ネットで性行為のライブ配信をしていた男女が公然わいせつ容疑で「現行犯逮捕」されるという、珍しい事件がおきた。

報道によると、逮捕されたのは自称ライブチャット配信業の30代男性と19歳の女子短大生6月3日の夜、自分たちの性行為の様子をインターネットの動画配信サービスFC2ライブ」で配信していたところ、以前から内偵捜査を進めていた京都府警が現場に踏み込んだのだという。

性行為をライブ配信した容疑で現行犯逮捕されるのは国内初。男性は昨年夏以降、20〜30人の女性との性行為の様子をネットで有料配信し、少なくとも3000万円以上を売り上げていたとみられている。

ただ、ネット上には、似たような無修正アダルト動画が大量にある。今回のライブ配信は、そうした動画と何が違うのだろうか。検挙された理由について、徳永博久弁護士に聞いた。

●ネット上の生中継は「公然」にあたる

「まず、公然わいせつ罪は、『(1)公然』及び『(2)わいせつの行為』という2つの要件を充足した場合に成立する犯罪です。このうち『(1)公然』とは、不特定または多数人の認識できる状態を意味します」

今回の事例は、インターネット上の生中継だった。路上なら「公然」だと分かるが、ネット配信も「公然」になるのだろうか?

「逮捕された男女は、インターネット上の映像配信サービスを利用して、映像を有料公開しています。ネット上の有料配信は、お金を払えば誰でも見られる、つまり、不特定多数が閲覧できますので、『(1)公然』に該当します」

では、「(2)わいせつの行為」についてはどうだろう。

「『わいせつ行為』について、判例は次のような言い回しをしています。『その行為者または、その他の者の性欲を、刺激興奮または満足させる動作であって、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの』。

ずいぶん堅苦しい表現になりますが、かみ砕いて言えば、日本において平均的な良識をもつ成人が、性的に『度が過ぎている』とか『見苦しい』と思うような行為です。見る人が性的に嫌悪感を覚えるような行為といえば良いでしょうか」

今回のようなケースは「わいせつ行為」に当てはまると言える?

モザイクなどの処理のないまま性行為をライブ配信するのは、正常な一般人が『度が過ぎている』とか『見苦しい』と感じるレベルの行為でしょう。ですから、性行為の無修正ライブ配信は『(2)わいせつの行為』にも該当します。このように、2つの要件を満たしていますから、公然わいせつ罪が成立するのです」

●全てを検挙するのが「物理的にできない」だけ

同じようなアダルト動画なら、ネット上にいっぱいありそうだが・・・。

「そうですね。昨今は、同じようなアダルト動画がインターネット上に氾濫しています。これらについても、ライブ配信なら同様に『公然わいせつ罪』になりますし、録画配信なら『わいせつ物頒布等罪』になります」

違法だとすれば、なぜ取り締まられていないのだろうか?

「違法かどうかという法的な問題とは別に、警察の人員・捜査態勢の確保といった限界があるからです。

警察が全ての犯罪について覚知して逮捕・検挙することは、物理的に不可能でしょう。このため、その動画を閲覧した人からの通報を受けた場合などに限定して捜査を行っているのが実情です。

これは、全ての交通違反を検挙できるわけではないのと、同じことです」

徳永弁護士はこのように述べたうえで、「しかし、警察に見つからなくても、違法性・悪質性は変わりません。いざ、検挙されたとき、他にもあるという言い訳は通用しませんので、犯罪に該当する行為は厳に慎むべきです」と警告していた。

(弁護士ドットコム トピックス)

【取材協力弁護士】
德永 博久(とくなが・ひろひさ)弁護士
第一東京弁護士会所属 東京大学法学部卒業後、金融機関、東京地検検事等を経て弁護士登録し、現事務所のパートナー弁護士に至る。職業能力開発総合大学講師(知的財産権法、労働法)、公益財団法人日本防犯安全振興財団監事を現任。訴訟では「無敗の弁護士」との異名で呼ばれることもあり、広く全国から相談・依頼を受けている。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所
事務所URL:http://www.ogaso.com/

性行為の「ライブ配信」で国内初の現行犯逮捕――なぜ検挙されたのか?