるなど、LD(学習障害)、自閉症、情緒障害とされる児童生徒の数が急増していることが分かります

発達障害の子ども、急増も氷山の一角に過ぎない

発達障害の子どもは、どれほどいるのか。さまざまな調査がされています。

2012年に文部科学省が教職員に対して行った調査では、発達障害の可能性があるとされた児童生徒は6.5%。1クラスに2人程度いる計算です。また米国政府の統計では、11%の子どもがADHDだとしています。どちらにせよ、発達障害ときちんと医師から診断を受けた割合ではないため、正確な数字は実は分かっていないのが現状です。

ちなみに2020年、全国の小学生は630万0,693人に対し、通級で指導を受ける児童は14万0,117で、全体の2.2%。ADHDは2万7,790人で、全体の0.44%でした。都道府県別にみていくと、児童数に対してADHDの子どもの割合が最も高いのが「岐阜県」で1.84%。一方で最も少ないのが「岩手県」で0.07%でした。

こうしてみていくと、2012年の文部科学省の調査や米国政府の調査に比べて、発達障害の子どもはずいぶんと少ない印象を受けるでしょう。

というのも、発達障害者支援法ができ、発達障害とされる人が急増していても、まだまだ理解が進んでいるとはいえず、医師の診断を受けるに至らない人が大勢います。また偏見も根強いため、医師への相談をためらう保護者も多いとされています。

徐々に理解が進んでいることから、これから発達障害と診断される子どもはさらに増えることでしょう。いま、発達障害と明らかになっているのは、まだまだ氷山の一角でしかないのです。

発達障害は幼い時に適切な治療を受けることが重要だとされ、また法律では発達障害は個人の問題ではなく、社会の問題とされています。理解が進み、偏見が無くなっていけば、発達障害の人たちも生きやすい社会になるはずです。

(※写真はイメージです/PIXTA)