花巻東の新チーム主将に就任した佐々木麟太郎内野手(2年)が、新たな一面を見せた。

 甲子園を目指した7月の岩手県大会は準決勝で盛岡中央に敗れ、高校通算74発男の夏は終わった。あれから約1カ月。左人さし指を骨折して手術を受け、2週間バットを振れなかった期間があったにもかかわらず、本塁打数が83本に増加。短期間でのアーチ量産以上に驚かされたのが、捕手への挑戦だった。

【関連記事】新庄ハム V逸決定で血の入れ替え加速 ささやかれる「首切りリスト」とは


 9月2日、秋季岩手県大会地区予選の花北青雲戦に「3番・一塁」で先発出場。11点リードした5回裏の守備から、公式戦初となる捕手のポジションについた。117キロの巨体を揺らし、マスクをかぶった背番号3が投手を好リード。相手の攻撃を3者連続三振に封じ、試合を締めた。

 高校入学後は「一塁」が定位置だった佐々木だが、小学校時代は捕手が主戦場だった。今年3月のセンバツ後に「複数ポジションができて損はない」と捕手の練習を再開。高校通算52本塁打の田代旭捕手(3年)が抜けた穴埋めもあり、水面下で準備してきたという。

 試合後、捕手での公式戦出場を振り返った佐々木は「そこまでレベルが高いと言われたら、そんなことはないですけど、最低限は守れたと思います」と話した。

 高校時代に「一塁→捕手」を経験した代表例が、今をときめくヤクルト村上宗隆内野手(22)だ。150本塁打、シーズン50号などプロ野球最年少記録を次々と塗り替えていく若き大砲は、九州学院(熊本)1年時に「4番・一塁」で夏の甲子園に出場。その後、捕手に転向し、投手のリードや配球を研究し、駆け引きなどを学んだ。

 プロ入り後は三塁にコンバートされた村上だが、マウンドの投手に駆け寄って声をかけるタイミングが絶妙。試合を俯瞰して見て、流れを読み、「間」をとるといった行動ができるのも捕手目線ならでは。高卒2年目でブレークし、プロを代表するスラッガーへと急成長した背景には、捕手時代に苦労した経験が生かされているともっぱらだ。

 来年ドラフト1位候補の佐々木が、捕手転向まではいかなくとも、捕手を経験することでさまざまな相乗効果が期待される。「一塁手だけでは…」と守備面を不安視するプロスカウトもいただけに、新たなチャレンジで評価はさらに上がりそうだ。

 同じ左のスラッガータイプとして、「捕手」村上の成功例は将来への道しるべになる。高校野球史上かつてないペースで本塁打を量産する東北の新怪物が、捕手経験でさらなるレベルアップを図る。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

花巻東・佐々木麟太郎が捕手挑戦で「ヤクルト村上」化計画!