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 サメの中でも一際風変わりな姿をした「シュモクザメ」は、撞木(しゅもく:鐘などを鳴らす木槌)というその名通り、頭が木槌みたいな形をしている。英語ではハンマーヘッドシャークと呼ばれており、やはりそのまんまハンマー頭だ。

 でも一体なぜこのような形になったのだろうか?

  30年近くサメを研究してきたフロリダ大学のギャビン・ネイラー氏によると、そこには3つの進化上のメリットがあったのだという。

 それなのに彼の調査ではさらに驚くべきことが明らかになっている。それはシュモクザメが進化するほどにハンマーが小さくなっているという意外な事実だ。

【画像】 ハンマー頭の3つの利点

 ネイラー氏によると、ハンマー頭には3つの利点があると考えられるという。

 1つは広い視野だ。目がそれぞれ別の方向を見ているので、その分視野が広がり、周囲の状況を把握しやすくなる。

 ただし、その代わりに距離がわかりにくくなる。 この弱点を補うために、シュモクザメハンマーの下に「ロレンチーニ器官」という電気を感知する特殊な器官を発達させた。

 この小さな点状の孔(あな)のような器官は、まるで金属探知機のように機能して、海底の砂の中に潜む獲物を感じ取ることができる。

[もっと知りたい!→]肉食だけじゃなかった。シュモクザメにも海藻が好きな雑食タイプが存在することが判明(米研究)

 普通のサメにもロレンチーニ器官はあるが、シュモクザメは特に多い。

 2つ目の理由は、ロレンチーニ器官に関連する。頭がハンマーのように伸びているおかげで、ロレンチーニ器官の間隔が広くなり、おかげで獲物の位置をより正確に把握しやすいのだ。

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シュモクザメハンマーの下をよく観察すると、小さな孔のようなものがあることがわかる。これがロレンチーニ器官で、電気を感じることができるセンサーの役割を果たしている / image credit:pexels

 3つ目の理由は、ハンマー頭は素早いターンにも役立つ。

 強風の日、傘をさしていれば、大きな面がどれほどの力を発揮するか実感できるだろう。

 シュモクザメハンマー頭で同じことをして、さっと素早くターンを決める。これが他の魚に横取りされる前に獲物を捕まえるのに便利なのだ。

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・合わせて読みたい→ダーウィンの性淘汰説に矛盾。むしろメスが多い時の方が進化が進むことが明らかに(英研究)

photo by Pixabay

シュモクザメの種によってハンマー頭の比率が違う

 もしもシュモクザメの化石を年代順に手に入れることができれば、その頭の進化について面白いことがわかるに違いない。

 だが残念なことに、シュモクザメの化石は歯しか見つかっていない。サメには硬い骨がなく、軟骨しかないからだ。軟骨はすぐに分解されて、化石になることはない。

 今日、海には9種のシュモクザメが存在する。大きさも頭の形も様々だ。

 だが体の大きさに比してハンマーが幅広なのが、インドシュモクザメ、ヒラシュモクザメ、シロシュモクザメ、アカシュモクザメ、カロライナハンマーヘッドだ。

ハンマーの間隔が一番狭いのはウチワシュモクザメ/D. Ross Robertson/Smithsonian Tropical Research Institute

 一方、ウチワシュモクザメ、スクープヘッド、ナミシュモクザメ、スカロップボンネットヘッドは、体の割にハンマーの間隔が狭い。

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ハンマーの間隔が一番狭いウチワシュモクザメ / image credit:iStock

進化するにつれてハンマーが大きくなったと思いきや、実は逆だった

 こうしたハンマーサイズは、進化の各時点を反映したもので、最初のシュモクザメはきっと小さなハンマーしか持たなかっただろう。そして進化するにつれて、徐々にハンマーが大きくなったと考えられる。

 だとすれば、現生のシュモクザメハンマーが小さな仲間ほど古く、大きなハンマーを持つ仲間ほど最近になって登場したという仮説がなりたつ。

 化石がないので、ネイラー氏らはこの仮説をDNAで検証した。

 DNAには生き物がどのような姿で、どのような機能があったのかについての情報が書かれている。また生き物同士の関係を知ることもできる。

 ところが、9種中8種のシュモクザメDNAを調べてみたところ、意外な事実が判明したという。

 なんと古い種ほどハンマーが大きく、新しい種ほど小さかったのだ。

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image credit:stock.adobe

偶然で現れた特徴が優位性を持っていた

 進化というと、ある環境で暮らしやすいよう生き物が少しずつ変化するというイメージがあるだろう。

 こうした変化を「自然選択」や「自然淘汰」という。しかしシュモクザメの事例に見られるように、そのようなイメージは必ずしも正しくない。

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左は従来の仮説に基づくシュモクザメの進化。DNA解析からは、実際には突然大きなハンマーが出現し、徐々に小さくなっている(右)ことが判明した / Gavin Naylor, CC BY-ND

 ひどい遺伝的欠陥や突然変異のせいで現れた普通なら異常や奇形とされるような特徴が、偶然にもとんでもなく生存に有利だったりすることがある。

 そうした異常のせいで、生きる機能や子供を作る機能が妨げられることがなければ、その特徴は子供たちに受け継がれる。

 ネイラー氏らは、まさにこれがシュモクザメで起きたのだと考えている。

 現生するシュモクザメで最初期のものは、じつは一番幅広のハンマーを持つインドシュモクザメだった。

 しかし自然選択の結果、ハンマーは段々と小さくなっていった。一番新しい種は、ハンマーの間隔がもっとも狭いウチワシュモクザメだ。

References:Why do hammerhead sharks have hammer-shaped heads? / written by hiroching / edited by / parumo

 
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シュモクザメの頭部はなぜ、ハンマーみたいな形になっているのか?