世の中には勤勉な人もいれば、そうでない人もいます。また、そうでない人の中には、やたらと悪知恵を働かせる人もいるようです。

 今回お話を聞いたのは、書店で店長をしている健人さん(仮名・28歳)。健人さんの店には最近S美さんというアルバイト大学生がやってきたそうです。ただ、必ずしも歓迎されるべきスタッフではなかったようです。

やる気のないバイト店員と押しの弱い店長

 やる気のなさそうな雰囲気は、そのまま勤務態度にも現れていて、自ら率先して仕事を見つけようともせず、店長が指示してもダラダラと作業を行うような、とてもハズレアルバイトだったそうです

 店長の健人さんは、どちらかというと温和な性格で、客からの評判はよいものの今ひとつ押しが弱いタイプ。ボーッとしているS美さんを見かけるたびに注意喚起はしますが、そのキャラから、どこかナメられているような感さえあるようです。

実は、S美さんは知り合いであるKの親戚で、Kからの紹介で来たんですよね。Kは僕が前職時代の出版社で働いていた時の同僚で今も交流がある飲み友達というのもあって、S美さんにあまりキツく言えないんです」

度重なるアルバイトからの誤送信

 そんなある日、健人さんはアルバイトシフト調整のため、S美さんにLINEで連絡を入れたそうです。すると、いつもは返信の遅いS美さんから珍しく即刻返事が返ってきました。しかし、その内容は「なんか最近しんどいかも」といった体調不良をほのめかすものだったのだそうです

 心配になった健人さんが状況をうかがうメッセージを送信したところ、その数分後S美さんから来たのは「友達に送るLINEを誤送信してしまった」といった旨の返信でした。

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※画像は取材を元に編集部とライターにて作成(以下同じ)
「それ以来、S美さんの体調が気になってしまって、やる気のない仕事ぶりを見ても『体調不良かな』と思ってしまい注意しづらくなったんですよね……」

 とはいうものの、1人ではお店を切り盛りするのは厳しく、1時間の残業の打診を後日LINEで送ったところ今度は珍しく「承知した」という返信が来たそうです。しかし安心したのも束の間、すぐその後に「ゴメン! 時間なくて無理」というメッセージが。

堪忍袋の緒が切れた店長が説得に

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「どう見ても彼氏とか友人とかに送ったようなメッセージでしたね。聞いてみるとやっぱり誤送信だったとあっさりと認めていました」

 結局その日の作業は出入り業者に手伝ってもらうことにした健人さん。その後もS美さんの誤送信は治まらなかったようで、健人さんは少し参っているようでした。ある日、新しい業務の説明をするために早めの出勤が必要であることを連絡すると、またもや例の体調不良を知らせる誤送信が来たのだそうです。

 そこでついに堪忍袋の緒が切れた健人さんは、後日、S美さんと話し合います。しかし、健人さんの問いかけに、なんとS美さんは舌打ちする始末。あきれ果てた健人さんは改善できないのであれば無理に働かなくてもよいと伝えたそうです

「本当は怒鳴りたい気持ちでしたが、一応知り合いの紹介だったのであくまで冷静になるように努めました」

原因の知り合いに猛抗議したところ…

 しかし健人さんの真摯な対応むなしく、S美さんは目も合わさぬまま、「ちっ、あー、はいはい。辞めます、辞めます!」とだけ言い残し、帰っていったのだそうです。

 この話し合いの直後、健人さんは紹介してきた知り合いに真っ先に電話をかけ、興奮気味に一部始終を話したそうです。すると、Kの口から「実はS美が極度のサボリ魔で今までも多方面で迷惑をかけまくっている」との事実が

「実直でおっとりした健人の下で面倒を見てもらえば、S美のそういうところが改善するんじゃないかと思って紹介したんだよ」とKに言われ、温厚な健人さんも迷惑をかけられっぱなしで頭にきていたためKに猛抗議をしたそうです。しかしその中でさらに新しい事実が出てきました。

店長も知らなかったバイトの事情

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「S美さんは、実はKの姉の娘で、シングルマザーで育てられたらしく、Kはアルバイトが長続きしない彼女を心配して、いろいろ面倒を見ていたそうんなんです。彼なりに努力していたんですね。なんか、少し同情してしまいました」

 とはいうものの、S美の代替が必要な訳で、急遽スタッフを募集することになったそうです。少し急いでいたので、少し費用はかかりますが、大手求人サイトに募集を出したそうです。すると、健人さんの想像していた以上の数の募集が

「年々書店が減り続けているので、そこで働きたいと言う本好きの学生が増えていたのかもしれません。幸い、今回の募集で縁あって仲間になったスタッフは、とてもよく働いてくれて、その働きぶりにただただ感動でした」

 現在では、有能なスタッフのおかげで日頃できなかった業務もこなせるようになって、平穏な日々が戻っているとか。

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【ベルクちゃん】

愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員です。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営です。よろしくお願いします