国家公務員といわれると、どのようなイメージを持つでしょうか。「残業が少ない」「安定している」など、羨んでいる人も少なくありません。また、いわゆる「キャリア」と呼ばれる人の多くは有名難関大学の出身であり、「官僚といえば東京大学卒」というイメージを持っている人も多いでしょう。しかし、人事院や省庁が公表するデータを紐解いていくと、日本の行く末を心配せざるを得ない状況がみえてきました。

国家公務員の平均給与額は41万円。一見高給だが…

国家公務員とは、国および地方自治体国際機関等の公務、すなわち公共サービスを執行する職員のうち、国家機関や行政執行法人に勤務する人のことを指します。

国家機関や行政といった「公」のための業務に携わる国家公務員は、いったいどれほどの給与をもらっているのでしょうか。人事院が公表した『令和3年国家公務員給与等実態調査』によると、調査対象となった新規採用者等を除く25万3,000人の平均給与額は、41万4,729円でした(平均年齢42.7歳)。

また、今年8月に人事院が公表した『令和4年国家公務員給与等実態調査の結果概要 』によると、平均給与額は41万3,064円と、ほぼ横ばいとなっています(平均年齢42.5歳)。

一方、民間はというと、厚生労働省は『令和3年 賃金構造基本統計調査』にて、正社員・正職員の賃金を月額32万3,400円(平均年齢42.3歳)と公表しています。

こうしてみると、民間企業の平均と比べて高給にみえる国家公務員の給与。しかし彼らはやはり、東京大学をはじめとした有名難関大学を卒業していることがほとんどです。コンサルや商社といった大企業で支払われる給与と比べると、「高給取り」とは言い難いでしょう。

国家公務員合格者数…1位はさすがの「東京大学」

人事院の『2022年度国家公務員採用総合職試験(春)の合格者発表』によると、2022年度の国家公務員の合格者は1,873名で、倍率は8.2倍となっています。

大学の出身校でみてみると、国立大学が1,248人で、全体の6割超え。私立大学は531人で、3割弱です。合格者の出身学校数は159校と、昨年度から22校増加。そのなかで最も合格者が多いのは「東京大学」で217名。全体の1割以上を占めています。

国家公務員採用総合職試験(春)合格者出身大学上位10】

1位:東京大学 217

2位:京都大学 130名

3位:北海道大学 111名

4位:早稲田大学 84名

5位:東北大学 75名

6位:慶應義塾大学 71名

7位:立命館大学 63名

8位:岡山大学 61名

9位:中央大学 49名

10位:千葉大学 47名

出所:人事院

「官僚といえば東京大学卒」というイメージがありますが、そのとおり、国家公務員合格者の10人に1人は東大卒という結果に納得感があります。ただ経年でみてみると、近年、国家公務員合格者における東大卒の存在感は薄れつつあるようです。

東京大学国家公務員合格者数」推移】

2013年:454名

2014年:438

2015年:459名

2016年:433

2017年:372名

2018年:329

2019年:307

2020年:249名

2021年:256

2022年:217

出所:人事院

「東大卒・エリート官僚」が減少を続ける日本の危機

これほど合格者を減らしているのは、東大だけで、ほかは年度によって上下はあるものの、それほど目立った動きはみられません。ここからみえてくるのは「東大のキャリア離れ」です。東大生は、あえて官僚を目指さなくなっているのです。

理由はいくつか考えられ、2010年代、景気回復によって、民間志向の卒業生が増えたこと。また国家公務員の長時間労働が大きく報じられ、忌避感が強まっていることが一因です。

たとえば三菱商事の平均年収は、有価証券報告書から「1,678万3,874円(平均年齢42.7歳)」であることがわかっています(※)。

有価証券報告書の年収には残業代およびボーナスも含まれていることが多い。

また、人事院『令和3年人事院勧告』によると、他律的業務の比重が高い部署の職員は8.7%、また上限を超えて超過勤務を命じられた本府省の他律部署に限ると15.7%にのぼります。1ヵ月に100時間未満の上限を超えた職員が7.8%、2〜6ヵ月平均で80時間以下の上限を超えた職員は10.4%だったといいます。

特に国会開催中、夜遅くまで明かりがついている官庁街を歩いたことがある人もいるでしょう。「こんな時間まで働いているんだ……」という驚きを覚えたに違いありません。

そのようななか、国としても危機感が高まっているのか、徐々に待遇改善の機運が生まれています。

人事院は「働き方改革」を打ち出しており、2015年よりフレックス制度を導入、翌年には制度を拡充しました。また、2022年3月には『妊娠・出産・育児・介護と仕事の両立支援制度の活用に関する指針』を打ち出すなど、ワークライフバランスの向上に動いています。

さらに今月8日、人事院は2022年度の国家公務員の月給を0.23%(921円)、ボーナス(期末・勤勉手当)を0.10ヵ月引き上げて年4.40ヵ月とするよう国会と内閣に勧告しました。月給、ボーナスともにプラス改定を求めるのは3年ぶりで、年間給与は平均5万5,000円増える見通しとなっています。

「東大卒・エリート官僚」が減少を続ける現在。有望な学生が国家公務員を敬遠し続けると、それが「日本凋落」につながりかねないことから、私たち日本国民にとっても無関係な問題ではないかもしれません。給与や労働環境など、今後の更なる待遇改善が待たれます。

(写真はイメージです/PIXTA)