膨らみ続ける日本の借金。この20年で倍近くに増え、高齢化対策などにより、その額は膨張し続けています。そこで不安になるのは、将来の年金。「いまの20代、30代は年金を当てにすることはできない」という声をよく耳にしますが、本当なのでしょうか。みていきましょう。

国の借金「国民一人当たり1,000万円超え」…20年で2倍に

先日、財務省は「国の借金(国債と借入金、政府短期証券の合計」が6月末時点で1,255兆1,932億円となったと発表。3ヵ月で14兆円ほど増え、国民一人当たりに換算すると、単純計算で初めて1,000万円を超えました。2003年は一人当たり550万円でしたので、およそ20年で倍近くになった計算です。

企業業績の回復に伴い、2021年度の税収は67兆円と過去最高値に。一方で、新型コロナウイルスや物価高対策などにより歳出は増加。低金利が続き利払いは抑えられているものの、歳出の増加が税収の伸びを上回り、債務は膨張、金利上昇に弱い財務構造となっています。

最近は「国の借金」が想像さえできない規模になっていますが、世界と比べてどうなのでしょうか。OECDの2020年の飼料によると、政府総債務残高が最も多いのはアメリカ。日本はそれに続く2番目の規模です(関連記事:『世界ランキング「国の借金」トップ30…政府債務残高/政府債務残高対GDP比』)。

【世界主要国「政府総債務残高」】

1位「米国」280,313

2位「日本」131,697

3位「イギリス」46,503

4位「フランス」46,144

5位「イタリア」45,820

6位「ドイツ」35,978

7位「ブラジル」33,350*

8位「スペイン」26,378

9位「カナダ」22,481

10位「メキシコ」15,921

出所:OECD(2020年)

※単位は億米ドル、*は2019年数値

さらにIMF、国際通貨基金の2021年資料によると、GDP当たりの政府債務残高が最も大きいのはベネズエラで300%超。日本はそれに続き、263%(IMF推定値)となっています。

【世界主要国「政府総債務残高」】

1位「ベネズエラ307.0%

2位「日本」263.1%*

3位「ギリシャ」198.9%

4位「スーダン184.3%*

5位「エリトリア」170.8%*

6位「カーボヴェルデ」154.1%*

7位「イタリア」150.9%*

8位「バルバドス135.8%*

9位「ブータン134.9%

10位「シンガポール132.8%

出所:IMF(2021年)

※*は推定値

先進7ヵ国で比較すると、日本に続くのがイタリアで150%、米国が132%、フランスカナダが112%、イギリスが95%、ドイツが70%となっています。日本の債務がいかに大きいものになっているか、一目瞭然です。

「財政破綻」「年金破綻」…日本悲観論の真実味

このような状況に対し、「このまま行けば日本の財政破綻は避けられない」といった悲観的な観測が目立ちます。また少子高齢化の影響が大きいとされる、20代や30代からは「自分たちのころには年金はもらえない」などという絶望的な声を耳にすることも。

実際はどうなのか、未来のことなので誰も分かるはずはありません。ただ悲観論の多くは、最悪のケースが重なった場合であり、相当のレアケース。また政務債務の債権者は国民であり、破綻などありえないという見解も。国が保有する資産を試算すると約1,000兆円以上あるため、バランスシート上も問題なしとされています。

とはいえ、将来的に財政的に余裕があるのかといえば、そうではないことは誰の目からも明らか。「いまの若者は年金がもらえなくなる」という不安は、真っ当なものでしょう。

しかしその不安は杞憂だというのが、多くの専門家の見解。いまの日本の公的年金は「おおむね100年持続できる設計」というだけあり、「日本が破綻しない限りは年金はもらえる」と言ってもよく、あまり悲観論ばかりを鵜呑みにするのも考えものです。

ただし、「いまの水準だけ年金がもらえる」ということではないことに注意は必要です。

いまの公的年金の制度は、所得代替率50%をキープできるように設計がされています。所得代替率とは、年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役世代の手取り収入額(賞与込み)と比較してどのくらいの割合かを示す数値。

2019年の財政検証によると、現在の所得代替率は61.7%。50%近くまで下がったとすると、およそ2割ほど、目減りする計算です。つまりたとえ同じ受給額であっても、価値としては2割減っているということになり、その分は、自助努力でなんとかするしかない、ということになります。

また財政破綻以上に気にすべきは円安。昨今の物価高×円安の影響を肌で感じている人も多いでしょう。家計的に弱い存在である、年金生活者であればなおのこと。さらに高齢化がさらに進む中では、消費税率の上昇は避けられません。

あまりにも悲観的になることはないにしろ、現役世代の老後は現在の高齢者ほど厚遇とはいかないことは覚悟しておくべき。若い人ほど時間が味方してくれるので、長期的な資産形成で備えることが重要なのです。

(※写真はイメージです/PIXTA)