2022年のアジア、アフリカラテンアメリカ、アラブ世界の女性作家の作品に贈呈されるドイツ文学賞リベラトゥール賞(LiBeraturpreis)が9月6日(現地時間/日本時間7日未明)に発表され、若竹千佐子著『おらおらでひとりいぐも』(河出書房新社刊)のドイツ語版『Jeder geht für sich allein』(ユルゲン・シュタルフ訳)が受賞をしました。
受賞にあたりまして若竹千佐子さんと訳者のユルゲン・シュタルフさん、ドイツ語版の出版社社長カティア・カッシングさんのメディア向けオンライン記者会見を本日、9月7日(水)16時より開催いたします。(会見取材のお申し込み・詳細につきましては、「メディア関係者限定の特記情報」をご覧ください)

今年のリベラトゥール賞候補作は、日本からは『おらおらでひとりいぐも』のほか、伊藤比呂美『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』や川上未映子『ヘヴン』の3作品、ほかナイジェリア、中国、チリ、イスラエル、ハイチ、アルゼンチンなどから全13作品がノミネート。そして最終候補作は、日本の3作品を含む全7作品がノミネートされていました。日本作品の受賞は本賞創設以来、初の快挙です。著者の若竹千佐子さんには今年開催(10月19~23日)のフランクフルトブックフェアで、本賞と賞金3,000ユーロが授与されます。なお『おらおらでひとりいぐも』は、ドイツ語版含め現在5つの国と地域で刊行されているほか、3つの国で刊行準備中です。

また、2020年より季刊文芸誌「文藝」(弊社刊)に連載していた若竹千佐子待望の芥川賞受賞第一作『かっかどるどるどぅ』が、「文藝」秋季号(7月7日発売)で連載最終回を迎えました。前作『おらおらでひとりいぐも』は “ひとりで生きる” ひとり語りの作品でしたが、新作『かっかどるどるどぅ』では “みんなで生きる” 群像劇へと変わります。前作発表以来5年の歳月を経て、著者、満を持しての新境地ともいえる作品です。単行本は2023年春に刊行予定、ご期待ください。
リベラトゥール賞は、前年にドイツで翻訳出版されたアジア、アフリカラテンアメリカ、アラブ世界の女性作家による作品を対象とした文学賞です。毎年、これら国々の女性作家によるすべての翻訳作品が自動的にエントリーされ、候補作(ロングリスト)発表ののち最終候補作(ショートリスト)を発表、そして受賞一作品が発表されます。

本賞は、上記地域の現代女性作家による作品のドイツ語訳版が、出版大国・ドイツの書籍市場であっても非常に少ないという状況を打開すべく、文学協会Litprom(ドイツ)により1987年に創設されました。これらの女性作家の声はメディアでも注目される機会が少なく、社会の中で弱く貧しい犠牲者であるという女性に対するイメージはいまだに根強く残っています。しかし現在、世界中で高まっている自信に満ちた女性たちの声を、もはや無視することはできないということが本賞の理念です。

リベラトゥール賞受賞者の多くは、受賞作のみにとどまらず他の作品も多数の言語に翻訳され、ブッカー賞(イギリス)やオレンジ賞(イギリス/現在の名称は「女性小説賞」)、ニュー・アカデミー賞スウェーデン)などの世界有数の文学賞を受賞、または最終候補に選ばれるなど、国際的に高く評価されています。

本賞はヘッセン科学芸術省(ドイツヘッセン州)が提供し、フランクフルト市(フランクフルト・アム・マイン)文化局が後援しています。
  • 若竹千佐子さん受賞コメント
リベラトゥール賞受賞にあたって
ドイツの名誉ある文学賞を戴けること、光栄です。片隅に生きる平凡な老年の女のひとり語りが外国の人たちにも届いた。私一人の力だけでなく、この本を訳してくださったユルゲン・シュタルフさん、応援してくださった方みなさんのおかげです。思い返せば文藝賞でデビューしたのが63歳、最近ようやく2作目も書きあがり、何事にも時間のかかる私ではありますが、改めてこれを励みに『おらおらでひとりいぐも』の主人公桃子さんと同様、おらはこれがらの人だ、まだ戦えると思って小説に精進したいと思っております。ありがとうございました。
  • 本書内容
24歳の秋、故郷を飛び出した桃子さん。住み込みのバイト、周造との出会いと結婚、2児を必死に育てた日々、そして夫の突然の死——。70代、いまや独り茶を啜る桃子さんに、突然ふるさとの懐かしい言葉で、内なる声たちがジャズセッションのように湧いてくる。おらはちゃんと生ぎだべか? 悲しみの果て、辿り着いた自由と賑やかな孤独。すべての人の生きる意味を問う感動のベストセラー。2020年映画化(監督:沖田修一)。

著者紹介 若竹千佐子(わかたけ・ちさこ
1954年岩手県遠野市生まれ。岩手大学卒業。55歳で小説講座に通いはじめ、8年の時をかけて本作を執筆。2017年、本作で第54回文藝賞を史上最年長の63歳で受賞しデビュー。翌年、第158回芥川賞受賞。待望の第二作『かっかどるどるどぅ』は2023年春刊行予定。

訳者紹介 ユルゲン・シュタルフJürgen Stalph)
1954年ドイツ生まれ。日本研究者、翻訳家。共著に『和独大辞典』(ドイツ語)。ドイツ語訳に安部公房『箱男』『燃えつきた地図』『カンガルー・ノート』、太宰治人間失格』、いとうせいこう『小説禁止令に賛同する』、町田康くっすん大黒』、吉村萬壱『ボラード病』、谷崎潤一郎『鍵』など多数。ドイツ在住。

ドイツ語版情報
書名:Jeder geht für sich allein
訳者:ユルゲン・シュタルフ(Jürgen Stalph)
出版社:カス フェアラーク(Cass Verlag)
仕様:109頁
初版発行:2021年2月15日

書誌情報
書名:おらおらでひとりいぐも
著者:若竹千佐子
[河出文庫]
税込定価:693円
仕様:文庫判/200頁
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309417547/
[単行本]
税込定価:1320円
仕様:46判/上製/168
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309026374/

配信元企業:河出書房新社

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