オーストラリアの新たな研究によると、「セイヨウイラクサ」という植物の葉の抽出物に、男性の精子の動きに関わるタンパク質をブロックする作用があることが確認されたそうだ。
『PLOS ONE』(2022年7月28日付)で発表されたこの新事実は、植物のエキスを使った、ホルモンを使用しない、新たな男性用避妊ピルの開発につながると期待されている。
【画像】 イラクサの葉のエキスが精子を運ぶタンパク質をブロック
精子を運ぶタンパク質とイラクサ葉エキス
イラクサ(Urtica thunbergiana)は漢字では「刺草」と書く。その名のとおり葉や茎にトゲが生えている多年生植物だ。
男性用避妊薬の開発に取り組んでいるオーストラリア、モナシュ大学のサバティーノ・ベンチュラ博士らは、イラクサの近縁種である「セイヨウイラクサ(Urtica dioica)」の葉から抽出したエキスが、男性の精子の動きを制御するタンパク質に与える影響を調査した。
これまでの研究で、「α1Aアドレナリン受容体」ならびに「P2X1プリン受容体」という2種のタンパク質を取り除いてしまえば、男性を不妊にできることが明らかになっていた。
都合がいいことに、それによって精子自体の生存能力や男性の健康を損ねたりすることはない。
今回のマウスによる研究では、イラクサ葉エキスが「P2X1プリン受容体」の働きを邪魔するかどうか確かめられた。
イラクサ葉エキスでマウスの生殖能力が半減
実験として、オスに経口で1日50mgのイラクサ葉エキス(市販されているもの)を飲ませたところ、生殖能力が53%低下したという。
注目すべき点は注射などではなく、口から服用して効果があったことだ。避妊薬として使うなら、できるだけ手軽に服用できた方が良いだろう。
このような避妊効果は、イラクサ葉エキスがP2X1プリン受容体を阻害し、尿道や生殖器平滑筋の収縮力を弱めることで発揮されるとのこと。これによって精子が運ばれなくなってしまうのだ。
研究グループは、「男性向け避妊を行う上で、効果的かつ便利な生物学的戦略」と結論づけている。
男性にも手軽で効果的な避妊の選択肢を
研究グループの今後の予定は、イラクサ葉エキスのどの化合物が実際にタンパク質を阻害しているのか調べ、より避妊に適した類似の化合物がないか探すことであるそうだ。
ベンチュラ博士はこう語る。
残念なことに、現在男性が行う避妊方法は、コンドームかパイプカットしかありません。しかし『Male Contraceptive Initiative』が主導した研究によると、大多数の男性は避妊に前向きであり、我々は彼らに、安全で効果の高い避妊の機会を与える必要があるのです
References:New development for hormone-free male contraceptive pill - Faculty of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences / written by hiroching / edited by / parumo
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