交流戦も決着し、いよいよペナントレースが再開したプロ野球。読者の皆さんはアニメに関する、こういう噂があるのをご存じでしょうか。

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「突然野球回が始まるアニメは名作」

 そう言われてみれば、確かに突然野球回が始まるアニメというのはよく見かけますし、それぞれにいい意味で印象的です。アニメだけでなく、野球もガチファンな筆者が、そんな「突然の野球回」アニメで打線を組んでみました。

1(三)『涼宮ハルヒの憂鬱』放送第4話「涼宮ハルヒの退屈
2(二)『Angel Beats!EPISODE.4「Day Game」
3(遊)『FLCL』第4話「フリキリ」
4(投)『宇宙をかける少女』第9話「燃えろ、QT!! Q速∞」
5(捕)『ガンダムビルドファイターズ』第13話「バトルウェポン」
6(一)『サムライチャンプルー』第23話「一球入魂」
7(左)『きんいろモザイク』第10話「すてきな ごにんぐみ」
8(右)『侵略! イカ娘』第10話Cパート「野球しなイカ」
9(中)『ソウルイーターノット!』第9話「カボチャ、グローウィン!」


<1番・サード
 1番バッターは『涼宮ハルヒの憂鬱』。言わずと知れた名作、いわば大スターですから、ポジションはホットコーナー・三塁手。世界を揺るがす力を無意識に振う女子高生涼宮ハルヒと、彼女に振り回されるSOS団の面々を描いたSF青春ラブコメです。このエピソードでは、ハルヒが野球大会への参加を決めてきます。もちろん野球素人の面々では勝てるはずもなく、ハルヒはどんどん不機嫌に。ハルヒの不機嫌は世界の危機を招くので、長門が一計を案じ……という、『涼宮ハルヒ』のパターンを実によく紹介してくれる1本。シャッフル放送で連続エピソードの途中に挿入された唐突さ、エピソード自体の取っ付きの良さを買っての起用です。

<2番・セカンド
 2番には『Angel Beats!』。死後の世界と思しき学園での生徒たちが生前の思い残しを叶えて成仏していく物語です。第4話ではお調子者の日向と仲間たちが学内の野球大会に出場します。実は、日向は生前も野球部所属。フライを落球して大会で負けた、という思い残しがあったのです。日向はこの試合で成仏してしまうのだろうか……というサスペンスだけでなく、死なないことを生かした破天荒なプレーも楽しいエピソードです。原作・脚本の麻枝准さんは、他の作品でも野球ネタをしばしば挟んでくる野球好き。その情熱に敬意を表して、日向のポジションである二番セカンドを託します。

<3番・ショート>
 3番は『FLCL』。ひねくれ者の小学生ナンダバ・ナオ太とベスパにのった女、ハルハラ・ハル子の出会いから始まる遊び心とリリシズムに溢れたSFアニメです。第4話は、地元草野球チームに兄・タスクの代わりに助っ人で呼ばれたナオ太がバットを振ることさえできない屈辱的な導入。タスクの弟なのに……という視線が突き刺さります。「バットを振る」というモチーフを巡って、ドラマは二転三転、やがてマバセの町そのものを揺るがす事態へ発展していくダイナミズムはこの作品ならでは。また、広島の前田、ダイエーの大越に言及する次回予告も感涙もの。本作の脚本の榎戸洋司さんも他作品で野球ネタを使う野球好き。ポジションは遊び心に因んで遊撃手、打順は第4話、そして野球好きクリエイターというつながりを重視しての3番です。

<4番・ピッチャー
 エースで4番はこの作品しかないでしょう。『宇宙をかける少女』です。しゃべる宇宙コロニーのレオパルドとごく普通(?)の少女・獅子堂秋葉の出会いから始まるSFアニメなのですが、この回ではそのあたりの設定は全く出てきません。舞台は宇宙からがらっと変わって地上らしき場所。秋葉は、魔球・魔QTを操っては球団の権利書を巻き上げていた。そんな秋葉の前に、同じくQT使いの強打者、いつきが立ちふさがる……というのですが、前後のエピソードとはびっくりするほどまったく関係がないのです。その一方で、超能力を持つ少女たちが家族や職場の因縁と大人の思惑に踊らされて……という筋立ては、本編の翻案にもなっています。唐突さ、本来のテーマとのかかわり方、そして設定完全変更の大インパクト。突然の野球回の代名詞的存在です。

