日々のストレス発散や恋人とのデート、時には取引先との会合、宴会まで幅広く利用されている居酒屋。そこで働く従業員たちは、客の入店対応、料理のオーダーから提供まで、さまざまな業務を同時にこなさなければならない。そんななかで、客の何気ない行動が、じつは「歓迎されていない」場合もあるという。

◆空のグラスを掲げて「姉ちゃん、同じの!」

 酔いがまわってくると、自分が何のお酒を飲んでいるのかさえ曖昧になる人は多い。おかわりを注文する際は「同じの!」と言ってしまいがちだが、店員からすると困ってしまうのだとか。

「飲み放題付きのコースを注文され、一杯目のオーダーを取るときはまだシラフなのでいいのですが、徐々に酔っぱらってくると注文の仕方が雑になるんです」

 こう話すのは、林ゆきさん(仮名・20代)。彼女は大学生の頃、居酒屋アルバイトをしていた。

 最初はきちんとメニュー表を見て「レモンサワーお願いします」「梅酒ソーダ割りで」と注文していた客も、次第に「姉ちゃん、これと同じの!」になり、それに乗っかる他の人たちも「俺も!」と続いていく……。

◆「店員なのにそんなのもわからないのか!」

「3名~4名くらいまでは『同じの!』と言われても、グラスの形や残っているドリンクの色、注文履歴などを見ればわかります。しかし、10人以上の飲み放題になると、いつ誰が何を頼んでいるのか把握することは不可能に近いです」

 客は酔っぱらっているため、うまくオーダーを取れないことは珍しくない。グラスが空になっている場合は最悪だ。

「空のグラスを持ち上げながら『同じの!』と注文されることがあります。空なので中身はわかるはずもありません。『前に注文されたドリンクをお伺いできますか?』と聞いても『店員なのにそんなのもわからないのか!』とキレられてしまうこともあるんです」

 林さんは、飲み放題の注文を取るときには身構えるようになってしまったという。

◆宴会で食べ終わった皿を片付けてくれるのは“ありがた迷惑”

 宴会が盛り上がるにつれて、食べ終わった料理の空き皿が出てくる。だが、良かれと思ってテーブルから片付けてしまうと、「ありがた迷惑!」になってしまうこともある。

「上司や相手に気遣いながらそのようなことをしているのはわかるのですが……」

 大学時代に居酒屋アルバイトをしていた山田美奈さん(仮名・30代)。勤めていた店では、40人~50人規模の大宴会は珍しくなかったと話す。そのなかで、本当にやめてほしかった行動がこれなのだとか。

「貸し切り状態になると、そこかしこ空き瓶や空き皿があります。会話をしながらの飲食なので、席によってお皿が空くタイミングはかなりバラつきがあるのですが、従業員としては料理の提供の順番によって引き下げる順番も決まっていることが多いんです」

 また、従業員からしてみると「そこに置かれたら他の業務の邪魔だよ!」という場所に置かれてしまうことも。たとえば、通路に並べられてしまうと、従業員のみならず、客がうっかりまずいてしまう危険もあるだろう。とはいえ、空き瓶を片付けてくれたり、廊下などに置いといてくれたりすることは、まだ良い方なのだとか。

 片付けるタイミングを見極めながら行動しているにもかかわらず……。

「急に幹事や上司の話が始まると、全員がそこに集中してしまう。すると、料理の提供はもちろん、片付けさえできないことがあります」

◆油の多い料理の皿は絶対に重ねないでほしい

 そんななかでも油が多い料理の場合は「絶対に皿を重ねてほしくない」と正直思っていたと、山田さんは振り返る。

「特にアヒージョなどのお皿を重ねられたときは、油が別のお皿の裏側までついてしまうので……。従業員の仕事なので“やらないでくれ”が本心でした」

 コロナ禍の状況次第だが、年末にかけて宴会が増えていくはず。できれば、油のついた皿を重ねることや、空いたグラスを通路などに移動することは控えてほしいと山田さんは言う。

 ただし、空き皿の片付けが“ありがた迷惑”になるのは、コース料理などの宴会における話で、平常時は素直に助かることもある、と付け加えた。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
ライター歴5年目。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェInstagram@chimi86.insta

―[飲食店員の「心の叫び」]―


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