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物価高騰がとまらない。8月19日総務省が発表した7月の消費者物価指数は、天候による変動が大きい生鮮食品をのぞいても102.2。去年の同じ月を2.4%上回り、11カ月連続で上昇となった。

この物価高騰で気になるのが、年金受給者の家計だ。総務省が毎月発表している「家計調査」の〈夫65歳以上、妻60歳以上で構成する夫婦一組の世帯(無職世帯)の家計の収支〉によると、2022年の上半期(1〜6月)の非消費支出をふくめた月の総支出は平均26万8643円だった。

コロナの影響で2020年の支出額は25万円9304円まで減った。前年が27万929円だから1万円以上の減少だった。しかし、急激な物価の高騰もあって急速に以前の水準に戻りつつあるのだ。

2022年の年金受給額(社会保障給付)は平均21万8337円。年金だけだと、毎月5万306円、年間だと60万円以上の赤字になっている。しかも、この赤字額は年を経るごとに増えていくという。

■15年後には赤字は9万円まで拡大する

社会保険労務士で『結局、年金は何歳でもらうのが一番トクなのか』(青春出版社)などの著書がある増田豊さんはこう語る。

「本来、物価や給与の上昇とともに、年金受給額も増えていく仕組みでした。しかし、高齢化による財政悪化もあり、『マクロ経済スライド』という年金の給付抑制策がとられています。物価が上がっても、受給額は増えないのです」

現在の物価高騰は、アベノミクスによる大規模な金融緩和に端を発する円安に加え、世界的な原油高や穀物高、さらには世界経済の成長に日本が取り残されていることなど、複数の要因が複雑に絡み合ったもの。一朝一夕に解消するものではなく、今後も物価は上がっていくとみたほうがいい。

高齢化が今後も進むことから、年金の給付抑制策は今後も続いていくでしょう。社会保険料や税率も引き上げられることが懸念されます」(増田さん)

年金の受給額がそのままで、物価と税・社会保険料の上昇によって支出が毎年1%ずつ増えると仮定した場合、毎月の赤字額は5年後の2027年には約6万4000円、10年後の2032年には7万8000円、15年後の2037年には約9万4000円にまで拡大してしまう。

現在の物価上昇の勢いは、1%を優に超えているため、場合によっては、赤字額はもっと増えるかもしれない。

「こうした赤字を放置しておけば、老後のために貯めた資金があっという間に失われていってしまいます。いますぐできることから家計防衛していくことが重要です。まずは支出を見直しましょう」

そう語るのは、ファイナンシャルプランナーで、生活設計塾クルー取締役の深田晶恵さんだ。

「ムダな生命保険や医療保険、携帯電話料金などの固定費を見直せば、翌月から月1万〜2万円の支出が減らせることもあります。また物価が上がっている今は、生活費のなかでも、食品や日用品代などお財布から出ていく現金の流れを把握しておくことも大切なポイントです。レシートを見直したり、こまめにノートをつけたりして家計状況を振り返ることを心がけましょう」