<5番・キャッチャー
 5番の『ガンダムビルドファイターズ』はガンプラを動かして戦うガンプラバトルを描いた物語。世界大会予選第3ピリオドは、運営が用意した武器を使って戦う形式。そこに用意されていたのはボールとバットだった……というところから、唐突にガンプラガンプラの野球対決が始まってしまうのです。人間なら野球をしたって不思議はないわけですが、ガンプラが野球を始めるのは前代未聞。そのインパクトはクリンナップ級。4番の『宇宙かけ』とはどちらもサンライズ制作の縁でバッテリーを組んでもらいます。

<6番・ファースト>
 6番の『サムライチャンプルー』は、「向日葵の匂いのするお侍」を追う少女・フウと、彼女が雇った用心棒のジンとムゲンの時代考証無視、なんでもごちゃまぜの破天荒な旅路を描く時代劇アニメです。23話ではペリー来航のずっと前に日本にやってきたアメリカ人が野球勝負で開国を要求してくるのをムゲンたちが迎え撃つことに。江戸時代中期にこんな野球秘史が……と感心してはいけません。野球のルールができたのが1845年。ペリー来航直前、江戸時代の末期も末期なわけですから。堂に入ったでたらめっぷりは、中軸の後を任せるに相応しい迫力。守備は作中のムゲンと同じく一塁。

<7番・レフト
 下位打線は、まず7番が『きんいろモザイク』。イギリスからやってきた女の子・アリスとその友人たちを描いた萌え4コマ作品のアニメ化です。九条カレンが父親から借りてきた道具で野球をしようと言い出します。が、カレンは野球のやり方なんて全然わかっていないので、陽子がピッチャーアリスバッターに決まるまで一悶着。スポーツ万能の陽子がさんざん翻弄したアリスに最後に見せる優しさが胸にしみます。アリスの打球が左翼方向だったので、ポジションはレフト


<8番・ライト>
 ライパチにはイカちゃんこと『侵略! イカ娘』。海の底から地上を侵略にやってきたイカ娘の、侵略とは名ばかりの愉快な日々とイカちゃんの可愛さを描いた原作を水島努監督がアニメ化。この第10話Cパートはアニメオリジナル。水島監督の代表作『おおきく振りかぶって』の野球描写を支えた満仲勧氏が脚本・絵コンテ・演出・原画を担当。みんなのフォームが実に綺麗です。が、いつも遊んでいるイカちゃんが野球をするのにはあまり意外性がないので、かわいい“みそっかす”の定位置に。


<9番・センター>
 上位へつながっていくラストバッターには、W杯で延期された最終回が待ち遠しい『ソウルイーター・ノット!』。ポジションは作中での打球方向に因んでセンター。死武専に入学した春鳥つぐみの学園生活を描いた作品です。このエピソードでは、掃除の時間に野球を始めてしまう三人娘が描かれていて、まさに仲良し女学生のウキウキライフ。日本出身のつぐみが言いだしっぺ、というあたり、野球は日本の文化として根付いているのだなと感じさせられます。一方、そんなつぐみの球を身体能力だけでジャストミートしてしまった初心者のアーニャ。つぐみとは、文化も鍛え方も、覚悟も違う。作品の根本に位置するテーマをお遊びの中でさらっと示した名エピソードです。

 以上が、アニメ&野球ファンが選んだベストナインになります。「突然野球回が始まるアニメは名作」と呼ぶにふさわしいラインナップではないでしょうか。ここで取り上げられなかった野球回も数々ありますので、よろしければ皆さんもコメント等で情報をお知らせ下さい。

文・夏葉薫

一番バッターは世界を揺るがす力を持つこの人『涼宮ハルヒの憂鬱』