新江ノ島水族館が所有するオオグソクムシの標本は、じつは新種だったことが判明したそうだ。
オオグソクムシと言えば、体長50センチにもなる「ダイオウグソクムシ」が有名だ。新種もそこまでではないが、体長26センチとかなり大きい。
新種のオオグソクムシは、捕獲されたメキシコ、ユカタン半島にちなみ「Bathynomus yucatanensis(バシノモス・ユカタネンシス)」と命名された。
この研究は『Journal of Natural History』(2022年8月9日付)に掲載された。
深海に生息する「オオグソクムシ」は、イカつい見た目と裏腹に、石を持ち上げると小さく丸く転がっているダンゴムシの仲間だ。
仲間ではあるが、大きさはかなり違う。オオグソクムシ最大の仲間である「ダイオウグソクムシ」などは、体長50センチにも成長する。
巨大深海生物ダイオウグソクムシ - Giant isopod which lives in the deep sea
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今回の発見の発端になったのは、台湾大学の黄銘志副教授らが、3年前に南シナ海の東沙諸島周辺で捕獲されたオオグソクムシを鑑定するために、新江ノ島水族館から標本2点を取り寄せたことだ。
すると片方はダイオウグソクムシだったが、もう片方は何かが変であることがわかった。
新江ノ島水族館の標本は、2017年にメキシコ、ユカタン半島沖の600~800メートルの深海で捕獲されたもので、当初はダイオウグソクムシの変種と考えられていた。
これまでメキシコ湾に生息するオオグソクムシは、「B. giganteus(ダイオウグソクムシ)」と「B. maxeyorum」の2種が知られていた。
江ノ島水族館の標本は新種であることが判明
ところが、江ノ島水族館の標本はそのどちらとも微妙に違った。
B. giganteusにしては体が細長く、全長が短い。胸脚と触覚も長い。だが尾節(体の後端にある尾のような部分)のトゲの数は同じだ。
一方、B. yucatanensisとB. maxeyorumの最大の違いは、前者のトゲが11本であるのに対して、後者は7本であることだ。
またB. yucatanensisの外殻がシミのあるクリームっぽい黄色であることも、灰色に近い近縁種と区別する手がかりだ。
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研究グループは、確証を得るために分子遺伝学的解析も行なっている。それによれば、B. giganteusとB. yucatanensisとでは、2つの遺伝子(COIと16S rRNA)の配列が違っていたという。
このように形態学的な違いと遺伝子の違いに基づき、新江ノ島水族館の標本は新種と認定された。
なおB. yucatanensisに一番近いのはB. giganteusであるそうだ。
このことは、両者が共通祖先を持つ可能性が高いということだ。またメキシコ湾には、まだ知られていないオオグソクムシの新種が隠れている可能性もある。
新種に認定されたオオグソクムシの標本 /Credit: Dr Ming-Chih Huang, Journal of Natural History
さらに分かった新事実
今回の研究ではさらに、南シナ海で捕獲されたオオグソクムシの一種「B. kensleyi」が、じつは「B. jamesi」という別種であることも判明したそうだ。
「オオグソクムシ属は外見が非常によく似ており、以前より種を間違って認定してきたらしいことが明らかになりつつある」と、研究グループは述べている。
このような新種の発見は、自然保護とも関係があるという。オオグソクムシの中には食用に適している可能性があるものもあり、深海トロール漁の対象になっている。
乱獲を防ぐためにも、どの種がどれだけ漁獲されているのか正確に把握することが大切であるとのことだ。
References:New giant deep-sea isopod discovered in the Gulf of Mexico / written by hiroching / edited by / parumo
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