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 中国・上海市の永康路(ヨンカンルゥ)は、おしゃれなバーやレストランが立ち並ぶ若者たちに人気のエリアだ。ここに、2020年から注目を集めているちょっぴりユニークなカフェ『非日常(Hinichijou)』がある。

  座席もドアもないこのカフェはテイクアウト専門。顧客から注文を受けると、壁の穴からモフモフのクマの手が出てきて非対面で商品を渡す。帰り際にはクマの手のバリスタが、握手して手を振ってくれる。

 このかわいらしいアイデアがネットで話題となり、大人気となり、現在は9店舗展開している。従業員のほとんどがハンディキャップを持っており、雇用促進につながっているという。

【画像】 壁穴からクマの手でサービスを提供するカフェ

 上海の永康路(ヨンカンルゥ)に、テイクアウト専門のカフェ『非日常』がオープンしたのは、国際障がい者デーの2020年12月3日だ。

 このカフェにあるのは、一面の壁と小さく開いた穴のみ。そこから出てくるのは、モフモフのクマの手だ。

 このカフェで働く従業員のほとんどは、聴覚障がいや言語障がいなどのハンディキャップを持っており、非対面式でサービスを提供している。

 注文を受けると、クマの手のバリスタが壁の穴から商品を出してくれる。商品を渡すと顧客にんに握手をし、手を振って見送ってくれる。

 このカフェはネットで話題を呼び、オープンしてすぐに成功をおさめ、今や永康街の名物店となった。いずれも障がい者に仕事を提供することに注力している。

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障がい者バリスタコンテストがきっかけ

 非日常カフェの創設者の1人、Tian Tianさんは、人と対面するのが苦手な2人のバリスタに出会った後、このアイデアを思い付いたという。

 2人のバリスタ男性のうちの1人は現在、カフェの店長となっている。男性は聴覚障がいを持っているが、2019年に全国的な障がい者バリスタコンテストで優勝した経験を持つほどの腕前だ。

 もう1人の男性は、やはりこのカフェで働いており、顔に重度の火傷の痕があるという。

 非対面式なので、障がいを持つ人も安心して働くことができる。顧客側は、おいしいコーヒーが、かわいらしいクマの手で運ばれてくるもんだから大満足。連日行列ができるほどの人気店となった。

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 その後、上海に8つの支店をオープンした『非日常』カフェでは、聴覚や視覚、また言語に障がいのある人が約20人、従業員として働いている。その中には、2人の視覚障がいを持つ男性兄弟がオープンしている支店もあるという。

ハンディキャップを持つ人が自信を持って働ける職場に

 従業員たちは、壁の後ろに設置されたセキュリティモニターを見て来る顧客を確認し、クマの手を使ってQRコードのついたメニューを提示。客はそこから注文を選び決済をする。

 やがて壁穴から商品が出てくると受け取って、最後にクマの手と握手をするという流れになっている。

 この最後のクマの手との握手が、何より顧客に人気となっており、「癒される」といった声がソーシャルメディアで相次いでいるようだ。

 創設者のTianさんは、このように述べている。

このカフェは、ハンディキャップを持つ人たちへの雇用を促進することに尽力しています。特に、聴覚障がい者コミュニティに人気の職業となってくれてとてもうれしいです

 一方、従業員たちも

ほかの仕事は、ハンディキャップを持つ自分たちにはまだまだ制限があります。特に目に障がいのある人のほとんどは、マッサージ師になる以外の選択肢しかなかったのですが、今はこんなふうにカフェで働くこともできるようになりました

 と喜びを口にしている。

 何より重要なのは、ハンディキャップのあるバリスタたちが自立した個人であるという自信を持ち、仕事のスキルを得るだけでなく、店を運営し、日々を充実させていることだろう。

 顧客でリピーターの1人は、「何度も足を運んでコーヒーを買っています。この取り組みは、素晴らしい社会的価値があると思います」と話している。

Visually impaired baristas enthral coffee lovers at Shanghai cafe

written by Scarlet / edited by parumo

 
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壁穴からモフモフのクマの手で提供。障がい者雇用を生み出すユニークな非対面式カフェ