お盆明けのタイミングは各所まちまちということもあり、バーチャルな業界の動きは比較的散発的だったように思う。その中でも目に留まる動きをいくつか紹介する。

【写真】話題を呼んだマーク・ザッカーバーグの自撮り

 『東京ゲームショウ 2022』は今年もVR会場を展開する。前回試験的に導入されたVR会場は、質の高い体験から来場者数は約21万人、平均滞在時間は約27分、再訪問の意向を示した人は98%にのぼるなど、大きな評判を呼んだ。今年は「ダンジョン」というコンセプトのもと、昨年に続き株式会社ambrが企画開発を担当する。開催日は9月15日から9月18日となる見込みだ。

 2021年に閉館した京急油壺マリンパークは、仮想空間上に再オープンを果たす。クラウドファンディングによって実現した『VR京急油壺マリンパーク』は、開館当時の水族館の様子を再現。開館最終日のイルカアシカショーも映像で見ることができ、53年の歴史に幕を下ろした水族館の姿をいつでも追体験できる。8月25日より一般公開され、PCやスマートフォンから来場可能だ。

 『フォートナイト』には『ドラゴンボール』がやってきた。悟空の家や「精神と時の部屋」など、ドラゴンボールの世界観が再現された特設の仮想空間で、筋斗雲や「天下一武道会」といったコンテンツが提供される。さらに、期間限定で『ドラゴンボール超』のいくつかのエピソードもゲーム内で観覧できるとのことだ。

 悟空やベジータも原作そのままの姿で『フォートナイト』の世界に登場しており、コラボとしては異例の力の入れようだ。メタバースとして拡張を続ける『フォートナイト』は、こうしたコラボキャンペーンの豪華さが光る。もちろん、原点であるバトロワゲームとしても、期間限定で「かめはめ波」を撃てるファンサービスは欠かさない。

 ゼスプリのキウイブラザーズは、1ヶ月間の24時間配信を開始した。ストップモーションアニメなどで使われそうなスタジオで、キウイブラザーズはARで登場。リアルタイムで映されるキウイブラザーズに合わせカメラが動き、さらに収録セットのソファに彼らが座ると、現実のソファでも座った部分がへこむという、興味深い技術が見られる。

 家にいながら楽しく健康について考える機会を提供するべく、キウイブラザーズはコメントで寄せられた健康法をひたすらに実践している。おそらくアクターが中に入らない状態で動く彼らは、「バーチャルに存在し、動くキャラクター」であり、初期のVTuberに夢見られていた姿かもしれない。キャラクターが当たり前に生きている世界が、2022年なのだろう。

 Metaの手掛けるメタバース『Horizon Worlds』は、フランススペインでもサービス提供が開始された。しかし、それを知らせるマーク・ザッカーバーグの「バーチャル自撮り写真」が奇妙な話題となった。ザッカーバーグのアバターも、エッフェル塔サグラダ・ファミリアの3Dモデルもローポリゴンだったのがその要因だろう。「TechCrunch」は「魅力のない写真」と紹介し、そこから各所で(もちろん日本でも)批判的な文脈で取り上げられている。

 その後ザッカーバーグは自身の『Facebook』で、アバターなどのグラフィックを改善する意向を公表しており、そちらの画像はそこそこクオリティが上がっている。これが当初の予定通りなのか、急いで打ち出した路線変更なのか、真相はいまのところ不明だ。

 この騒動の流れで、『VRChat』や『cluster』では、ザッカーバーグが自撮りしたローポリなエッフェル塔サグラダ・ファミリアを再現し、配置したワールドが公開される動きも見られた。こうしたパロディによる遊びをすぐに実行に移せるのが、UGCの大きな強みだろう。

 『VRChat』などで根付いているUGC文化は、『Horizon Worlds』も目指しているとされる。『Horizon Worlds』が、世界中のユーザーの創造性によって大きく発展するメタバースとなるか、あるいは「失敗作」と揶揄され終わるのか……まだ5カ国にしか展開にしていない以上、答え合わせはもう少し先になりそうだ。(浅田カズラ)

ザッカーバーグが自撮りしたローポリなエッフェル塔とサグラダ・ファミリア