「Experiments with Google」は、Google人工知能(AI)や拡張現実(AR)といった最新技術の可能性を示すために、実験的な応用例を紹介するショーケースだ。膨大なコンテンツを公開しており、その多くはスマートフォンやPCで試せる。

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 この記事では、多種多様な応用例の中から興味深いものをピックアップ。実際に遊んだ体験レポートを通して、裏側にあるテクノロジーや、技術の活用方法とその目的を解説する。

 読者の皆さんも、ぜひ自分の手で試しながらその仕組みを学んでもらえたらうれしい。きっと、最新技術の魅力に気付くはずだ。

●お題を基にお絵描き AIが出来栄えを判定する

 今回は、お題に従って絵を描き、出来栄えをAIに判定してもらう「Guess the Line」を取り上げる。

 Guess the Lineでは、まずカード形式のお題に合った絵を描く。次にAIが絵を解析して、お題にどれだけ近いか数値化して判定する。一定以上の点数ならそのお題はクリアだ。お題カードを1枚獲得して、次のレベルに挑戦できる。

 描くお題は、遺跡からの出土品や古代の芸術作品、現代の工業製品などとても幅広い。出題文からイメージが湧かなければ、作品の写真をお手本にできる。

 自分が描いた絵をAIがどう評価するか、どのような作品が紹介されるかなど楽しめるポイントが多いコンテンツだ。

●高評価のポイントは「絵のうまさ」ではないらしい

 Guess the LineWebアプリケーションなので、PCでもスマートフォンでもサイトにアクセスすれば遊べる。筆者がPCで使っているポインティングデバイストラックポイントなので、絵を描くのには向いていない。絵心がない筆者がPCを使って無駄に難易度を上げる必要はないので、スマートフォンタッチペンで挑んでみた。

 スタートすると、画面右下にお題カードが表示される。そのお題を踏まえて、画面上の白いキャンバスに絵を描く。

 1問目は「A BRONZE FORK」(青銅製のフォーク)だ。現代では見掛けないが、昔はよく使っていたのかもしれない。取りあえずフォークっぽい形を描き、AIに判定してもらった。AIが出した判定は「37%の確率で青銅製のフォーク」というものだった。どうやら合格らしい。

 合格したので、次のお題「A CERAMIC BEARD」(陶器のひげ)に進もう。一体何を描けばいいか想像もつかない。お題カードタップしてヒントに出てきた、ひげを生やした顔の像をまねすることにした。

 適当に描いた顔にひげを加えてみたところ、なんと1問目より好成績の71%だった。どうやらAIの判定基準に絵のうまい下手は関係なく、特徴を捉えれば点数が高くなるようだ。

 こうして次々とカードに挑戦したが、「スピーカー」の絵は37%の確率で「MINIMALIST MOUTH」(ミニマリストの口)と見当違いの結果になるなど、一筋縄ではいかない。何はともあれカードを4枚獲得できて、次のレベルに進めた。

●AIの判定「アートっぽいけど、何を描いたか見当もつかない」

 新しいレベルのお題は「A VERTICAL PAIR OF PANTS」(縦長に置かれたズボン)「A MORDERN ART FORK」(モダンアート風フォーク)「A WOODEN ARM」(木で作られた腕)など。お題を見ただけでは何を描けばいいのか思い付かない。ヒントを見ながらトライしてみたが、今回は再挑戦を言い渡された。

 「A GEOMETRIC LEG」(幾何学的な脚)に至っては、AIに「アートっぽいけど、何を描いたか見当もつかない」とまで言われてしまった。もっとも、自分でも何を描いたか分かっておらず、その指摘は認めざるを得ない。いずれにしろ、すっかりゲームに熱中して楽しんでしまった。

気になった作品はGoogle ArtsCultureでチェックできる

 このGuess the Lineは、Googleのアート紹介プロジェクトGoogle ArtsCulture」の一環だ。同プロジェクトでは世界各地の美術館博物館の収蔵作品に親しんでもらおうと、さまざまな体験コンテンツを公開している。この連載で紹介した、AIがお絵描きをサポートしてくれる「Giga Manga」や、バーチャル陶芸を楽しめる「3D Pottery」もそのうちの一つだ。

 Guess the Lineヒントとして表示された美術品などの中には、興味深いものもあれば、お題とのつながりに納得できないものもあった。そうした疑問は、ヒントの画像からアクセスできるGoogle ArtsCultureのページで解消しよう。

 例えば「MINIMALIST DRILL」(ミニマリストドリル)のヒント画像は、どう見てもドリルと思えなかった。作品の解説文を確認してみると、やはりドリルでなくボトルラックだと分かった。恐らく、AIが正しく認識できなかったのだろう。それはそれで、予想外の作品に出会える喜びがある。

 もちろん、この連載で紹介してきたGoogle ArtsCultureに関連するコンテンツと同じく、各作品の詳細や収蔵館を調べたり、関連性の高い別の作品をたどっていったりという楽しみ方もできる。

●AIはどうやって類似性を判定しているのか?

 Guess the Lineは、絵を描いてAIが判定するというゲーム性があるので、気軽に芸術作品に触れられる。さらにAIをこうした用途に使えると示すのにも成功している。このAIはニューラルネットワーク構築用ライブラリTorch」を活用している。

 では、描いた絵がお題に似ているかどうかを、どうやってAIで判定しているのか。ごく簡単に説明すると、お題のデータをある方法で数値化した多次元データと、描かれた絵を数値化したデータを比較し、両データがどの程度近いか計算して判定している。この多次元データベクトルと見なし、両ベクトルの距離を調べることで2つのデータがどの程度近いのか、似ているかなどを数値化していた。

 この仕組みをきちんと理解するには数学の知識(微分やベクトル、行列、指数関数、対数関数など)が欠かせない。この原理の理解に役立つコンテンツを、Experiments with Googleの中で見つけた。それが「Visualizing High-Dimensional Space」だ。

 これは、機械学習アルゴリズムで参照するベクトルデータを視覚化したWebアプリだ。個々のベクトルが多次元空間にどう分布しているか調べることで、AIが類似性を判定する基本的な概念を把握できる。

 例えば、「cat」(ネコ)という単語の近くには、概念が似ていたり関係が近かったりする「tiger」(トラ)「rabbit」(ウサギ)「elephant」(ゾウ)「pet」(ペット)「sleeping」(寝る)という単語が存在する。elephantの近くに「hat」(帽子)があるのは不思議だが、もしかしたら「星の王子さま」に登場する「ゾウを飲み込んだウワバミ」からの連想かもしれない。

 このVisualizing High-Dimensional Spaceは奥が深そうだ。そこで次回はこれを詳しく見ていき、AIの秘密に触れてみたい。

AIが評価するお絵描きゲーム「Guess the Line」