受験生には「積極的進路変更」と「消極的進路変更」があります。自分の実力を出し切っていないのに志望大学が下げる「消極的進路変更」はダメだといいます。9浪して27歳で早稲田大学に合格した濱井正吾氏が『浪人回避大全 「志望校に落ちない受験生」になるためにやってはいけないこと』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

「消極的進路変更」を否定するワケ

▶「進路」消極的な進路変更をする/重要度★★★★★

進路選択の際に行きたい大学や学部を変えることは、現役・浪人に関係なくあります。

「幅広い教養を身につけたかったけど、教師になって還元したいから文学部から教育学部に変えます」 「医者を目指していたけど、研究職に就きたいと思ったので理学部志望に変えます」

こうした将来の夢の変化に対応した前向きな進路変更を、私は「積極的進路変更」と呼んでいます。たとえ偏差値は下がっても、自分の夢を追い求められる選択は尊いですからね。

でも次のようなケースはどうでしょう?

「勉強してないから志望大学に届かない。まぁどこでもいいから行ける大学に行こう」 「大学は入れればどこでもいいから難関大志望でなく適当に受かったところに行こう」

こうして自分の実力を出し切っていないのに志望大学を下げる人も散見されます。私はこれを「消極的進路変更」と呼んでいます。ダメです。絶対。

理由は3つあります。

1つ目、人生で壁にぶち当たったときに支えになる経験がないから 2つ目、就職活動で後悔するのが目に見えるから 3つ目、何かあるたびに人生の大事な時期に頑張りきれなかったことを後悔するから

1つ目は私が9浪した要因でもあります。努力を必要とされる機会に直面しても、過去に努力をしていないことから自分に自信が持てなくなり、きつい仕事や家庭状況の悪化といった苦境に直面しても頑張りきれなくなります。

2つ目は就活の際の縦の繋がりや、難関大が持つ研究室と企業との繋がりが使えません。時代が変わってきて学歴が問われなくなっている傾向があるとはいえども、まだ大企業が学歴で選抜する傾向は色濃く残っています。

かつて在籍していた2大学の同級生と、早稲田大学の同級生の内定先を聞いてみると、個人の能力云々を抜きにしてもまったく違いました。私がかつて在籍していた大学ではまったく内定者がいないような超有名企業から、早稲田の同級生はゴロゴロ内定をもらっていたのです(もちろん彼らは受験で努力をしてきた人間ばかりなので内定を取るためにも凄まじい努力をしています)。

3つ目は一番辛いことかもしれません。1つ目や2つ目の理由が原因で実感するかもしれませんし、生活の場面で痛感することもあります。

例えば、保険や年金の仕組みであったり、税金の控除であったり、遺産の分配であったり。複雑な仕組みを調べたり、理解したりするのはそれまでに得た知識や、努力習慣がとても大事です。知らず知らずのうちに無知な人が損するように、世の中のルールは頭のいい人たちが作っています。

だからこそ、学生時代のある時点で努力して、少しでも上の大学に行こうとする姿勢は今後の人生でも通用する力になるのです。

難関大学ほど学費減免制度や奨学金がある

▶「奨学金」どうせもらえないからと奨学金を軽視する/重要度★★★☆☆

金銭的に余裕のない親や親戚も、意外と交渉次第で可処分所得を受験費用に回してくれるものです。

とはいえ、手を尽くしても結局どこかでお金が足りなくなり、大学に入るまではなんとかなっても、入ってから学費や生活費を支援するお金が残らない……なんて家庭もあるかもしれません。

しかし、ここで諦めるのはまだ早いです。なぜなら、難関と呼ばれる大学ほど豊富な学費減免制度や大学独自の奨学金があるからです。

大勢の学生にとっては日本学生支援機構の第一種・第二種奨学金を借りるというのが一般的でしょう。これもいいとは思いますが、問題は貸与型であるということです。

ですので、やはり嬉しいのは給付型。

たとえば、早稲田大学には、OBの寄付からなるさまざまな奨学金があります。

1〜2浪の年齢までしかもらえないという奨学金も多い中で、大学独自の奨学金は年齢を問わない場合が多いです。ちなみに他団体との併給も可能である場合もあるので、2つもらえば、それだけで学費の半分以上を賄えることになるでしょう。

私は1年生のときから毎年、「小野梓記念奨学金」や「校友会給付奨学金」といった給付型奨学金をいただいていました。どちらも年額40万円で、かなり大学で勉強するのに余裕が出たのを覚えています。

所得が厳しい家庭だと奨学金の基準も甘く、ある程度の成績と所得水準(世帯収入が800万円以下)があればだいたい通るようになっています。私の家のように世帯年収200万円以下とまではいかなくても、この基準を満たしていて、人並みの成績を取っていれば何かしら奨学金をもらえるのではないでしょうか。

ちなみに成績が優秀で一定の条件を満たせば、年額100万円を超えるもっと高額の奨学金をもらえる可能性もあります。こちらも自身で調べてみて、受験への支援を渋る親や親族の説得に使ってみてください。自分で調べる時間が惜しかったり、制度が多すぎてよくわからなかったりする場合は大学の奨学課に電話してみましょう。

私は在学中からさまざまな質問をしましたが、真摯に対応してくださり、受給できる可能性のある奨学金を丁寧に調べて教えていただきました。

経済的に困窮している家庭でも、入るまでの金策を第一に考えましょう。入ってみれば、案外なんとかなるものですよ。

濱井 正吾 9浪はまい

(※写真はイメージです/PIXTA)