第7回新潮ミステリー大賞受賞者である、荻堂顕さんの受賞後第一作『ループ・オブ・ザ・コード』が本日8月31日新潮社より発売となりました。
本作は「架空の国家」を舞台にした近未来×ハードボイルド小説。パンデミックによる社会の変容、ジェンダー/セクシュアリティに起因する今日の「アイデンティティ」にまつわる問題意識、そして昨今の国際情勢など、今日的な社会問題を織りまぜた一冊で、20代かつデビュー二作目というキャリアながら、小島秀夫さん、貴志祐介さん、東山彰良さん、大森望さんをはじめとした錚々たる方々から大きな称賛を受けました。
また、雑誌「小説新潮」9月号では刊行記念特集を実施。満洲のとある都市の興亡を描いた大作『地図と拳』の作者・小川哲さんとの対談が実現しました。作品の中に架空の都市や国家を生み出し、深遠かつ壮大な物語を紡ぎあげる──両者の創作にかける熱い思いを語りつくしてもらっています。
現代に通ずる切実なテーマ性と、緊密な文体やド迫力の活劇を兼ね揃える、今年のエンタメ界「台風の目」となること確実の一作です。


■驚愕、戦慄、感嘆。「激賞」推薦文が続々到着!

■推薦の言葉
虐殺器官』や『都市と都市』の衝撃が再び。未来を閉ざすのは、ウィルスでも最終兵器でもない。本作が警鐘を鳴らす内省的絶滅は、まさに現代社会で喘ぐ我々に、集団的心的外傷(マストラウマ)を与える。ただひとつの救いは、この閉塞禍に未来を繋ぐ新たな才能が産声をあげた事だ 疫病渦より深刻な、混沌とした国際政治の病理を鋭く抉り出している。コロナ禍とウクライナ戦争の今こそ、民族とは何かを教えてくれる
  • 東山彰良さん(作家)
緻密にして大胆。なによりも、この物語のやさしさに心を揺さぶられた
  • 大森望さん(書評家)
生まれてくることは悪なのか? 伊藤計劃虐殺器官』から15年。ふたたび世界に根源的な問いを突きつける
  • 瀧井朝世さん(ライター/「波」2022年9月号より引用)
混沌とした今の世の中で、綺麗事はもちろん、生半可な正論では誰も説得されない難しい問いに、この小説は真正面から向き合っている。安易に明るい未来は提示しないが、しかし、可能性を感じさせる展開に圧倒されてしまう。力作にして怪作、今の時代に必読の黙示的長篇である
  • 北上次郎さん(書評家/「波」2022年9月号より引用)
この辛い世に、「生まれることを望まなかった者たち」は、たしかにいるのかもしれない。しかし子供たちの幸
せをこころから願い、子供たちに愛されることを望む大人もまたいるのだ。この長編は複雑なストーリーの底から、その真実を力強く訴えてくる


■「小説新潮」9月号では小川哲さんとの対談が実現!
8月22日発売の「小説新潮」9月号では本書の刊行記念対談として、現在『地図と拳』でも話題沸騰中の小川哲さんとの対談が実現。類稀なる想像力で物語に「歴史」を創出した両者が、お互いの創作の源泉について熱く語り合いました。対談は新潮社HPからも全文公開中です。
https://www.shinchosha.co.jp/book/353822/#b_interview_01


■〈反出生主義〉、〈親ガチャ〉……「人間は生まれてくるべきなのか?」という問い。
本作は、パンデミックを経験した〈近未来〉を舞台に、かつての独裁国家にして、国家の記憶が〈抹消〉された国で、国連所属の調査員である主人公が奇病の謎と、とある「重大事件」の犯人を追う物語。壮大な設定でありながらも、昨今の疫病や国際情勢など「現代」が色濃く反映されています。荻堂さんは、本書へ挑戦した理由をこう語ります。
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 構想は投稿時代に遡ります。後にデビュー作となる作品を新潮ミステリー大賞に投稿した直後から、「次はSF設定の物語を書きたい」と思っていたのですが、古代ローマの刑罰「ダムナティオ・メモリアエ」を過去に学んだこともあり、「記録することが禁止された架空の国家で起きる犯罪」を書こうと考えていました。デビュー作では「消せない過去」をテーマにしたのですが、二作目の執筆に際しては、自分自身が異性愛者として結婚し、「子供を創る」という行為が現実性を帯びてきているなかで、「生まれてしまったこと」自体をテーマにしようと。「人間は生まれてくるべきなのか?」「生まれてこない方がよかったのか?」という問いです。
 取材の過程では、親から虐待を受けていた方から話を伺いました。一方で、これから親になる方からも話を伺いました。「生まれてきたこと」は地球上の人類にとって唯一と言っていい共通項です。けれど、それについての考え方は文字通り千差万別です。正解はないし、誰も他人の答えを責める権利を持っていない。僕が本作で提示したのは、作中の言葉を使えば「無責任な希望」です。僕自身は子供がいないし、これから持つかも分からない。「生まれてきてよかったか?」と問われて、強く頷くこともできない。でも、生まれてしまった以上は、希望を持つ権利があるし、誰かに与える義務があると思っています。
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■絶望の時代に、「物語」が提示できる可能性、「物語」にできること、とは。
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「令和にデビューした小説家として、令和は「物語の終わり」を象徴する時代だと感じています。いわゆる「大きな物語」だけではない、「物語」自体の終焉です。国内でも悲惨な事件が立て続けに起き、誰もが明るい未来を描けずにいる。そのなかで、「物語に何ができるか?」を考えることは絶望的です。それでも僕が小説を書き続けるのは、自分自身が物語に救われたことがある人間として、まだできることがあると信じたいからです。今回の執筆にあたって、ラストシーンは決めておらず、もともとはうっすらと違うものを考えていました。しかし、最終的には自分でもとても納得のゆくものになりました。昔だったらああはならないし、数年後には違う結末を書いていたはず。今の自分だからこそ辿り着いた結末を描くことができました。
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■あらすじ
 疫病禍を経験した未来。WEO(世界生存機関)に所属するアルフォンソは、20年前に歴史の一切が〈抹消〉された、かつての独裁国家〈イグノラビムス〉へと派遣される。
 いまや多数の欧米企業が参入し、「再生のテーマパーク」とも揶揄される彼の国で、児童200名以上が原因不明の発作に見舞われる奇病を発症、その現地調査を命じられたのだった。しかし、時を同じくして、非常事態が発生。「悲劇」の再来を恐れたWEO事務総長から、密命を言い渡されることになり……。
 国家機関単位の任務を、たった数人で遂行することになったアルフォンソたちが辿り着く、衝撃の真実とは、一体。

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■著者紹介:荻堂 顕(オギドウ アキラ)
1994年3月25日生まれ。東京都出身。早稲田大学文化構想学部卒業後、様々な職業を経験する傍ら執筆活動を続ける。2020年、『擬傷の鳥はつかまらない』で第7回新潮ミステリー大賞受賞。本作はデビュー二作目。

配信元企業:株式会社新潮社

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