今夏、Netflixで公開された話題作『呪詛』をはじめ、日本以外のアジア産ホラー作品が注目を集めている。そんな"アジアホラー"の魅力とオススメ作品をホラーマニア3人に聞く。有村 昆さんに続き、テレビで活躍中の映画プレゼンター、ジャガモンド・斉藤正伸さんのオススメホラーを紹介!

【画像】斉藤正伸さんオススメホラー『女神の継承』『ソウル・ステーション/パンデミック』

■全世界共通の恐怖という感情

映画って国を超えて影響し合う文化なんです。ある国で新しい表現が生まれると、それに影響された別の国の人が自国の文化的要素などによるアレンジを加えて新しい表現を生み出す、みたいな。

ホラー映画は特にそれが顕著なんですよ。なぜなら、恐怖は人間にとって一番わかりやすい感情だから。海外のコメディやラブロマンスって価値観に共感できないときもあるじゃないですか。でも、ホラーが表現する恐怖は全世界共通。だから世界中で、言語を超えてお互いに影響し、進化していくんです。

韓国とタイの合作『女神の継承』はタイの田舎の架空の土着信仰が題材になっていて、ひとりの女のコに取り憑(つ)いてしまった"何か"を祓(はら)う物語。

こういった設定は歴史的に『エクソシスト』とかまでさかのぼれますが、今作では西洋の悪魔をタイのローカルな精霊に置き換えているんですね。悪魔には十字架とか対処法があるけど、タイの精霊は祓い方がわからない。それが観客を不安にさせる要素になっている。

怒濤の恐怖エンターテインメント『女神の継承』韓国&タイ《日本公開2022年》舞台はタイ。若く美しい女性・ミンに何かが憑依し、人格が変わったかのように凶暴な言動を繰り返す。彼女の母は、祈祷師である妹のニムに助けを求めるが...... © 2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.
怒濤の恐怖エンターテインメント『女神の継承』韓国&タイ《日本公開2022年》舞台はタイ。若く美しい女性・ミンに何かが憑依し、人格が変わったかのように凶暴な言動を繰り返す。彼女の母は、祈祷師である妹のニムに助けを求めるが...... © 2021 SHOWBOX AND NORTHERN CROSS ALL RIGHTS RESERVED.

ほかにも、Jホラー的な、霊が映ってなくても不気味に見える画面づくりや"ジャンプスケア"といって海外でよくやられている、振り返ったら「ベロベロバー」みたいな驚かす怖さもある。他国で進化してきたホラー表現にタイ特有のアレンジをしたのがこの作品の魅力になっています。

また、本作はフェイクドキュメンタリーになっていたのもポイント。ドキュメンタリーって自分のよく知らない対象にレンズを向けて覗(のぞ)き見する行為じゃないですか。土着信仰という設定との相性が良かったと思います。

『女神の継承』
『女神の継承』

実写映画以外にもいいホラー作品はいっぱいあります。韓国のアニメ映画ソウルステーションパンデミックもぜひ見てもらいたいです。映画『新感染』前日譚(たん)で、ゾンビに襲われる怖さはもちろん、社会風刺的な要素がめちゃくちゃ入っている。ケガしたホームレスを誰も助けないという冒頭のシーンは実際の社会の残酷さを表現しているのでしょう。

社会派ホラーアニメーション『ソウル・ステーション/パンデミック』韓国《日本公開2017年》実写映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』の前日譚。監督はどちらもヨン・サンホが務める。ゾンビをテーマに社会の闇を描き出した長編アニメーション。DVD絶賛発売中 販売元:ブロードウェイ ©2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & Studio DADASHOW All Rights Reserved.
社会派ホラーアニメーション『ソウルステーションパンデミック』韓国《日本公開2017年》実写映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』の前日譚。監督はどちらもヨン・サンホが務める。ゾンビをテーマに社会の闇を描き出した長編アニメーション。DVD絶賛発売中 販売元:ブロードウェイ ©2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & Studio DADASHOW All Rights Reserved.

いいゾンビ映画って、ゾンビが何かしらの社会問題を表していることが多くて、この作品では"貧富の差"なんじゃないかと思うんです。

多くの登場人物がホームレスで、無視されてきた社会的弱者がゾンビとなって社会のシステムを壊す話になっている。この作品を見た後に『新感染』を見ると、また違った見方ができるようになるので併せてご覧ください!

『ソウル・ステーション/パンデミック』
ソウルステーションパンデミック

★明日10日(土)は、登録者数60万人超えのゲーム実況者・柏木べるくらさんのオススメホラーを紹介!

●斉藤正伸(さいとう・まさのぶ)
1991年生まれ、東京都出身。ジャガモンドのツッコミ担当。父の影響で見た『スピード』をきっかけに年間300本以上鑑賞する映画好きに。2021年は330本鑑賞した

テレビで活躍中の映画プレゼンター、ジャガモンド・斉藤正伸さんのオススメホラーは?