国民のほとんどが加入している年金制度。しかし、人によってもらえるお金は違ってきます。より良い老後のためにも年金制度とうまく付き合っていくことは不可欠でしょう。年金制度の疑問を、泉美智子監修『学校では教えてくれなかった社会で生きていくために知っておきたい知識』(株式会社KADOKAWA)で解説します。

意外と知らない、年金のアレコレを徹底解説

  • QUESTION13 年金ってどんな種類があるの?
  • ANSWER 公的年金以外にも企業年金や個人年金がある

年金とは、働く年齢のうちから年金保険の形で保険料を納め、老後になってから生活を保障するお金が給付される制度です。

上の図のように3つに分類できます。基本の部分は国が管理・運営する公的年金(国民年金厚生年金)。上乗せする形で企業や個人が任意で加入することができる私的年金(企業年金、個人年金)があります。

  • QUESTION14 自分はどの年金形態でどれくらいもらえるの?
  • ANSWER 大きく分けて3種類 もらえる年金額は厚生年金が多い

QUESTION13で説明した、年金の基本となる「公的年金」ですが、自分や家族の働き方によって、加入する形態は3種類に分けられます。

ひとつ目の区分が、「第1号被保険者」。フリーランスや自営業者、仕事についていない人などが該当します。国民年金に加入し、毎月1万6,610円令和3年度)を納めると、原則65歳から老齢基礎年金が受け取れます。40年間納めた場合は月約6万5,000円を亡くなるまで受け取ることができます。

会社員や公務員などは、「第2号被保険者」に分類され、国民年金に加え、厚生年金に加入します。保険料は月給の約18%ですが、会社と折半するため、自己負担額は半分に。

勤務している限りは70歳まで加入可能で、支払い金額が大きく、期間が長いほど多くの年金が受け取れます。厚生年金に40年加入した場合は月約9万円の給付となり、国民年金とあわせて約15万5,000円の毎月支給に。

第2号被保険者の扶養家族である配偶者は、「第3号被保険者」になります。国民年金に加入しますが、配偶者の加入する保険制度が代わりに負担するため、保険料を支払う必要はありません。加入可能期間や支給年金額は第1号被保険者と同じです。

  • QUESTION15 年金って正直頼りになるの?
  • ANSWER 亡くなるまでもらえるのが魅力だが目減りするケースも

いろいろと説明をしてきた年金ですが、きちんともらえるのかどうか若い世代での不安も大きいようです。

年金の一番の魅力は、亡くなるまで受給し続けられること。高齢になるほど働けなくなるリスクが高くなるため、安定した収入が得られるのは大きなメリットです。

逆に貯蓄はいずれなくなってしまうので、想定以上に長生きした場合は困窮してしまいます。月々定額が支給されるという点で、年金は有効な制度といえるでしょう。

例えば、国民年金は受給してからおよそ10年で受給金額と支払った保険料の金額が同じになります。つまり理論上は、75歳ぐらいまで生きていれば、支払った保険料よりも多くの金額を年金としてもらえるようになるのです。厚生年金加入者の場合は、国民年金よりやや早い、73歳ぐらいで受給額が支払い額を超えるようになります。

とはいえ、年金は現役世代の保険料で受給世代の年金の多くを担う「仕送りシステム」です。少子化が進めばもらえる年金は目減りする可能性も大きいでしょう。そのためQUESTION16で説明するような方法を検討して、自分でも老後資金を準備する姿勢も大切です。

  • QUESTION16 年金って増やせるの?
  • ANSWER お得な制度への加入や需給の仕方などを変更して増やせる

年金額を心もとなく感じる場合は、さまざまな方法で増やすことができます。特に厚生年金加入者とくらべて年金額が少ない、フリーランスなどの第1号被保険者向けには、お得な制度があります。

ひとつ目は「国民年金基金」という制度。自分でプランを細かく決められるのが特徴で、2口目以降は終身年金または確定年金(もらえる期間が決められている年金)から選べます(1口目は終身年金)。

もうひとつは「付加年金」という、国民年金基金に加入していない場合に利用できる制度です。月額400円支払えば、「200円支払い月数」の年金が毎年受け取れます。2年加入すれば元が取れるお得な制度なので、国民年金基金に加入していない場合は利用するのがおすすめです。

この「国民年金基金」「付加年金」は、どちらも全額控除されるので、節税対策にもなります。

また、厚生年金は「収入を増やす」「長く納める」「受け取りを遅らせる」といった方法でも増やすことができます。国民年金(基礎年金)も受け取りを遅らせて年金額を増やすことができます。

  • QUESTION17 iDeCoって何がお得なの?
  • ANSWER 節税効果が大きく老後生活の支えにもなるのがメリット

iDeCoというものを最近よく聞くけれど、何かは知らないという人も多いのではないでしょうか。

これは老後の資金不足に備える方法で、私的年金のひとつである確定拠出年金、その一種になります。「個人型(iDeCo)」と「企業型」という分類になっています。 

まずはiDeCoのほうから説明しましょう。こちらは口座を開設して現役時代に掛金を積み立て、自分で運用して、60歳以降に受け取ることができる制度です。

受け取り方には、退職所得控除の対象となる「一時金」と公的年金控除の対象になる「年金」、両者のハイブリッドである「併給」があります。それぞれの控除の枠に収まるかを踏まえて検討しましょう。また、上図のように掛金は全額控除、運用益は非課税になるため、現役時代の負担がより小さくなってお得なのです。

次に、企業型のほうの説明をします。企業型は会社が毎月従業員の年金口座に積み立てして、社員自らが資産の運用を行う制度です。企業年金の代わりとなる制度で、実施している企業とそうでない企業がありますが、転職したあとも掛金は持ち越すことができるので、積み立てが無駄になることはありません。

(画像はイメージです/PIXTA)