女優の小雪が主演を務める、世界で初めて盲ろう者の大学教授となった福島智(ふくしまさとし)さんの生い立ちを描く映画『桜色の風が咲く』より、予告編と場面写真が解禁。併せて、福島さんが本作に寄せたコメントも到着した。

【動画】小雪、12年ぶりの主演! 映画『桜色の風が咲く』予告編

 9歳で失明、18歳で聴力を失いながらも世界で初めて盲ろう者の大学教授となり、東京大学の教授として教鞭をとっている福島智さん。2003年にはTIME誌による「アジアの英雄」に選出され、現在は、東京大学先端科学技術研究センターバリアフリー分野教授を務めている。

 本作は、そんな智さんと母・令子さんの実話に基づく、智さんの幼少期から大学受験までの姿を描く物語。ひとつひとつ困難を乗り越えながら、人生の可能性を広げていく2人の姿が胸に迫る温かな人間賛歌だ。劇中では、令子さんが盲ろう者である智さんとの日常の中から考案した、リアルタイムで言葉を伝える新たなコミュニケーションの手段“指点字”の誕生秘話も描かれている。

 小雪は、自身の可能性を諦めない智を支える、おおらかで凛とした母・福島令子を演じる。智役には、『朝が来る』など多数のドラマや映画に出演してきた気鋭の若手俳優・田中偉登。夫・正美役を吉沢悠が務めるほか、リリー・フランキー、朝倉あきが顔を揃える。監督は、『最後の命』『パーフェクト・レボリューション』の松本准平。

 教師の夫、3人の息子とともに関西の町で暮らす令子。末っ子の智は幼少時に視力を失いながらも、家族の愛に包まれて天真爛漫に育つ。

 予告編は、令子と智が「智、宿題終わったの?」「半分やったで」「ダメでしょ半分じゃ」「僕は片目だから半分でええねん」とユーモラスなやりとりをする姿や、9歳で失明してしまう智が家族とともに草花と触れ合ったり、海辺で過ごす様子が映し出されるところから始まる。そして、高校生となり家族の元を離れ、寮生活をスタートさせる智。「僕には耳がある、だから大丈夫や」と語り、心配でいっぱいの令子を安心させる。

 しかし、ある日智が実家に帰省した時、令子は智の耳の状態が良くないことに気づく。聴力まで失うことで、智はまるで宇宙に放り出されたような孤独を感じていた。そんな姿を見た令子は、智と努力する日々をはじめる。一緒に走って運動療法に励み、食事療法にも取り組み、さらにある日、智の指に、点字を打つようにして言葉を伝える。

 「指点字なら読める。これならわかるわ」と感謝を伝える智。そして「僕は考えることができる。言葉がある。僕がこういう状態になったのは、こういう僕でないとできないことがあるからだ」と未来を向いていく。「私たち家族は、智にたくさん教えられてきたんだ」と語る令子。最後は、令子と智が桜の木の前に立つ姿に「この世界には、それでも光が満ち溢れている」というキーフレーズが重なって幕を閉じる。

 場面写真は8点。令子(小雪)が智(田中)を優しく見つめるカットや、智の父・正美(吉沢)と令子が苦悩する姿、微笑ましい家族写真、高校での友人との出会いのシーンなど、さまざまな困難に直面しながらも歩み続けてきた母と息子の人生が垣間見られる写真となっている。

 本作について、智のモデルとなった福島さんは「実話に基づいているとはいえ映画ですので、さまざまな脚色やフィクションは当然含まれています。それでも、幼いころの義眼のエピソードや運動療法に取り組んでいた時のエピソードなど、事実に基づいていることも少なくありません。中でも、1981年の3月のある朝、『病院に遅れるで』と、文句を言いに台所に行った私に、母が突然、両手の指で私の指に妙なことをし始めたこと、つまり、『指点字』の始まりの場面は、現実と映画がそのまま連続しているように感じました」と感想をコメント。さらに「ただし、小雪さんは母よりも指が細く、背がずっと高い。セリフもすっきりした東京言葉で、関西のおばちゃん言葉ではない。だけど、共通点もあります。それは、『生きるパワーがある』ということです」と付け加えている。

 映画『桜色の風が咲く』は、11月4日より全国順次公開。

 コメント全文は以下の通り。

東京大学先端科学技術研究センターバリアフリー分野教授 福島智さん コメント全文

 私・福島智は今、59歳。母・令子は今、89歳。私は東京で妻と、母は神戸で一人で、おかげさまでまずまず元気にすごしています。この映画は、私のごく幼いころから、20歳ころまでの母と私の歩みを描いた作品です。シナリオを20バージョン以上も拝見し、いろいろと感想や意見をお伝えしました。また、母・令子役の小雪さんや智役の田中さんたちとも直接お会いして、雑談もまじえながら、点字や指点字の練習を一緒にしました。なので、私の心の中にはこの映画が鮮やかに息づいています。

 実話に基づいているとはいえ映画ですので、さまざまな脚色やフィクションは当然含まれています。それでも、幼いころの義眼のエピソードや運動療法に取り組んでいた時のエピソードなど、事実に基づいていることも少なくありません。中でも、1981年の3月のある朝、「病院に遅れるで」と、文句を言いに台所に行った私に、母が突然、両手の指で私の指に妙なことをし始めたこと、つまり、「指点字」の始まりの場面は、現実と映画がそのまま連続しているように感じました。

 ただし、小雪さんは母よりも指が細く、背がずっと高い。セリフもすっきりした東京言葉で、関西のおばちゃん言葉ではない。だけど、共通点もあります。それは、「生きるパワーがある」ということです。

映画『桜色の風が咲く』場面写真 (C)THRONE/KARAVAN Pictures