収入のほとんどが年金となる高齢者。そのような人たちにとって「家賃」は節約が難しく、生活を圧迫させる要因になることも。さらに賃貸派の高齢者、特有の問題も。みていきましょう。

都道府県別「家賃」ランキングにみる、高すぎる「東京」の家賃水準

家を買うべきか、買わざるべきか……この問題、常に問われているもので、結局は人それぞれと、永遠に答えのでない難問です。

とはいえ、日本は持ち家信仰が強く、総務省平成30年住宅・土地統計調査結果』による持ち家率は61.2%。5人に2人は「賃貸」です。年齢別に見ていくと、年齢があがるとともに持ち家率もあがり、60代にもなるとおよそ9割に達します。この時点でローンを払い終えているかどうかはさておき、残り1割の高齢者は、住居費として家賃を払い続けることを選択した、ということになります。

【年齢別「持ち家率」の推移】

~29歳:33.6%

30~39歳:65.0%

40~49歳:77.7%

50~59歳:85.1%

60~69歳:88.8%

70歳~:87.3%

出所:総務省『家計調査』(2021年)

いま多くの人が直面している物価高のなかでも、家賃は節約のしようがない固定費。できれば希望の立地や間取りを叶えつつも、低く抑えたいもの。「東京の家賃は高すぎる」などと言われますが、実際のところはどうなのでしょうか。

全国賃貸管理ビジネス協会『全国家賃動向』(2022年7月)で、都道府県ごとの最新の平均家賃をみていくと、全国平均は5万5,348円。そのなかでも、やはりトップは「東京都」で7万3,160円と、全国平均の倍の家賃水準となっています(関連記事:『【2022年7月】都道府県別「平均家賃」ランキング 』)。

以下、「神奈川県」6万8,747円、「大阪府」6万1,855円、「埼玉県」6万0,931円、「千葉県」5万8,913円と続きます。東京や大阪の大都市圏周辺で家賃水準が高く、全国平均を大きく上回っています。

一方で、家賃水準が最も低いのは「鳥取県」4万3,801円で、東京都の家賃水準の6割程度、全国平均の8割程度です。以下「富山県」「山形県」「大分県」「愛媛県」と続きます。

家賃が東京の5分の3……東京都に住む人からしたら、鳥取県の家賃水準は羨ましい限りでしょう。特に生活費のほとんどが年金となる高齢者であれば、なおのことです。

家賃負担が重くても、身動きできない年金生活者の実情

厚生労働省令和2年厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、「東京都」の平均年金受給額(厚生年金)は15万9,393円。それに対し、「鳥取県」は12万7,047円でした(関連記事:『【2022年】都道府県「厚生年金」「国民年金」受給額ランキング』)。

東京と地方を比べた時、「物価は東京とそれほど変わらない」とか、「車は必須で維持費は結構かかる」など、地方だからといって、一概に生活費が安いとはいえないでしょう。ただ固定費となる家賃が、鳥取は東京の6割に対して、年金は8割。年金だけが頼りという高齢者にとって、東京での賃貸暮らしは少々厳しいところもあるようです。

また東京に限らず、全国的にいえるのは、「家主は高齢者を敬遠する」ということ。株式会社R65が行った調査では、高齢者の4人に1人が「不動産会社に入居を断られた」と回答し、「5回以上断られた」という人は13.4%にも上りました。

――生活が苦しいから、もっと家賃の安いところに引越しをしよう

そう考えたところで、高齢者の場合、適当な物件への引越しはハードルが高く、「家賃が高い」と感じる家に住み続けなければならない……そんなケースが多いのです。

そのような状況でありながら、「高齢者は賃貸住宅を借りづらい」という事実を知らない高齢者は3人に1人以上だとか。気づいたときには八方塞がり、という年金生活者は結構な数になると考えられます。家を持つのも、持たないのも自由。ただ高齢者に対する残酷な事情を知り、きちんと対策しておくことが重要です。

(※写真はイメージです/PIXTA)