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M部門の電動化

BMWのM部門(M GmbH)は今年、設立50周年を迎える。これを記念してさまざまな新モデルが発表されているが、一連のリリースを終えた後、BMWはM3の後継となるEVの開発に着手する見込みだ。

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今年はM部門にとって、多忙な1年となっているようだ。すでにM4 CSL、M3ツーリング、そして23年ぶりの耐久レーサーとなるV8ハイブリッドLMDhが公開されているが、まだこの後もXMとM2クーペのローンチが控えている。

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次期BMW M3は、前輪駆動後輪駆動、全輪駆動に対応した新プラットフォームを採用する見込み。(画像は予想レンダリング)    AUTOCAR

第2世代となる次期M2クーペは、M3およびM4と同じB58 3.0L直6エンジンをデチューンして搭載し、電動アシストなしで走る「純ICE最後のMモデル」としてデビューする。一方、ほぼ同時期に登場するXMは、部門初のハイブリッドSUVとなり、Mモデル電動化の先陣を切る。

次に登場するのは、XMと同じハイブリッドV8を搭載した新型M5で、その先には完全EV化が控えている。

BMW2030年までに世界販売台数の50%をEVにすることを目指しており、特定の市場(英国やEU)では、2035年以降、内燃エンジンを搭載した新車を販売できなくなる。つまり、ファンに長年愛されてきたMモデルも、いずれは完全EVに切り替わるということだ。

BMW Mのフランク・ヴァン・ミールCEOはAUTOCARの取材に応え、今後の見通しを示した。彼のコメントによると、BMWの至宝M3が電動化しても、長年培われてきた伝統は損なわれることなく引き継がれていくようだ。

「クレイジー」なM3が登場?

「M3のストーリーは永遠に続く」とヴァン・ミールCEOは語る。「4気筒から6気筒、8気筒から6気筒ターボと、エンジンが変わるたびに、そのストーリーは引き継がれてきたのです」

「もしEVになったとしても、M3であることに変わりはありません。パワートレインがどうであれ、クルマに乗ればMモデルであることがわかるはずです。わたし達は50年間、時の試練に耐えてきましたし、これからもそうあり続けるでしょう」

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顧客の大半はパワートレインの方向性を気にしていない、というのがBMWの見解のようだ。(画像はBMW M3コンペティション)    AUTOCAR

ヴァン・ミールCEOはさらに、「将来的にはハイブリッドや完全EVといった電動Mモデルも見てみたいと考えていますが、もしそれが実現すれば、『クレイジーだ、まったくの予想外だった』と言われるほど画期的なものになるでしょう」と述べている。

彼のコメントによると、BMWは、EVへの移行による魅力の衰えを懸念していないようだ。そして、顧客も電動化の云々を気にしていないという。

「お客様に話をお伺いしたところ、90~95%の方はパワートレインの方向性は気にしていないとのことです。お客様はMモデルに乗りたいだけなのです。たしかに、V8が無ければ駄目だという声もありますが、それはそれでいいんです、尊重しています」

現行のM3のベースとなっているG20世代の3シリーズは、2020年に発売されたもので、2025年ごろまで販売されると予想されている。M3もそのタイムラインに沿って世代交代するかどうかはまだ確定していないが、ヴァン・ミールCEOのコメントから、新型EVセダン「NK1」が2025年に登場する可能性が出てきた。

今のところコードネームしか知られていないNK1は、3シリーズの実質的な後継モデルとなる見込みで、BMWの「ノイエ・クラッセ」プラットフォームを初めて採用するモデルとなる。ノイエ・クラッセは最終的に、現在のFAARおよびCLARプラットフォームの後継となるものである。

ノイエ・クラッセ・プラットフォームは、新世代のパワートレインバッテリー、デジタル・オペレーティング・システムなどに対応する見込み。Mモデルにおいて重要なのは、前輪駆動四輪駆動だけでなく、後輪駆動方式にも対応するように設計されていることだろう。

つまり、Mモデルの次期EVラインナップは、現在の内燃機関車ラインナップとほぼ同じで、後輪駆動車と四輪駆動車(xドライブ)が設定される可能性がある。EVのM3は伝統を守りながら、サーキットをテーマにした専用デザインとシャシー・コンポーネントのアップグレードが行われると予想される。

BMWはすでに、i4 M50とiX M60というM仕様のEVを投入しているが、出力こそM4やX5 Mと同等であるものの、M440iなどのMスポーツモデルの電動版として位置づけられている。

EVは究極のMモデルに?

「Mモデル」のEVは、はるかに走りに特化したものになるとAUTOCARは考えている。ヴァン・ミールCEOは、電動スポーツカーの共通課題である車両重量を最小限に抑えることと、Mモデル特有のダイナミクスを維持することが優先されるだろうと示唆した。

EVがICE車より重いという点について、ヴァン・ミールCEOは「軽量化技術に投資し続ける必要があります。ですが、EVにはいくつか利点があります。例えば、遮音材の一部を取り除くことができますし、エンジニアはバッテリーの重量軽減に取り組んでいます」と語る。

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耐久レースに復帰するBMWの最新LMDhマシン、MハイブリッドV8    BMW

これらの技術は、すでに市販車への導入が始まっている。「XMは重心が低いので、ボディコントロールは素晴らしいですね。スプリングダンパーを柔らかくしても、ロールが起きないのです」

さらにヴァン・ミールCEOは、モータースポーツ活動を通じて開発された技術の応用についても触れている。BMWの新型LMDhマシン(MハイブリッドV8)はその名の通りハイブリッドV8を搭載している。CEOはこうしたレーシングカーの開発が将来の市販車開発に役立てられると述べた。

「長距離レースは、ドライブトレインの技術と密接に関係していることがおわかりいただけると思います。LMDhのプロトタイプは、エアロダイナミクスから冷却まで、多くの学びを与えてくれました」

また、Mモデルの電動化によって得られる恩恵としては、「ドライブトレインに電動化されたコンポーネントを導入すると、トルクと馬力のコントロールが内燃機関よりもずっと速く、簡単になります。レースでは特に」と述べた。


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