夫婦の3組に1組が離婚する時代、再婚や事実婚のカップルも珍しくなくなり、親世代が認知症という家庭も少なくなくなった……。家族のかたちが大きく変容するなか、身近になった相続問題で悩む人は増えている。今回は認知症の家族の後見人になったところ、相続税対策ができなくなってしまったケースを紹介する。

◆そろそろ相続のことを、と思い立った矢先

「『そろそろ相続のことも考えなきゃ』と話していた直後に父の認知症が発覚して……」

 千葉県で電気工事店を夫と営む磯崎加世子さん(仮名・56歳)はそう溜め息をつく。磯崎さんは4人姉妹の三女。不幸なことに、わずか10年の間に長女、次女、妹である四女、そして父の4人を次々と亡くした。

◆相続した遺産は7500万円。しかし思わぬ落とし穴

「生前、心臓病などを患っていた姉妹3人の成年後見人になっていたんです。その後、父までが認知症になり、結果的に私が家族4人の後見人になりました」

 父親から相続した遺産は、不動産や預金で総額7500万円にも上ったが、ここで思わぬ落とし穴にハマることになってしまう。

認知症の家族が抱えるリスク

「後見人になると財産を処分できるのは日常に必要な範囲の支出のみ、という決まりを知りませんでした。そのため、まっとうな相続税対策は何もできずじまい。

 そのうえ、相続人が私1人なので、課税対象額が大きくなり、税金も高くなった。結局、1000万円近くの税金を丸々支払わねばなりませんでした」

 認知症の家族が抱えるリスクは少なくないのだ。

◆木野綾子弁護士が教える解決法

「姉妹に成年後見人が必要になった時点で、父親の遺言書を用意したり、生前贈与の手続きを行うべきでした。父親が先に亡くなったら、姉妹も本人も相続人になり、特別代理人選任など、遺産分割手続きがさらに複雑になる恐れがありました」(木野綾子弁護士

【法律事務所キノール東京代表弁護士 木野綾子氏】
裁判所勤務を経て弁護士。上級相続診断士。家族信託専門士。共著に『新しい常識 家族間契約の知識と実践』(日本法令)など

取材・文/週刊SPA!編集部

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家族4人の成年後見人をこなせたのは、家業の電気工事店の事務を一手に引き受けてきたからだという