人間関係に悩んでいる人は、自分をメンテナンスしてあげることが重要です。毎日、職場ではいろいろなことが起きますから、誰でも身近なところで簡単にできる「自分をメンテナンスする方法」が必要です。産業医の井上智介氏が著書『職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

「自分をメンテナンスする」2つの方法

■自分で自分をメンテナンスしよう

自分をいたわることは、誰にでも必要なことです。

人間関係に悩んでいないという人も必要なのですから、めんどくさい人に日々接している人ならなおさら、自分をメンテナンスするのは必須と言えるでしょう。

「自分をいたわる」というと、温泉に行く、マッサージを受ける、美味しい物を食べに行く、旅行に行く……ということを想像すると思います。

たしかに自分が好きなことをするというのも1つの手ではありますが、頻繁に行うには少しハードルが高いのではないでしょうか。

毎日いろんなことが起こるわけですから、自分のメンテナンスはもっと身近なところで定期的にできる方法がよいのです。

そこで、誰でも毎日簡単にできる「自分をメンテナンスする方法」を2つお伝えしましょう。

まず1つ目は、「自分を褒める」こと。

この連載を読んでくださっている多くの方は、「自分を褒める」ことに慣れていない方が多いのではないでしょうか。

「一体自分のどこをどう褒めればいいの?」と思われる方も多いでしょう。

しかし、私が提案する「自分褒め」は、自分の長所やよくできている点にフォーカスするのではありません。

日常生活で頑張っていることや、本当はつらいことを褒めるのです。

たとえば、朝起きることでもOKです。

朝、もっと寝ていたいけど、なんとかちゃんと起きられた!

私の基準では、それはもう十分褒めるに値するポイントです。

感謝の気持ちを伝えることの効果

朝起きることは当たり前のことだと思うかもしれませんが、意外と難しいことですよね。

眠たい目をこすって、体を起こして、そして仕事をする。

職場にめんどくさい人がいるなら、なおさら大変なことだと思います。

しっかり自分を褒めてあげてください。

このように、いつでも自分を褒めることを習慣にしていただきたいのですが、まずは夜寝る前などの決まった時間に1日を振り返って自分を褒めることをおすすめします。こうすることで、承認欲求が満たされ、自分を癒すことができます。

そして2つ目の方法は、「感謝を伝える」ことです。

人に感謝の気持ちを伝えることがどうして自分をいたわることになるのか、不思議に思われるかもしれませんね。理由は簡単です。

誰かに感謝の気持ちを伝えると、伝えたほうも温かい気持ちになるからです。

感謝をすることは、自分が相手から恩恵を受けていると意識することなのです。どれだけ愛されて、どれだけ気にかけてもらっているか、振り返るチャンスです。

相手は、家族でも友人でも、コンビニの店員さんでも大丈夫。

普段面と向かって「ありがとう」と言わない人に、感謝の気持ちを言葉にして伝えてみてください。はじめは照れて言いにくいと思いますが、習慣にすることで必ず自分自身にとって大きなプラスになるでしょう。

誰かに手伝ってもらったり、助けてもらった時も、「すみません」ではなく、「ありがとう」と言ってみてください。

相手も「喜んでもらえてよかった」「感謝されてうれしい」と感じますし、あなた自身も「迷惑をかけた」という気持ちから「助けてもらってうれしかった」「助かった」という気持ちに切り替えることができるでしょう。

「ありがとう」のひと言で救われる人はたくさんいます。

相手に喜んでもらって自分も温かい気持ちになり癒される、なんて素敵ですよね。  

井上 智介 産業医 精神科医 健診医

(※画像はイメージです/PIXTA)