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 1845年、北極海へ探検の旅にでたイギリス「フランクリン遠征隊」だが、2隻の船両方とも氷に閉ざされてしまい、129名全員が失踪する悲劇の結果に終わった。

 その5年後、海軍提督のリチャード・コリンソンが捜索隊を率い、フランクリンと乗組員たちを探す遠征に出発した。

 ちょうどその頃、英タイムズ紙に暗号化された訳のわからないメッセージが掲載されるようになった。

 この暗号の一部がようやく解読され、コリンソン捜索隊による救出任務と関係があることがわかったという。  

【画像】 イギリスの新聞に掲載された謎のメッセージ

 170年前にイギリスタイムズ紙に広告として掲載された謎めいたメッセージの一部が解読された。

 驚いたことに、これはジョン・フランクリン卿と129名の乗組員全員が死亡した、悲劇のフランクリン遠征隊の救出任務に関連していることがわかった。

 ダン・ブラウンの小説『ロスト・シンボル』の登場人物にその名が使われるほど有名な暗号解読者、エロンカ・ダニンと、同僚のクラウス・シュメ、A.J.ジェイコブズは、1850年3月から1855年3月に掲載された一連のメッセージの解読に専念した。

 たいていS Ikqoで始まり、J de Wで終わるこの不可解なメッセージは、100年以上も解読されることなく、そのまま受け継がれてきた。

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1851年10月1日に掲載された謎めいたメッセージ

No. 16th.-S.lkqo. C. hgo & Tatty. F. kmn at npkl F. qgli Ingk S mhn F. olhiE qkpn. S. niql s mnhq F. qgli. Austin S pgqn C. kioq 6th F. iqhl. born. 13thF. kipo a F khg. hmip. to E. mlhg by D oi. S. pkqg C omgk B. hkq. qkng F. ioph. to hnio. S. ompi C. mkop F. oiph to Mr. C. nhmg & F. mpkh. nmkq E. lhpq. J.de w.

タイムズ紙が暗号を解読を呼びかける

 1980年タイムズ紙はもう一度、この暗号メッセージを掲載し、読者に解読して欲しいと呼びかけた。

 またしても解読には至らなかったが、興味深い指摘があった。

 1992年の『 Cryptologia』誌に発表された論文によると、「暗号文の緯度・経度と、北西航路を探す遠征隊との間に関連がある可能性」が指摘されたというのだ。

 ここで、悲劇のフランクリン遠征隊のことに触れてみよう。

 1845年5月19日朝、フランクリン探検隊は、北極海を通って大西洋と太平洋を結ぶ、北西航路の開拓を目指して、イギリスを出航したが、船が氷に阻まれて動けなくなってしまった。

 多くの乗組員は、持参した物資で丸2年は生き延びることができたが、最終的に全員が死んだ。

 その5年後、海軍提督リチャード・コリンソンが捜索隊を率い、カナダ北極圏でフランクリンと乗組員たちを探す遠征に出発した。

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 結局は失敗に終わったこのミッションが行われたのは、1850年から1855年の間のことで、暗号メッセージが掲載された期間と奇妙にも一致している。

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フランクリン遠征隊の救助を指揮したリチャード・コリンソン / image credit:public domain/wikimedia

 それに気が付いた引退した元判事は「コリンソンの捜索隊に参加した乗組員が、資金援助をしてくれた支援者に、探索状況を伝えるために使った暗号」説を唱えた。

 タイムズ紙は元判事のこの説が最も信ぴょう性が高いとして、彼は暗号解読コンテストの優勝者となった。

 しかし、1992年にこの暗号を試みた暗号解読者のジョン・ラブソンによると、その内容は支援者への報告とは一致しなかったという。

 彼の解読によると「バーナードとタティを家に残してきたとき、あなたの奥さんとご家族は皆、元気でした」とか、「レディ・ピールのだんなさんは、先月落馬して亡くなりました」といった内容だというのだ。

21世紀に入り、ついに暗号の一部を解読

 それから10年がたち、一流の暗号解読者であるエロンカ・ダニンらのチームが、解読に挑戦した。

 ハッカーズ・オン・プラネット・アース会議での講演中に、ダニンは一連のメッセージを見て、船が旗を使って暗号化したメッセージを送信する、マリアット信号コードとの類似性に気がついたと説明した。

 旗は、それぞれ違う数字を表わしていて、連続して旗を上げることで、暗号を使ったメッセージを綴り、受信側の船で同じ暗号を使って解読することができる。

 ダニンは、それぞれの数字を暗号メッセージの文字に当てはめ、採用されているシステムのからくりを見破ったのだ。

 この謎のメッセージは丁寧に暗号化され、新聞に投稿されていたのだ。

あなたがこれを読むことができるかどうか試してみたいし、あなたがいつ帰って来るのか、どれくらいそちらに滞在するのか、それが一番聞きたいことです

あるメッセージにはこうある。

ダーリン、お願いだから数行でもなにか書いてください。あなたがいなくなって以来、私は幸せとは程遠い生活を送っています

暗号は、家族から捜索隊に当てたメッセージだった

 ダニンの調査で、これらのメッセージは、船にいるコリンソン捜索隊の乗組員宛てに、家に残された家族から近況を伝えるために使われたものであることが確認された。

「コリンソンが数年にわたる遠征に出かける前に、残された家族がいつも移動している彼と連絡をとる方法が話し合われました」ダニンは説明する。

彼らはとても創造的なことを思いつきました。行く先々で、彼がロンドン・タイムス紙を手に入れられることがわかっていたのです

コリンソンの家族は、新聞に暗号化された秘密の広告を掲載しました。彼はどの港にいても、タイムズ紙を手に入れることができれば、家族がどうしているかを知ることができました

 このシステムは、コリンソンがどこにいても、タイムスを読むことができる限り、家族と交信することができることを意味していた。

 暗号化されていれば、ほかの誰にも内容を見られない。多くのメッセージは、まだ解読されていないが、ダニンたちはそれらにも挑戦しているところだ。

References:170-Year-Old Coded Newspaper Messages Linked To Hunt For Infamous Franklin Expedition | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo

 
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170年前に新聞掲載された謎の暗号メッセージの一部が解読される。フランクリン遠征の捜索隊に関連していることが判明