7年ぶりにテレビ番組を見るというライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は、9月5日(月)・12日(月)に2週連続放送の、月バラナイト「ワケあって、大金使います」(夜11:56~0:55 、TBS系)をチョイス

思い出話が全部面白い…「ウォーキングのひむ太郎」下北沢回が最高/テレビお久しぶり#14

■「ワケあって、大金使います」

人が大金を使っている様子が苦手だ。近年はYouTuberの動画のサムネに〇〇万円という文字が躍っているのも珍しくないし、実際に何千万、下手すれば何億という額の現金がYouTubeの画面に登場することだってある。できることならば、モザイクをかけてほしい。少なくとも私は、モザイクもなしにありありと大金を見ると、うしろに吹っ飛んでしまうのだ。

これはなぜなのか。単に自分が貧しいからなのかもしれないが、金への執着自体はそこまで無いと思っているし、贅沢をして暮らしたい、とも特段思わない。人は好きなことをして自由に生きていけばいいと思っているし、”好きなことで生きていく”というコピーも記憶に新しいYouTubeであればなおさらだ。そもそも見る見ないの選択だってできる。わざわざ見ておいてうしろに吹っ飛ぶくらいなら最初から見なきゃいいのであるが、しかし金の魔力についついつられてしまい、まんまと再生してはうしろに吹っ飛んでいる。

この感情の正体は結局、「金持ちが大金を使っててなんか気に食わねえから」でしかない。我ながら情けないが、好きなことで生きていくというのならば、私はこれからも他人をコイツは気に食わねえコイツも気に食わねえと脳内で切り捨てながら生きていくことになる。

そーんなのは、いーやだ、ということで、人が大金を使うところをフィーチャーした番組「ワケあって、大金使います」を視聴してみることに。いわゆる金持ちが湯水のように使うわけではなく、一般人が一世一代の大金を使う場面に密着するという趣旨の番組で、こういうのは別に嫌じゃないので、予想に反して気持ちよく鑑賞することができた。

番組の中で4人の人物が登場するのだが、とりわけ印象的だったのが、プールの購入を検討している番場さんだ。プールそのものに加え、温水器や水中照明、掃除ロボットなど、色々なオプションが加わり1200万円もの値段に。担当者から話を聞き、プールを眺めながら悩み、最終的に書類にサインをする、その一部始終が映像に収められていて、とても興味深い。彼自身は会社を経営する社長であるとはいえ、1200万だもん、そりゃそうだよな、悩むのが普通だよ。ゆっくり考えて決めな?と、なぜだか先輩ヅラをしながら見てしまった。

そんな彼がプールを購入しようと思った理由は、日々働いてくれている社員たちのために、彼らが自由に使える憩いの場を提供しようと考えたからであると明かされる。リゾート地のヴィラをイメージしたという、本人直筆の完成イメージがほほえましい。

書類にサインをし、ついにイメージの実現に大きく近づいた番場さんは、ZOOM上で行われる定例会議で、社員たちに「皆さんが自由に使える、プール付きの戸建てを作ることに決めた」と満を持して報告する。すると、ZOOM上に映った彼らが、一斉に拍手を始める。このカタルシスが凄い。一世一代の決断を下した彼への、最大限の祝福である。ZOOM越しの拍手、本当にぐっときたので、是非多くの人に見ていただきたい。

人には人の人生があり、大金を使うのには、それだけのワケがある。番組のラスト、演者であるアルコ&ピース平子がつぶやいた「伊勢丹ですれ違う人をチッ、金持ちが、なんて思うのはもうやめよう」という一言に、私も襟を正される思いであった。番組の持つ趣旨をそのままガツンと食らってしまった悔しさはあるが、ここは素直に、非常に学びの多い内容でありました。また鑑賞させていただきます。敬具

「テレビお久しぶり」/(C)犬のかがやき