主人公のYさんは、ある日4歳の娘Aちゃんが自慰をしていることに気づきます。


「こんな小さな子がそんなことをするなんて」「女の子なのに」――。Yさんは大きなショックを受け、悩む日々を送るうちにAちゃんに嫌悪感を抱くようになってしまいます。


 著者の加藤かとさんがママ友の実体験を漫画化した『やめられない娘と見守れない私 4歳の性に悩んだ700日間』(竹書房)。テーマになっている「幼児自慰」は、あまり知られていませんが幼児にはよくあることなのだそう。


 Yさんはネットで対処法を検索し「性的な意味はなく癖のようなものです」「叱らずに見守ることが大切」などのアドバイスを読み漁るようになります。しかしYさんの気持ちはまったく救われず、逆に「見守ってあげられない自分は母親失格だ」と自分を強く責めるようになっていきます。


 前回は、そんなYさんのつらさの原因や夫との関わり方をお聞きしました。今回は、本書から第3話を紹介。その後の親子関係や、読者の反応などを聞いていきます。







◆気持ちを押し殺し「好きだよ」と伝え続けた
――Yさんが娘のAちゃんへの嫌悪感を払拭するためには、何が必要だったのでしょうか?


加藤かとさん(以下、加藤):Yさんは保健師さんからのアドバイスに従って、毎日抱きしめ、寝る前には必ず「好きだよ」と伝えるようにしていました。Yさんはその頃、本心ではAちゃんのことを好きだと思えなくなってしまっていたのですが「自分を変えたくて、最初のうちは好きだと嘘をついていた」と言っていました。


――嫌悪感が残っている状態で毎日抱きしめるのは大変だったかもしれないですね。


加藤:最初は本当につらくて、Aちゃんを抱きしめるたびに吐き気がしていたそうです。でも抱っこをして子ども特有の髪の柔らかさに触れたりするうちに「この子はまだ子どもなんだ」と改めて気づくようになっていきました。そして続けるうちに、まだAちゃんが赤ちゃんの時に、抱っこしてあげていた感覚が戻ってくるようになりました。


◆これはあくまで1人のケース。悩んでいる人は専門家に相談を
――現在、Yさんの親子関係は良好なのでしょうか?


加藤:今は「気持ち悪い」という気持ちはなくなって、Aちゃんが「抱っこして」と言ったら喜んでするし、YさんがAちゃんに愛情を感じたり、疲れた時に「抱っこさせて」と言う時もあるそうです。


――スキンシップを取り続けたことで愛情が戻っていったんですね。


加藤:ただ、これはあくまでも「Yさんのケース」であって、すべての人が同じことをするべきだと言いたいのではないんです。この漫画を読んだことで、かえってつらいのに頑張ってしまうお母さんが増えないといいなと思います。


 Yさんは「嫌悪感があるのに抱っこし続けていた時期は、精神的なダメージが大きかった」と言っていました。Yさんの場合はそのままなんとか続けたことでいい変化がありましたけど、つらい人は心療内科やカウンセリングなど、専門家に診てもらうことも大切だと思います。今はつらくても人それぞれに合う解決方法がきっと見つかるはずだと思います。


子どものプライベートを尊重する
――作品のラストでは「触らなくなること」だけが解決ではないんだなと気づかされました。


加藤:Yさんが抱きしめ続けたことで愛おしく思えるようになったからこそ、おおらかに見守られるようになったのだと思います。YさんとAちゃんとの間にいい距離感ができたのかもしれません。


――親子でもプライベートを尊重することは大切ですね。


加藤子どもが自分の部屋で何かしていて、それが親に見せたくないことだったら親のほうも気をつけてあげたらいいと思います。Yさんはしっかりノックをしたり、手がふさがっている時はわざと大きな足音を立てて「部屋に近づいているよ」とアピールしているそうです。


 4歳だったAちゃんは幼な過ぎるため自慰をうまく隠せなかったけど、今は年齢が上がって隠せるようになった。「だったら私も見つけないように気をつけなくちゃ」とYさんは言っていました。


――YさんがAちゃんに嫌悪感を抱いていた頃の言動は、現在のAちゃんに影響していないのでしょうか?


加藤:当時のAちゃんはYさんの態度から何かを感じ取っていたかもしれません。でも4歳の頃のことなので、はっきりと記憶には残っていないようで、いまのところ影響は感じていないそうです。


 小学生になった今は反抗期が軽く始まっているそうなのですが、まだまだ可愛いものなので問題なく親子関係を築けているみたいです。


◆同じ悩みを持つママに届いてほしい
――読者からの反響で印象的なものはありましたか?


加藤:否定的な意見もすごく多いのですが、共感してくださる方や「自分が子どもを持った時に気をつけたい」という声もたくさんいただいています。


 すごく多かったのが「私も子どもの頃していました」という方や「私の子もしているんです」という声です。先日いただいた感想で「自分自身は我が子が触っているのを気にしていなかったけど、世の中にはすごく気にするお母さんがいるのが分かった。もし周りの友達が悩んでいたら気をつけてあげようと思った」という方がいました。


 あと読者の方で、ご友人が娘さんの自慰に悩んでいるので「何かのヒントになればと思ってこの本をプレゼントしたい」と仰ってくれたことがあります。


――「私だけじゃないんだ」と思える方が増えるといいですね。


加藤:いただいたメッセージでも、そういう声がすごく多いです。Yさんが「世の中のお母さんに、悩んでいるのは自分だけじゃないと思えるように漫画にしてほしい」と言ってくれたことが漫画を描くきっかけだったので、本当に嬉しいです。


――これから、この作品をどんな方に読んでほしいと思いますか?


加藤:実際に子どもが自慰をすることに悩んでいる方に読んでいただきたいです。あとは今まで「幼児自慰」を知らなかった人にも「こういうことがあるんだ」と知ってもらうきっかけになったらいいなと思います。知ってもらうことでYさんのように一人で抱え込んでしまうお母さんを減らせたらと思います。


 また、友人の心理士さんが「専門家の間でも話題にしにくいことなので、専門家にも読んでほしい」と仰っていました。だからそういう方にも読んでいただけたらいいなと思います。この本を読んでいただいくことで話題にしたり、相談しやすくなるといいなと思っています。


<取材・文/都田ミツコ>


【都田ミツコ】ライター編集者1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。