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 雷と言えば、落ちるものと思っていないだろうか? じつは雲から上空へ飛び、宇宙の下をかすめて閃く雷もある。

 高度20~100kmの成層圏・中間圏・下部熱圏では、放電による発光現象が起きている。これは「超高層雷放電」と言い、いくつか種類があるのだが、成層圏から中間圏に渡って伸びる雷放電は「巨大ジェット」と呼ばれている。

 巨大ジェットは年に1000回ほど発生し、普通の稲妻の50倍のエネルギーを持つ珍しく、かつ強力な落雷だ。

 最近、アメリカ・オクラホマ州で観測された巨大ジェットが、これまでで最大のものであることが判明したそうだ。 

【画像】 観測史上最大の巨大ジェット

 人工衛星レーダーの観測によれば、2018年5月14日オクラホマ州の上空で観測された巨大ジェットが、雲の上から電離層の下にめがけて放ったエネルギーは300クーロンだという。

 一般的な雷の60倍ものエネルギーだったと、『Science Advances』(2022年8月3日付)で報告されている。

 「電荷移動は、これまで最大とされた巨大ジェットの2倍近くにおよび、雲から地面への落雷の最大記録にも匹敵する」と論文で述べられている。

New information on 'gigantic jet' lightning bursts that reach toward space

200度か4400度までの極端な温度差 

 この巨大ジェットは、いくつもの幸運が重なったおかげで観測できたという。

 まずアマチュア科学者が低照度カメラで、雲の上部から放たれて、高度96キロの電離層にある荷電粒子とつながる瞬間が撮影された。

 その映像から、現場が落雷をマッピングする施設(LMA/Lightning Mapping Array)のすぐそばだったことが判明。さらに気象レーダーや気象衛星まで近くにあった。

 これらのデータから、サイズ・形状・エネルギー出力を詳細に分析。

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 その結果、巨大ジェットの最高周波数電波放射は、「ストリーマー(線条・先行放電)」から発生していることが突き止められた。

 ストリーマーとは、稲妻の先端で発達する小さな構造で、雲上部と電離層下部に電気的接続を直接形成する。

 一方、一番強い電流が流れるのはストリーマーのかなり後ろにある、「ステップトリーダー(先駆放電)」という部分だ。

[もっと知りたい!→]脅威の自然現象、さかさまカミナリと呼ばれる「スプライト」をとらえた映像(オーストラリア)

 分析では、それらの温度差が非常に極端であることもわかっている。ストリーマーの温度が比較的低い(約200度)のに対して、リーダーは非常に高温(4400度以上)なのだ。

 研究グループによると、このような温度差は、巨大ジェットだけでなくどの落雷にも当てはまるという。

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なぜ上に向かって放電するのか?

 なぜ巨大ジェットは雷でありながら、上に向かって放電するのだろうか?

 その理由は完全には解明されていないが、何かが邪魔をして、雷が雲の下から逃げられないからではと推測されている。巨大ジェットがよく観察されるのは、地上への落雷が少ない嵐なのだ。

 研究の主執筆者、ジョージアテック研究所のレヴィ・ボッグズ氏は、プレリリースでこう語る。

何らかの理由で、雲から地上への放電が抑制されています。雷放電がないので、雲の中に蓄積した負の電荷が巨大ジェットとなって解放されるのかもしれません

 巨大ジェットが一番よく観察されるのは熱帯地域であるという。

 熱帯でもないオクラホマ州で記録的な巨大ジェットが観測されたことも、特筆すべき点だ。そのメカニズムの解明には、さらなる研究と大きな幸運が必要になる。

References:Most powerful gigantic jet lightning bolt ever | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

 
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上に落ちる落雷!?米オクラホマ州で史上最大の超高層雷放電「巨大ジェット」を観測