8月29日サクラフィフティーン(ラグビー女子日本代表)の『太陽生命 JAPAN RUGBY CHALLENGE SERIES 2022』総括記者会見が実施された。記者会見には浅見敬子ナショナルチームディレクター、レスリー・マッケンジーヘッドコーチとともに40名の女子日本代表選手が一堂に会し、国内シリーズ4 試合の振り返りや10月8日(土)に開幕する『ラグビーワールドカップ(RWC)2021』 ニュージーランド大会へ向けて意気込みを語った。

5月の豪州遠征ではオーストラリア代表に初勝利、7月の南アフリカ戦は初戦15-6で制すと、翌週10-20でタイに戻された。そして8月のアイルランド戦は第1戦で22-57と完敗を喫するも、翌週には修正し7度目のチャレンジで29-10の歴史的初勝利。マッケンジーHCは選手を試しながら、結果も残してきた。

浅見ディレクター「ニュージーランドのイーデンパークでラグビーの聖地で我々サクラフィフティーンがブラックファーンズ(ニュージーランド代表)と戦えることを光栄に思う。だが、胸を借りるのではなく、『RWC』へ向けての前哨戦としてしっかり結果を残したい」

マッケンジーHC「就任して3年半、アイルランドを倒すことができるほどのチームを指揮することができて非常に光栄に思う。ブラックファーンズと戦えることを楽しみにしている。このチームはまだまだ成長できると思っている。ニュージーランドに向かうのは32名だが、ここにアイルランド戦で素晴らしい結果を残した40名がいる。これまで80名ほど呼んだが、サクラフィフティーンが成長できたのはこれまで呼んだ選手全員のおかげ。
(2019年の1月の)就任会見でブラックファーンズのように戦えるか質問され、そうは思わないと答えたが、今もブラックファーンズのように戦いたいと思わない。ジャパンらしく戦っていきたいと思っている。本日ここまで成長できたことをうれしく思うとともに、みなさんのサポートに感謝したい」

PR南早紀主将(横河武蔵野アルテミ・スターズ)「国内テストマッチ4試合を経て、敗戦と勝利を繰り返し、また成長することができた。(2戦目の)アイルランド戦は自分たちにベクトルに向け、自分たちに集中し、全員で勝ち取った勝利。ブラックファーンズ戦、そして『RWC2021』ではこれまで積み重ねてきた努力で大きなウェーブを起こしたい」

マッケンジーHCは今季の強化の手応えを口にした。
「豪州遠征の成功を南アフリカ戦の勝利につなげられたのは良かった。南アとの第2戦の敗戦も学びとなった。アイルランド戦も最初の試合で負けて、思うようにいかない中、軌道修正すること、早く学んで次に生かすことを経験できたのは良かった」

指揮官は改めてここまでの強化の道のりを振り返った。
「まずはサイズを大きくすることが課題だった。ケガがなく強靭でコンタクトできるサイズアップを必要とした。またプレッシャーのもとで狙うプレーをどれだけできるか。背が高くなくても、低くタックルにいくプレーを求めた。そもそも女子ラグビーはサイズやパワーに頼りがちなところがあるが、日本のスピードとスキルあるプレーを見てもらえればと思っている。
今女子チームの注目が大きくなっている中、この仕事をできるのは幸せなこと。この40人の選手の目標は、ラグビーをやりたいと思う女の子を増やすこと。この国の女子ラグビーチームのロールモデルになること。日本でもっと15人制ラグビーが活性化していければと思っている」

マッケンジーHCは『RWC2021』への手応えをこう語った。
「スコッド全体が勇敢に立ち向かえることになった。いかに大きなタスクでも、そのチャレンジに立ち向かうことができるようになった。自分たち自身へのチャレンジが続けることができればできるほど、さらなる成長につながってく。『RWC』は結果が重要だが、その重要な戦いへ向けてチャレンジ姿勢もすることも重要。『RWC』にチャレンジできるスコッドを連れていきたい」

『RWC2021』前のブラックファーンズ戦の意義を問われた南主将はこう答えた。
「イーデンパークでなおかつNZ×豪州の前の試合。(『RWC』初戦の)カナダ戦よりも大きなプレッシャーがかかると思うが、『RWC』前に大きなプレッシャーのある舞台に立つことができるのは大きな成長につながると思う。ブラックファーンズがどういうチームかではなく、自分たちがどう戦いどう強みを出していきたいかにフォーカスしていきたい」

