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 太陽系の火星と木星に挟まれた小惑星帯に「ケレス」という準惑星がある。NASAの探査機ドーンによる調査で、この小さな天体には地質活動の痕跡が発見されている。

 準惑星とは、それ自身の重力によって球形になれるだけの質量を有する、太陽の周囲を公転する惑星以外の天体のことだ。

 ケレス月よりもずっと小さいため、熱源がない小さな天体で地質活動が起きるなど、これまでの常識では考えられないことだった。

 このほどバージニア工科大学の研究グループによって驚きの発見があった。ケレスには熱源があり、それは内部に含まれる放射性元素だったのだ。

【画像】 ケレスに謎の地質活動の痕跡を発見

 火星と木星の間にある小惑星帯でケレスが正式に発見されたのは1801年のことだ。

 200年以上前から知られているにもかかわらず、この準惑星は長い間曖昧な存在だった。小惑星帯で最大の天体ではあるが、地球の望遠鏡で観察しても目立った特徴が見つからないのだ。

 ぼんやりとしたその姿がはっきり観察できるようになったのは、ようやく2015年になってのことだ。NASAの宇宙探査機ドーンのおかげである。

 驚いたことに、そこには台地・鉱床・亀裂といった地質学的特徴が残されていた。これはケレスにはかつて地震があり、海すらも存在した可能性を示すものだ。

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 だが、それは不可解なことだった。なぜなら、そのような痕跡を残す地質活動が起きるためには、「熱源」が必要なはずだからだ。

 これまでの常識では、この小さなケレスにはありえないとされたものだ。

 地球のようなもっと大きな惑星なら、非常に荒々しい形成プロセスで熱が生じて、力強い地質活動が生じる。だがずっと小さなケレスの場合、形成段階で熱が発生したはずがない。

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探査機ドーンが観察したケレスの地形図とクレーターの名称。黒線は今回の論文で言及された断層を表す/Credit: Scott King

熱源の正体は放射性元素

 だがバージニア工科大学のスコット・キング教授らが、ケレスの過去をコンピューターモデリングしてみたところ、熱源を得るために必ずしも最初から熱い必要はなかったことが明らかになった。

 ケレスには「ウラン」と「トリウム」という放射性元素が含まれているからだ。それらが内部で放射性崩壊を起こし、冷たかったケレスを熱した。

 より大きな惑星では最初から熱く、それから徐々に冷えていくのが普通だ。だがケレスは冷たい状態から始まり、放射性元素によって熱され、それから再度冷たくなったと推測されている。

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 キング教授は、「放射性物質による加熱は、それだけで十分面白そうな地質を作り出せる」ことを示したと語る。

Flight Over Dwarf Planet Ceres

 今回の発見は、ほかの準惑星や似たような衛星について、新しい洞察を与えてくれると期待できるだろう。

 そうでなかったとしても、私たちが宇宙の形成プロセスについてほとんど何も知らないことだけは確かだ。つまり今後もまだまだ新しい発見があるということだ。

 この研究は『AGU Advances』(2022年5月17日付)に掲載された。

References:Modeling reveals how dwarf planet Ceres powers unexpected geologic activity / written by hiroching / edited by / parumo

 
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準惑星ケレスの予期せぬ「地質活動」が科学者に衝撃を与える。放射性元素を熱源にしていた