回転ずしチェーンの「スシロー」による「おとり広告」、大阪王将フランチャイズ店における猫の飼育をはじめとした不衛生な環境での運営など、飲食業界で不祥事が続出しています。なぜ飲食業界で不祥事が続出しているのでしょうか。また、不祥事を起こした飲食企業が信頼を回復することは可能なのでしょうか。飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

「低賃金・長時間労働」による人材不足が影響

Q.回転ずしチェーンの「スシロー」が、景品表示法違反(おとり広告)に該当する行為があったとして、消費者庁から再発防止を求める措置命令を出されるなど、飲食業界で不祥事が続出していますが、なぜなのでしょうか。考えられる理由について、教えてください。

成田さん「飲食業界で長年問題になっている人材不足が要因の一つだと思います。1990年ごろから大手飲食チェーン店が全国でしのぎを削るようになると、急速な店舗数拡大やバブル崩壊後のデフレの影響を受けた価格競争などで『低賃金・長時間労働』といった労働環境の悪化を招き、やがて飲食店の人材不足が慢性化しました。それにより、事業拡大に人材育成が追いつかず、従業員の質が低下したり、能力に見合わない『名ばかり責任者』を配置したりする店も増えました。

つまり、人材育成を重視しない社風や、そもそも教育されていない従業員がこういった不祥事を起こしてしまうのではないでしょうか。人材育成には時間とお金がかかりますが、昨今の飲食業界は明らかに人材が不足しています」

Q.では、今後、飲食業界はどうなっていくのでしょうか。現在の飲食業界の課題も踏まえて教えてください。

成田さん「今後、飲食業界は、配膳ロボットやセルフレジなど、最新のデジタル機器を使って接客時の省人化を進める飲食店と、従来のように人による接客をする飲食店とに二極化されていくと思います。そのため、省人化を進める飲食店は、現場の人材育成の必要性が薄れていますが、人が人をもてなす従来の飲食店では人材育成が重要かつ急務です。

どの飲食店にも言えますが、慢性的な人材不足や新型コロナウィルスに起因する飲食店離れ、物価上昇など、経営が非常に難しくなっている現在、『サステナブル持続可能)な店舗運営』が最重要と私は考えます」

Q.不祥事が飲食企業の経営に与える影響について、教えてください。例えば、客数や売り上げの減少につながることはあるのでしょうか。

成田さん「不祥事の内容にもよりますが、過去には某ステーキチェーンのように、ニュース週刊誌に取り上げられて、当該店舗が閉業にまで追い込まれた例もあります。

不祥事が発覚したときの企業の対応スピードやその後の取り組み方など、企業の姿勢で世論の見方も変わります。場合によっては不買運動による売り上げ減少や賠償金などで大きな減益になることもあります。反対に、飲食企業の真摯(しんし)な姿勢によって、不祥事が経営に与える影響が最小限に抑えられる場合もあります」

Q.不祥事をできるだけ減らしていくために、飲食企業にはどのような取り組みや心掛けが求められるのでしょうか。

成田さん「正社員、非正規社員含めて、人材育成が急務と考えます。食の安全はもちろんですが、社会人としてのモラルや職業人としての精神を磨かなくては、今後も不祥事は繰り返されるでしょう。もちろん、それを管理する経営者や幹部も同様です。手段の一つとして、飲食に特化した人材育成を手掛ける外部機関に依頼するのもよいでしょう」

Q.不祥事を起こした飲食企業が信頼を回復するためには、どのような取り組みや心掛けが求められるのでしょうか。過去に不祥事を起こした後、信頼回復に成功した飲食企業があれば、そちらの事例も踏まえて教えてください。

成田さん「不祥事を起こした飲食企業が信頼を回復するためには、不祥事が起こってしまった原因を究明して改善に取り組み、真摯に反省して二度と不祥事が起こらないよう日々努力を続けることです。ありきたりですが、信頼回復への一番の近道です。

かつて、従業員がごみ箱に捨てた生魚を取り出して調理した動画がSNSで拡散し大きな問題になった某回転ずしチェーン店は、その後、人材教育に力を入れ、コンプライアンスを徹底し、二度と不祥事が起こらないよう努力を続けました。その結果、現在も人気回転ずしチェーンとして運営を継続しています。

さらにさかのぼれば、レストランチェーンの模範店とも言える某イタリアンレストランでも、店舗で提供していたピザ生地から有害物質『メラミン』が検出され、大問題に発展したことがありました。このときも企業は非を認めて代金を全額返金し、管理体制の見直しを図るなど、公明正大な努力を続けて信頼回復しています。

昨今、飲食業界は相次ぐ不祥事により業界全体に対する信頼が薄れています。多くの飲食店の声を聞く私としては、飲食で人を笑顔にしたいと頑張っている飲食店のためにも、不祥事があった企業には公明正大な姿勢で対策してほしいですね」

オトナンサー編集部

飲食業界で不祥事が続出する理由とは?