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 普段よりも頭を使った日、体を動かしたわけでもないのに、体がだるくなって、ぐったりと疲れ切ってしまうことってあるよね。

 『Current Biology』(2022年8月11日付)に掲載された研究によると、頭を酷使すると、脳に有毒な物質となる「グルタミン酸」が蓄積され、精神的疲労がたまるという。

 疲労した脳は、意思決定のコントロール力が低下し、「すぐに満足できる楽なこと」に流されやすくなる。だから疲れたまま頑張るよりは、少し休憩を入れたほうがいいということだ。

【画像】 頭を酷使すると脳に有毒な物質が蓄積される

 なぜ頭を使うとドッと疲れが出るのか?

 これまでの有力な仮説では、精神的疲労は「今の行動を中断して、もっと満足できる行動をうながすために脳が作り出すある種の錯覚」とされていた。

 ところが、フランス・サルペトリエール病院パリ脳研究所のマティアス・ペシグリオーネ氏らによる今回の研究は、頭を使うと脳に物理的な変化があることを示している。

 脳のシナプスに有害な物質が溜まるのだ。このことから、脳が機能を維持するために、今の作業をやめて、別のことをやれというメッセージを疲労という形で伝えているらしいことがうかがえる。

 その毒物とは「グルタミン酸」だ。これは脳内で、もっとも豊富な興奮性の神経伝達物質で、脳が適切に機能するためには欠かせないものである。

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 だがそのためには、グルタミン酸が適切な位置に適切な濃度でなければならない。

 ところが脳内でグルタミン酸が過剰になると、毒性を発揮して神経細胞を殺してしまう。

 なおグルタミン酸は「うまみ成分」としても有名だが、口から摂取しても”脳関門を通過できない”ので、有害な作用はもたらさない。勘違いしないようにしよう。

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脳を使えば使うほどより強く疲労感を覚える

 今回の研究では、人がコンピューターのように、いつまでも同じ効率で計算し続けられない理由が探られている。

 被験者は頭を使わねばならないグループと、それほど頭を使わなくても済むグループに分けられ、MRスペクトロスコピーMRIの一種)で1日の間の脳の化学的変化がモニターされた。

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 すると、頭を使うグループには、瞳孔散大が減少するなど、より強く疲労していることを示す兆候が現れた。

 しかもそうした人たちの「前頭前野」のシナプスは、グルタミン酸濃度が高くなっていたのだ。

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頭を使い過ぎたと感じたら、休憩すること

 普段より頭を使って疲れたと感じていたら、少し休憩するといいだろう。そのまま頑張るのは、思わぬミスにつながる恐れがあるからだ。

 今回の研究では、疲労した人たちには、意思決定が遅れたり、できるだけ楽ですぐに満足が得られるような選択をする傾向が見られている。

 ペシグリオーネ氏らはこうした証拠に基づき、頭を酷使すると、脳内にグルタミン酸が溜まり、認知的なコントロールが難しくなると結論づけている。

 こうした脳の疲労をとるには、休息と睡眠しかないとのこと。ペシグリオーネ氏は「睡眠中に、シナプスグルタミン酸が減るという証拠があります」と話す。

 なお、こうした頭脳労働による疲労が他の疲労とどう関係しているのか、まだ不明であるとのことだ。

References:Why thinking hard makes you tired -- ScienceDaily / written by hiroching / edited by / parumo

 
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考えすぎは体に毒は本当だった。精神的疲労は有毒な化学物質を脳に蓄積させる