お寿司といえば、全国的に江戸前のにぎり寿司が一般的ですよね。しかし大阪には、大阪生まれの押し寿司があり、その中でもサバを使った押し寿司は「バッテラ」と呼ばれ、今でも人気があります。

 今回紹介する『寿司常(すしつね)』は、そんなバッテラが誕生したお店で、日本一長い商店街の天神橋筋商店街沿いにあります。この発祥の地で美味しいバッテラを食べてきました。

 お店は大阪メトロ谷町線南森町駅JR東西線大阪天満宮駅から徒歩約1分の場所にあります。

 最寄り駅の名前からピンと来た人もいるかも知れませんが、お店は菅原道真を祀った天神さんの名前で親しまれる「大阪天満宮」から目と鼻の先。

[食楽web]
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 店先のショーケースにはバッテラの由来やバッテラを作る際に使う木型などが展示されていて、こちらの店で間違いないようです。

 お店に入ると店内はカウンター主体の落ち着いた雰囲気のお店。メニューには、誕生した時の名前に忠実に“バッテーラ膳”と書いてあります。

名前の由来通り、小舟形の「バッテーラ膳」がテーブルに流れ着いた

「バッテーラ膳」1500円
「バッテーラ膳」1500円

「バッテーラ膳」を注文してしばらくすると、まずは小鉢が運ばれてきました。今回は夏にお邪魔したので枝豆のお豆腐。しっとりとしつつも、ツルリとした食感を出汁醤油でいただく冷製小鉢は、夏の前菜にピッタリです。

 美味しい小鉢で期待が膨らんだところに、「バッテーラ膳」が到着しました。一般的に「バッテラ」というと、四角くカットしたサバの切り身を使った長方形の押し寿司が多いのですが、『寿司常』では姿状態のサバが使用されています。

 この姿状態のサバとシャリを舟形の木枠に入れて押して作るので、寿司のフォルムが舟形になります。この舟形の寿司を見て、ポルトガル語の小舟を意味する「バッテーラ」という名前で読んだのが発祥の由来となっています。

 バッテラの発祥は明治中期ということなので、ものすごくハイカラネーミングセンスに驚きです。

ふんわり成型されたシャリと、脂の乗ったサバが絶品すぎる!

 それではいただきます。まず一口食べると、お酢の感じはキリッとした強めの印象。サバは少し小ぶりですが、脂がしっかりとのっていてジューシー。今までのバッテラのイメージが変わるほど、美味しかったです。

 さらにちょっとビックリしたのが、シャリはあくまで“ふんわり”していること。押し寿司はお米を強く押し付けて作る場合も多いのですが、『寿司常』の「バッテラ」は空気をたっぷりと含んでいて、持ち上げると崩れるほど繊細に成型されています。

 また上にのった薄い昆布もコリっとした食感で、抜群のアクセント! 全てが絶妙なバランスでできているのです。

添えられた「巻き寿司」が思わぬ伏兵! その旨さにびっくり

バッテラ」の横には巻き寿司が添えられているのですが、こちらも油断大敵。中身の具材は肉厚の干し椎茸とキュウリだけで、どちらもほかでは見かけないくらいの大ぶりカット。

 椎茸は甘くてジューシーで、キュウリは新鮮でポリポリした食感。驚くほどシンプルな組み合わせですが、インパクト絶大! バッテラ発祥のお店として有名な『寿司常』ですが、思わぬ伏兵がいました。

 ちなみに「バッテラ」は元来、コノシロを成型して提供していたのが高価になったためサバで代用したのが、現在の「バッテラ」のルーツ。『寿司常』では運が良ければ、コノシロのバッテラがある場合もあるのでご確認ください。

バッテラ」で特徴的なのが、寿司の上に乗ったキラキラと光りを反射する美しい「昆布」。おぼろ昆布を削った後に残る昆布を、捨てずに再利用したのがきっかけと言われています。物を大事にする大阪人ならでは工夫であり、お寿司の食感をアップさせることに貢献しています。

『寿司常』は大阪天満宮の目の前にあり、天神さんのすぐ横には上方落語の常設寄席「繁昌亭」などもあるので、古き良き大阪の文化にふれるのにピッタリのお店となっています。

(撮影・文◎けいたろう)

●SHOP DATA

寿司常

住:大阪府大阪市北区天神橋2-4-3
TEL:06-6351-9886
営:11:00~14:00、17:00~21:30
休:水曜(月・火はランチお休み)、第2火曜
http://www.ryusdc.net/sushitsune/

●著者プロフィール

けいたろう
旅するグルメライター。大阪と京都をむすぶ京阪電車の沿線在住で、複数の旅行情報サイトにて旅とグルメのガイド記事を執筆。気になるグルメ情報があるとB級グルメも高級店も穴場のお店も有名行列店でも、とにかく幅広く取材!食楽webでは関西グルメ情報を中心に紹介しています。

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