新型コロナウイルス感染症の爆発的な蔓延による医療逼迫。少子高齢化、増え続ける医療費、社会保障費。こうしたなかで、国民一人ひとりが健康を保ち、病気を未然に防ぐことは、日本を救うといっても過言ではありません。未病を保つために欠かせない健康診断について、MYメディカルクリニック横浜みなとみらいの山本康博院長が解説します。

「未病」と「早期発見・早期治療」が重要なワケ

人は皆、辛い症状の病気になれば自然と医療機関へ足を運びますが、自覚症状が現れてから検査を受けたのでは病気が進行してしまっている可能性が高いです。

そのため、病気を未然に防ぎ、未病を保つという観点から健康診断を受けることは非常に重要です。定期的に健康診断を受ければ病気を症状の現れる前の早期に見つけられ、手遅れになる前に治療を行うことができます。

また、健康診断のもうひとつの目的は、生活習慣の見直しです。健康診断では、病気にはなっていなくても、予兆ともいえる症状を知ることができます。毎年受けることで、去年の状態と今年の状態を比べ、症状が改善しているのかということも判断できます。

生活習慣をあらためることで症状改善につながることもあるため、生活習慣を見直す機会としても健康診断は非常に重要です。

健康診断前日…やって「いいこと」「悪いこと」

健康診断の前日には、遅い時間の食事がNGとされています。健康診断の項目のうち、「血糖値中性脂肪・肝機能・血圧」は前日の食事内容の影響を受けます。

特に血糖値は「空腹時血糖(食後10時間以上、水以外何も摂取していない状態の値)」を測らなくてはなりません。このため、朝から健康診断を行う場合は、夕食を前日の夜9時までに食べ終えておく必要があります。

また、アルコールは分解されるのに数時間から12時間程度かかるため、前日のアルコールも控えましょう。

もしうっかり前日の夜9時以降に食事や水以外の飲料を摂取してしまったら、検査を実施する医療機関に、速やかに、そして正確に、食事の内容と食事を摂った時間を伝えましょう。場合によっては食事が影響しない検査のみ行い、残りの検査は後日改めて行うこともあります。

健康診断の前になると、できるだけよい数値を残したいという気持ちから、慌ててダイエットをしたり、前日に激しい運動をして体重を落としたりする人がいますが、これは絶対にやめましょう。

現状を正確に把握できなくなるということもありますが、激しい運動や体へのストレスにより肝機能や尿酸値、白血球数などが逆に悪化することもあります。

健康診断の前は普段どおりに過ごすとともに、暴飲暴食や夜ふかしをせず、注意事項をしっかり守りましょう。

健康診断前日…「サプリ」や「ビタミン剤」もNG

また、医師から毎日飲むよう指示されている処方薬は通常通り飲んで構いませんが、サプリなどのビタミンC剤や総合ビタミン剤は尿検査に影響するため、この日は服用してはいけません。

受診の当日は、起床後、朝食・お茶・ガム・飴など、食べ物や水以外の飲み物は一切口にしないように気をつけましょう。水・白湯のみ、午前6時くらいまでは200mL以下なら飲んでも構いません。

胃のバリウム検査や内視鏡検査を受けない場合でも、血液検査などに影響する可能性がありますので、同じように絶食が必要です。

医師から毎日飲むよう指示されている処方薬に関しては、事前に医師と相談しておき、200mL以下の水で飲みましょう。とくに、血圧や心臓の薬に関しては必ず服用します。

ただし、糖尿病の薬や注射はインスリン(食後血糖値を下げるためのホルモン)に関するものなので、食事をしていないこの朝だけは服用・注射をしないでください。また、胃の検査を受ける場合、受診の2時間前までに薬の服用を済ませておくようにしましょう。

健康診断結果…A以外は再検査が必要?

健康診断の結果はアルファベットであらわされますが、それぞれの意味を紹介します(表記は健康保険組合によってやや異なることがあります)。

A.異常なし 

今回の検査では、異常は認められませんでした。

B.略正常(軽度異常)

検査の結果、軽度の異常が見られましたが、特に問題となるものではありません。

C.要経過観察/要生活改善 

病気へと進行する可能性があるので、生活習慣の改善をしながら、次回の健診で経過をみてみましょう。所見によっては日常生活で改善する可能性もあります。

D.要精密検査・治療

精密検査や治療が必要な段階でした。早めに医療機関を受診してください。

E.治療中/医療機関で経過観察中

引き続き治療を継続してください。

健康診断結果…数値が一緒でも「判定が異なる」ワケ

健康診断の結果を前回と見比べたときに、数値は変わらないのに判定が異なる場合があります。これは、前回の結果を比較して判定をすることがあるためです。

たとえばコレステロール値に変化がなかったのに、下記のような結果が出たとします。

前回……コレステロール値が基準値より高い 判定:C(経過観察)

今回……コレステロール値が基準値より高い 判定:D(治療が必要)

前回の判定は「C(経過観察)」ですがコレステロール値は基準値より高く、生活改善の必要性がありました。対応が必要だったにも関わらず、今回もコレステロール値が高い結果だったため、動脈硬化心筋梗塞脳梗塞などの発症の可能性を考慮して判定が重くなったと考えられます。

健康診断では確定できない病気や異常も多くあります。下記のような結果が出た場合、なるべく早く医療機関を受診してください。

■要再検査

今回の検査で基準値から外れた項目などがあったものの、一時的な異常かどうかを判別するのが難しい場合に該当します。再検査を受けて、改めて体の状態を調べてもらいましょう。

■要精密検査

診断結果をもとに、より詳しい検査を行って病気の有無を確認した方がよい場合です。精密検査の結果、異常がないこともあります。問題が見つかった場合は速やかに治療を始められますので、診断結果が出たらすぐに医療機関を受診してください。

■要治療

治療の必要がある場合に出ます。早めに治療を開始して重症化を防ぎましょう。

健康診断は結果が届いてからの行動が大切

健康診断は受けて終わりではなく、結果が届いてからの行動が大事です。

病気を未然に防ぐせっかくの機会ですので、なんらかの異常が指摘された場合は、生活習慣の改善をしたり、医療機関を受診したりするなどの対策をとることをおすすめします。

山本 康博

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい

院長

(※写真はイメージです/PIXTA)