南主将は『RWC』初戦の相手に運命を感じていた。
「レスリーHCの母国のカナダと初戦で戦えるのは運命的なものを感じる。レスリーHCにも運命的だが、私たちにとっても重要なゲーム、しっかり準備をしていきたい。自分たちのここまで重ねてきた努力への自信もあるし、結果も付いてくると思う」

会見後、選手たちは個別でメディア対応を行った。サクラフィフティーンの面々は自信と覚悟を明かした。
HO/FL/NO8齊藤聖奈(MIE PEARLS)「(アイルランド2戦目について)チームとして敗戦から1週間、『RWC』と同じ1週間というサイクルでチームの修正能力が試される1週間だと考え試合に臨んだ。チームの修正力を感じることができた。『RWC』でも1戦1戦泥臭く戦っていきたい。
(FLのポジション争いについて)激戦区で6~7人いてお互いに刺激し合って、教え合いながら練習している。
(『RWC』について)カナダ、アメリカとはやったことはないが、フィジカルが強く、スピードは世界トップレベル、イタリアは何度か戦いジャパンに似ている印象がある。どことやっても気を抜けたい試合になる。相手がどこでも自分たちのラグビーに集中したい。サクラフィフティーンラグビーをしていきたい」

HO/FL/NO8鈴木実沙紀(東京山九フェニックス)「(合宿について)合宿のたびに一人ひとりにタスクがあり、やることが明確にテーマに取り組んでいる。合宿の回数自体増えたし、密度も上がっている。チームとしても個人としても手応えを感じているので、次に生かしていきたい。
(HOとFLの役割について)役割は異なるが、チームから求められる役割を100%やるだけ。自分はどの立場になっても、スタートだろうがベンチだろうが、フィールドに立とうが立たまいが、チームの大きなウェーブのひとつになりたい。ジャッカルを得意としていて本当は教えたくない気持ちもあるが、このチームが本当に大好きだし、このチームで勝ちたいので、出し惜しみすることは違うと感じるようになって、ジャッカルのコツとかも話すようになった。フィールドの中でも外でもチームを支えたいと思っている」

CTB古田真菜(東京山九フェニックス)「(『RWC』について)『RWC』へ向けて個人的に危機感を持ってここに立っている。レベルアップしていかないと世界とは戦えないと思っている。自分はインパクトプレーヤーではないので、一つひとつの精度を上げていくしかない。
(ブラックファーンズ戦について)ワクワクする試合。『RWC』前にこういうプレッシャーのかかる試合ができるのはありがたい。
(国内4試合について)南ア、アイルランドにどういうアタックができて、チームとしてどう強みを出すか、みんなで考え試合に臨むことができた。タックルジャッカルを得意としてきたが、この夏、ジャッカルはひとつも決められていないので、そこは悔しい。『RWC』で対戦するチームはどこもフィジカルが強く、うまさがある。自分としてはディフェンスからチームのリズムを作られるようにしたい」

CTB/WTB/FB松田凜日(日本体育大学ラグビー部女子)「(ブラックファーンズ戦)特別な試合という意識ではなく、『RWC』へ向けて弾みになると思うので、しっかり結果を出したい。
(15人制への転向について)自分としては(セブンスで)『五輪』に出たいと思っている。昨年の『東京五輪』は出られなかったが、15人制で違うことを経験した方がいいと思った。15人制を経験した後からでも次の『パリ五輪』はまだ間に合うと思う。15人戦は考えないといけない。セブンスでは持ったら行くという形だが、キックやパスでスペースへ運んで行くこともしないといけない。自分で仕掛けるのは得意だが、パスやキックもあると思われるように、今は取り組んでいる」

サクラフィフティーン9月10日(土)からの国内最終調整となる菅平合宿を経て、15日(木)・ニュージーランドへ旅立つ。24日(土)・イーデンパークでは『リポビタンDラグビーチャンピオンシップ 2022/ブレディスローカップ』ニュージーランド代表(オールブラックスオーストラリア代表(ワラビーズ)の試合前に女子ニュージーランド代表(ブラックファーンズ)と対戦。『RWC2021』NZ大会では9日(日)・カナダ代表、15日(土)・アメリカ代表、23(日)・イタリア代表と対峙する。

8月27日、アイルランドから初勝利を挙げたサクラフィフティーン (C)JRFU