食べ物の見た目は、どれほど重要なのか?



スタバフード類は、いろんな意味で進化しています



 先日、スタバスターバックス)の新商品として発売された商品が“キモイ”として、Twitter上で大きな話題になりました。


スタバの新作が“キモすぎる”?
 投稿内容はシンプルで、「スタバの新作がキモすぎて(気持ち悪すぎて)買ってしまった」というもの。投稿者はスタバメニューページを紹介しつつ、「とてもおいしかった」と追記コメントを寄せましたが、これらの投稿に対して4.3万件のリツイート(引用リツイート含む)と15万件のいいねがついてしまう事態となりました。


 スタバファンもそうでない人も、このビジュアルに驚いた人は少なくないでしょうし、私も見過ごすわけにはいきませんでした。標的となった商品は、8月2日から登場しているスイーツクリームパイ ブルーベリーココア」。価格は300(税込)で限定店舗での販売となっています。



スタバに行くと、おいしそうな食べ物がきれいに並んでいます



 そこで今回は、このスタバのパイを例にしながら、「食べ物の見た目」の重要性について、考えてみることにしましょう。みなさんにとって、幸せな食生活を送るためのヒントになれば幸いです。


◆なぜキモいと言われてしまったのか?



クリームパイ ブルーベリーココア300(税込)



 まずはキモいと指摘された商品である「クリームパイ ブルーベリーココア」について、色眼鏡をかけずに観察してみましょう。


 食べ物に対する好みが人それぞれであるように、このスイーツを見て抱く印象は一通りではありません。これをおいしそうだと思う人もいれば、食指が動かない人もいて当然です。


 問題なのは、Twitter上のコメントとして挙げられた、少なからずの人々に“食べ物以外の生物”を想起させてしまった点にありました。その生物として挙げられたのが、ジブリ作品「風の谷のナウシカ」に登場する王蟲(オウム)やジャンボタニシの卵など。おいしそうな食べ物とは対極にある、気味が悪いと感じる可能性が高い存在です。


 パイが実際それらに見えるかは人によりますが、一度そのような表現方法で盛り上がってしまうとイメージを払しょくすることが難しくなる場合があります。


 投稿者はこのパイを食べておいしいと言っていますし、この投稿をきっかけに「キモいパイを食べに行ってみる」という人も出てきたようですが、このパイの尊厳が適切に保たれてはいないような気もしたので、まずはおいしく食べるための工夫について考えることにしました。


◆盛りつけを工夫することで、印象は大きく変わる



パイのクリーム部分の色(ピンクパープル)をポイントに盛りつけてみました



 まずはベリーピンクパープルポイントにしながら皿やナプキンチョイスして合わせてみました。白い皿に乗せられている時と比較すると、捉え方によっては印象が変わりませんか?


 気持ち悪い部分がピンク色パールチョコ部分やパイの形にあるとすれば、そこに重点が行き過ぎないような効果が期待できます。


 そしてもう一つやってみたのが、パイ単品で向き合わないこと。同じスタバで販売されているピンク系統のスイーツと並べてみるとどう見えるでしょうか?



ピンク系統のスイーツを集めて並べてみました



「白桃&アールグレイケーキ」と「ストロベリー&バナナのフラワーケーキ」と一緒に置いたところ、モダンスイーツプレートのような仕上がりにまとまりました。


 もちろんこれでもまだ違和感を抱く人がいるかもしれません。ちなみに周囲の人々にこのパイの印象を聞いてみたところ、「ブツブツが嫌だ」、「ボツボツ感が怖い」という声が確かに上がったので、試しにチョコ部分を取ってみることにしました。


◆ブツブツ感がなくなったら、おいしそうなパイに見えてきた!?



パールチョコをすべて取り除いてみました



 さあ、これはいかがしょうか?チョコの粒々をすべて取ってみました。この状態で気持ち悪いと感じる人はあまりいないのではないでしょうか!?


 つまり食べ物全体として見たときに、第一印象として食べ物以外を想起させてしまい、それがグロテスクな存在であればあるほど気持ち悪いという感情を芽生えさせるリスクが高まるのだと思います。



クッキークリームドーナツ」と「チョコレートチャンクッキー」。チョコクッキーが自然に散りばめられているので、気持ち悪くはありませんよね? どちらもとってもおいしそうです



 また、ボツボツブツブツ感についても100%悪ではなく、例えばチョコチップトッピングが自然なバランスで散りばめられていればまったく問題は起こらないと思います。


◆大切なのは、おいしさ以上に「不快感をもたらさないこと」
 TwitterInstagramでのSNS発信が力を持つ時代において、食べ物についての個人的な感想を投稿することは、基本的に自然であり自由な言動です。


 つまり消費者ひとりひとりの感覚は基本的には正直であり、すぐにコメントが発信できる環境ですから、今回のスタバのパイのように、作り手の意図や期待とは別次元で負イメージの連鎖が広がらないよう、第一印象を含むビジュアル面での検討は慎重に行われるべきでしょう。


 つまり、おいしい・まずいの前に、「感じが良いか?(心地が良いか?)」や「不快感を生まないか?」の視点が大切であるということです。


 そして今回の騒動は、スタバへの愛情や期待が大きいがゆえに生まれたことかもしれませんよね。くれぐれも本件がスタバにとってよりよい商品づくりにつながりますように……!


<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ


【スギアカツキ】食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram@sugiakatsukiTwitter@sugiakatsuki12