現在2000万人超のユーザーを抱えるメルカリは、フリマアプリの代名詞と言える巨大な市場だ。筆者自身も出品者・購入者の両方でヘビーに利用している。そのメルカリから気になるデータが公開された。「メルカリ」内の取引価格と流通数量の変動状況を、「メルカリ」における商品カテゴリーごとに月単位で表す「メルカリ価格指数・数量指数」だ。ここから何がわかるのかというと、メルカリのトレンドだ。

(参考:【写真】メルカリで物価が上昇したもの一覧

 メルカリ総合研究所の発表によると、2022年6月に前年同月比で物価が最も上昇したのは「イベント(チケット)」だった。2021年は新型コロナウイルス感染症の感染防止のためイベントが開催されなかった影響が大きく、その反動もあるのだろう。メルカリ物価指数は前年同月比で145.3%となっている。開催されるイベントがコロナ前の水準に戻りつつあることがわかる。

 一方で、メルカリの数量指数を見ると、「レディース(ジャケット/アウター)」が増加。つまり出品数が増えたということだ。これについてメルカリは、今年の6月に続いた猛暑を要因として挙げている。東京都心で起きた6月の連続の猛暑日は、観測史上最長記録を更新した。この暑さが不要になったジャケット/アウターの出品を促したというのだ。

 しかし、本来、冬に使うアウターなどは出品のタイミングとして6月は適さない。そのため、価格は下がってしまっている。

 「レディース(ジャケット/アウター)」のメルカリ物価指数を見ると、6月は下落をしている。前年同月比で94.3%となり、グラフからも下がっていることがわかる。

 需要と供給のバランスが取れていれば価格は安定するが、出品数が多くなると価格は下落する。これは季節を問わず言えることだが、「レディース(ジャケット/アウター)」で見ると、6月の気温が高い時期には需要が低迷している。その上供給が増えたことで、相場は大きく崩れてしまい価格の下落に追い討ちをかける。

 ただ短期間で一気に人気商品になるようなものは、出品数が多くなっても価格は下がらない。むしろ上がる傾向がある。たとえば人気のゲームソフトやアニメグッズだ。これらは転売問題も絡んでくるのだが、価格は上がってしまう。需要が多く、出品すればすぐに売れてしまうので、出品者もどんどん強気になるからだ。

 アウターに関しては、とりわけ話題になっている商品ではないので、需要と供給のバランスが崩れてしまっている状態だ。とはいえ、全く買い手がつかないわけではない。なぜ暑い時期に買うのかというと、あえて季節をずらした方が安く買えることが多いから。出品者はアウターを売りたい気持ちがあるので、値下げ交渉にも応じやすくなる。購入者はそれを知っているから強気で交渉してくるのだ。そういった心理も働き、さらに価格の値下げに拍車がかかり、物価指数は落ち込んだとみられる。

 グラフをみると、昨年は「レディース(ジャケット/アウター)」の物価指数は10月くらいから非常に緩やかに上がり、12月から2月にかけて横ばいとなっている。もし気温の変化が昨年とほとんど変わらないのであれば、今年も同じ動きをすると推測できる。

 そのためより高く売ることを目的とするならば、このタイミングでの出品が理想だ。我々は出品はどのタイミングが良いのかを週単位、月単位で考えがちだが、今回のデータからは出品のタイミングが比較的長期間に渡っていることがわかる。

 ただし今後新型コロナウイルス感染症がどうなるのかによって、アウターの需要も違ってくる可能性がある。感染者が増えた2020年冬に関しては11月以降、メルカリ物価指数が下がっているのだ。外出をする機会が減ったから、使わないアウターを安くてもよいから売ってしまいたい。そんな考えがあってもおかしくはない。現状感染者数は多いものの、外出の規制などはないが、冬になるとどうなるかはわからない。

 コロナ禍以降のメルカリでのアウターの出品のタイミングは、気温だけでなく、感染症対策の状況と人々の動向を合わせて考える必要が出てきた。前述したようなチケットもそうだが、今後のフリマ市場では、これまでのような出品方法ではうまく売れない商品が多発しているため、多角的な視点でタイミングを見計らっていかなければならないようだ。

Source
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000177.000026386.html

(文=川崎さちえ)

写真=川崎さちえ