中国が科学論文において、数、質と共に世界一になったことが分かりました。ヒトとカネに集中的に投下し、成長を続ける中国。その先に見据えるものとは……みていきましょう。

中国、最上位論文数、世界一…日本は低落傾向

文部科学省の学術政策研究所の報告書によると、自然科学分野の研究論文に関わる代表的な3つの指標、総論文数、トップ論文数(研究者による引用回数が上位1%)、注目論文数(研究者による引用回数が上位10%)、いずれも中国が1位になったと大きく報道されました。

中国の総論文数は40万7181本。2位米国の29万3434本に10万本超の差をつけています。さらにトップ論文数では中国が27.2%。米国の24.9%を上回っています。

ここでいわれるのが、やはり日本の存在感。総論文数では5位、トップ論文数では10位、注目論文数では12位。日本の順位の低下傾向が問題とされています。

さらにアメリカ国立科学財団(NSF)による、科学論文数でも中国は2位アメリカを20万件以上も上回り、存在感をみせています。また14分野別にみてみても、天文学や医学、心理学社会科学の4分野以外は、すべて中国がトップとなっています。

【「科学論文数」トップ10】

1位「中国」669,744件

2位「米国」455,856件

3位「インド」149,213

4位「ドイツ」109,379件

5位「イギリス105,564件

6位「日本」101,014件

7位「ロシア」89,967件

8位「イタリア」85,419

9位「韓国」72,490件

10位「ブラジル」70,292件

出所:アメリカ国立科学財団(NSF)2020年

ちなみに全体6位の日本。分野ごとにみていくと、全網羅的に存在感を発揮する中国に対し、日本は得意分野に偏りがあることがわかります。

【「分野別科学論文数」日本の世界順位】

「化学」「医学」4位

「コンピューター科学」「材料科学」「生物科学」「物理学」5位

「工学」6位

「天文科学」7位、

「数学」10位

地球科学」「心理学」11位

「農業科学」14位

「天然資源・保護」15位

社会科学」19位

出所:アメリカ国立科学財団(NSF)2020年

ヒトとカネに集中投下…技術大国へと邁進する中国

中国は2050年までに、米国と並ぶ「科技強国」になろうと、ヒトやカネを戦略的に投じていますOECDの調べでは、研究者数でも世界一の228万人。また研究開発費では5,828億US$と米国に続く第2位ですが、その伸び率は米国以上。いずれ米国を抜くことも十分に考えられます。

【世界の「研究者数」】

1位「中国」2,281,134

2位「米国」1,586,497人*1

3位「日本」689,889人

4位「ドイツ」451,859人

5位「韓国」446,739人

6位「ロシア」397,187人

7位「フランス321,550人

8位「イギリス316,296人*1

9位「カナダ」167,440人*2

10位「台湾」163,536人

【世界の「研究開発費」】

1位「米国」7,209 億米$

2位「中国」5,828 億米$

3位「日本」1,741 億米$

4位「ドイツ」1,434 億米$

5位「韓国」1,129 億米$

6位「フランス」746 億米$

7位「イギリス560 億米$*1

8位「ロシア」480 億米$

9位「台湾」479 億米$

10位「イタリア382 億米$

出所:OECD(2020年)

*1:2019年数値 *2:2018年数値

いま米中は台湾問題で緊張が高まっていますが、中国は米国の制裁を意識し、これ以上の暴挙には出ないという見方が一般的です。米国抜きでは中国経済が成り立たないという弱みもあるからでしょう。

現在、中国は技術に集中していることもあり、基礎研究では米国などに遅れをとっているとされています。しかし数に勝る中国。そのうち基礎研究でも存在感を示すようになるでしょう。このまま科学技術にヒトとカネを投下していけば、2050年、中国が名実ともに世界一の技術大国になるのは確実です。さらに中国は独立性まで手にいれるとしたら、いまのように米国を意識する必要はあるでしょうか……なんとも恐ろしい事態が想像されます。

(※写真はイメージです/PIXTA)