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 野生生物は、捕食者から身を守るために特殊な自己防衛手段を身につけている。メキシコや北米の砂漠に生息するサバクノツノトカゲも、実に奇妙な護身術を身に着けた。

 それは、目から血の涙を勢いよく噴射するという方法だ。血の涙の中には、天敵となるイヌやオオカミ、ネコ科の動物が嫌がる成分が含まれているという。

【画像】 目から血の涙を噴射し捕食者を撃退するサバクノツノトカゲ

 アメリカのアリゾナ州とカリフォルニア州メキシコのソノラ州にかけて広がるソノラ砂漠に主に生息するサバクノツノトカゲは、全長7~13cmほどの扁平な体型のトカゲだ。昼行性で、主にアリや小さな虫を餌とするが植物を食べることもある。

 後頭部にはやや短い角状のウロコがある。その平べったい体と短い鼻がカエルのように見えることから、英語では「ツノガエル(Horned toad)」と呼ばれることもある。

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image credit:Wikimedia Commons

 ツノがあるにはあるのだが、役には立たないようで天敵が多い。砂漠にはタカなどの猛禽類、肉食ネズミ、コヨーテ、ボブキャットなどが生息しており、いずれもサバクノツノトカゲを狙っている。

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 その為、ツノトカゲは数々の護身術を持っている。擬態してじっとしているといった消極的防衛法から、口を大きく開いて威嚇したり、風船のように自分の体を2倍以上に膨らませるなど、積極的防衛法も持ち合わせている。

 それでも危険が回避できないようなら、とっておきの手段を使う。目から血の涙を噴射するのだ。

Blood Squirting Lizard | National Geographic

捕食者が嫌がる成分配合

 血の涙が発射されるメカニズムはこうだ。

 目の下にある副鼻腔が血液で満たされると下瞼の毛穴が膨らむ。その圧力の急上昇を利用して一気に噴射させる。

 この血液噴射は、最大2メートルも飛ぶ。しかも必要に応じて数回にわたり血を噴射することが可能だという。

 実に奇妙な護身術だ。突然血の涙が噴射されたら外敵もびっくりするだろう。だがそれだけではない。捕食者が不快に感じる成分が含まれているのだ。

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 ツノトカゲの血には、人間や他の種には見られない受容体に結合する毒素が含まれているという。

 外敵の命を脅かすほどの有毒性はない。だが、コヨーテやボブキャットなどイヌ科、ネコ科が嫌がる科学物質が含まれており、血しぶきを浴びた捕食者は頭を振ったり、口に入ってしまった血液を必死で排除しようとする。

 血を浴びた者は回復に最大15分はかかり、その間にサバクノツノトカゲは逃げ去ることができるというわけだ。

 異なる捕食者を区別することに優れ、あらゆる種の外敵に対しどのようにして身を守るのがベストか、その術を心得ているサバクノツノトカゲ

 多種多様な護身術を相手と状況にあわせて使い分けることで、生存の可能性を高めているのだ。

References:This Lizard Shoots Blood Out of Its Eyes to Keep Predators at Bay / written by Scarlet / edited by parumo

 
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目から血の涙を噴射、捕食者を撃退するツノトカゲの驚くべき護身術