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 アメリカの研究グループが、水と金属を反応させて「水素」を作る最適なレシピを考案したそうだ。

 燃やしても水しかでない水素は、未来のクリーンな燃料として期待されている。だが今の時点では、その水素を作るために化石燃料が使われており、製造段階で二酸化炭素が排出されてしまう。

 今回考案された「ガリウム」と「アルミニウム」の配合割合なら、最大効率で水素を作れるだけでなく、大量の電気も必要ない。

 化石燃料を使わない完全にクリーンな水素燃料実現へ向けた大きな一歩であるとのことだ。

【画像】 水素を作る魔法のレシピ

 水素を作る方法はいくつかあるが、今回の研究では、アルミと水を反応させ、水から酸素を取り除くという比較的簡単な化学反応で水素を発生させている。

 ひと工夫されているのは、「アルミニウム」に「ガリウム」という金属を混ぜた合金を使っている点だ。

 アルミガリウム合金自体は新しいものではないが、今回は走査型電子顕微鏡とX線回析で、両金属の最適な配合割合が突き止められている。

 その魔法の配合比は「ガリウム3:アルミ1」だ。

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 このとき水素は最大の効率で生成される。

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最適レシピで作られた合金と水が反応して、勢いよく水素の泡が発生している/image credit:Amberchan et al., Applied Nano Materials, 2022

室温と普通の大気圧で生成可能

 この合金には2つの役割がある。1つは、水との反応を邪魔するアルミの酸化膜を除去すること。

 もう1つは、水とよく反応するアルミ・ナノ粒子を生成することだ。このとき、ガリウムはナノ粒子がくっついてお団子になることを防いでくれる。

 これまでならアルミ・ナノ粒子を作るのは大変だったが、ガリウムのおかげで普通の大気圧と室温で簡単に生成できるようになった。これが魔法のレシピの魔法たる所以だ。

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走査型電子顕微鏡で見ると、ガリウムの母体にアルミニウムのナノ粒子が入っているのがわかる image credit:Amberchan et al., Applied Nano Materials, 2022

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未来の燃料となる水素を手軽に作り出すことが可能に

 この合金を使えば、既存の生産法の欠点だった大量の電気を消費することなく、水素を作り出すことができる。しかも反応させる水も選ばない。海水でも排水でも、どんな水でもいい。

 さらにアルミガリウムの混合は特に複雑なものではないし、生成された合金は、薬品につけて湿気から守ってやれば、3ヶ月は保存できる。

 また素材となるアルミはとても身近なものだ。捨てられるアルミ缶やアルミホイルなどを再利用してもいい。

 一方、ガリウムはもっと高価で、量も少ない。しかし、水素を生成したあと回収してやれば、性能はそのままに再利用できるという。

 このようにアルミガリウム合金には、たくさんのメリットがあるが、産業レベルに生産規模を拡大する方法など、まだまだ課題は多いとのこと。

 しかし完全クリーンな水素燃料を生産する方法として、大きな可能性を秘めていることだけは間違いなさそうだ。

 この研究は『Applied Nano Materials』(2022年2月14日付)に掲載された。

References:Scientists Find a Simple Way to Produce Hydrogen From Water at Room Temperature : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo

 
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室温で水と金属から「水素」を生成する最適なレシピを考案