その先史時代の翼竜的ルックスに魅了されているのは私だけではないはずだ。日本ではアニメ「けものフレンズ」や、漫画「椎名くんの鳥獣百科」の影響で認知度は高いが、海外では意外と知られいないハシビロコウ先輩は、自然下では絶滅の危機に瀕している。
そこで、ハシビロコウの個体数を増やすために国際繁殖プログラムが作成され、ベルギーからイギリスに1羽のメスのハシビロコウがやって来た。
ちなみにイギリスでは最近まで、飼育されているハシビロコウは1羽もいなかったそうで、このメスは、オスがくるまで辛抱強く待ち続けることとなる。
Rare dinosaur bird brought to UK to save species
日本のお友達なら知っているだろうが、ハシビロコウは、中央または東アフリカの沼地や湿地帯に生息し、魚や小さな無脊椎動物を捕食する大型の鳥だ。
一夫一婦制のハシビロコウは、通常1羽の子供しか育てないため、近年では気候変動や狩猟、生息地の状況の変化などによって個体数が深刻な脅威にさらされており、野生のハシビロコウは3000~5000羽しか存在していないと言われている。
飼育下では、ヨーロッパで11羽のみしかいない。そのうちの1羽で、ベルギーのパイリ・ダイザ動物園で生まれ育ったメスのアボウ(14歳)が、国際繁殖プログラムの一環として、今年6月末にイギリス南西部デヴォン州にあるエクスムーア動物園にやって来た。
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伴侶を得て子孫を残すことに期待
動物園の職員によると、アボウはお年頃なのかハシビロコウの一般的な求愛の儀式とされるお辞儀や翼を広げる行為をして、飼育員らに挨拶をしているという。ちなみにハシビロコウの平均寿命は30~40年ほどだ。
アボウは、この繁殖プログラムの参加国のどこかで、伴侶となるオスが生まれるまで辛抱く1羽で待つことになるそうだ。すごく年の差カップルになるわけだが。
もし今後参加国でオスが生まれて、適合性が十分と判断されれば、アボウのパートナーとして同園に迎え入れられ、子孫を残すために繁殖活動をすることが期待されている。
身長1.2メートル、体重5.4キログラムのアボウは、2.4メートル以上の翼幅を持っていて、なんといっても鳥の世界では最大かつ最も珍しいくちばしが特徴だ。
エクスムーア動物園の職員であるデレク・ギブソン氏は、アボウを迎えることができた喜びと、ハシビロコウについて次のように語っている。
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ハシビロコウは、巨大な頭とかなり大きな体に比べて、とても短い首を持っています。
非常にエネルギー効率の良い鳥で、行動はすべて非常にゆっくりと行われます。
ハシビロコウの羽ばたきは鳥類の中で最も遅く、平均して 1 分間に 150 回しか羽ばたきをしません。数字で聞くとわかりにくいですが、例えば非常に多く羽ばたきをするハチドリは 、1 分間に 4,000 回以上羽ばたきます。
私は、ハシビロコウを見たことは今まで一度もなく、この驚くべき瞬間を実に40 年間待っていました。
メスよりオスの方が多いヨーロッパの育種プログラムの一環として、当園ではメスのハシビロコウを受け入れたわけですが、このままアボウが健康で元気に生きてくれれば、オスがどこかで生まれたら、当園に呼ぶことができます。
アボウには非常に多くの関心が寄せられているので、そのアイデアは最も素晴らしいと思います。
今後、園でアボウを飼育するにあたり、非常に脅威に晒されているハシビロコウが世界中で直面している脅威に対する認識を高めていけることを望んでいます。
14歳のアボウが、生涯で唯一の伴侶に出会えるのはまだ先かもしれないが、今回の繁殖プログラムで大いに期待されていることは間違いなさそうだ。
日本では7カ所の動物園で13羽(2021年10月現在)が飼育されている。
ハシビロコウに会える動物園
・東京都恩賜上野動物園(東京都、台東区):飼育数 4羽(メス3羽/オス1羽)
・千葉市動物公園(千葉県、千葉市):飼育数 2羽(メス1羽/オス1羽)
・那須どうぶつ王国(栃木県、那須郡那須町):飼育数 メス1羽
・掛川花鳥園(静岡県、掛川市):飼育数 メス1羽
・神戸どうぶつ王国(兵庫県、神戸市):飼育数 2羽(メス1羽/オス1羽)
・松江フォーゲルパーク(島根県、松江市):飼育数 オス1羽
・高知県立のいち動物公園(高知県、香南市):飼育数 2羽(メス1羽/オス1羽)
追記(2022/08/09)ハシビロコウの出て来る漫画のタイトルをうっかり間違えてしまいましたので訂正して再送します。動物のお医者さんではなく、椎名くんの鳥獣百科でした。申し訳ございません!
References:Too bad there's not a Tinder for shoebill birds, because this beauty wants a boyfriend | Boing Boing/ written by Scarlet / edited by / parumo
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