TOKYO MXでは、週末のゴールデンタイムに名作映画を放送中。地上波では見られる機会が少なくなった作品も多数ラインナップされている。9月18日(日)は、高倉健さんの代表作シリーズ第8弾「網走番外地 決斗零下30度」(夜7:00-8:36、TOKYO MX1)が放送される。

【写真】少女を肩車する高倉健“橘”

■「網走番外地」シリーズとは?

「網走番外地」(1965年)で、北海道・網走刑務所の囚人たちの逃亡劇を描き、大ヒットした石井輝男監督による任侠アクション。以降、シリーズ化され、石井輝夫監督で全10作が製作された。

実は、メインタイトルが同じシリーズものではあるが、ストーリーが続いているわけではない。嵐寛寿郎さん、田中邦衛さん、丹波哲郎さん、大原麗子さん、三原葉子さんら、おなじみといえる俳優陣がいるものの役柄や設定は異なっており、続けて見ていなくても楽しむことができる。

■橘が刑務所仲間の大槻と炭鉱で再会するが…

シリーズ8作目となる「網走番外地 決斗零下30度」は、北海道のノサップにある炭鉱を舞台に物語が繰り広げられる。タイトルにある通り、氷点下の厳しい寒さの中での決闘が見どころだ。

網走刑務所で刑期を終えた橘真一(高倉)は、汽車の中でノサップの炭鉱にいる父の元に行くという少女・チエ(吉野比弓)と出会い、同行することに。炭鉱に到着すると、チエの父親は網走刑務所仲間の大槻(田中)だった。

再会を喜んだのもつかの間、橘は炭鉱が総支配人の関野(安倍徹)や炭坑長の蝮(田崎潤)たち一派が専横し、劣悪な労働環境だと知る。

■硬派な橘とおしゃまな少女とのやり取りに心温まる

2週前にオンエアされたシリーズ6作目の「―南国の対決」では、主人公・橘が沖縄へ向かう道中で少年と出会った。今回は、彼よりももっと幼い少女・チエと出会ったことで核の物語が始まる。

汽車に1人でいたチエに声をかけた橘は、「この子を表記の場所まで届けてください」と書かれた札を首から下げているのを見つけて、炭鉱に連れて行くことにするのだ。

言葉を発しないチエにジェスチャーを交えて会話しようとする橘だが、チエは不審者と口を利いてはいけないと言われたことを守っていただけ。

本当は口が達者でおしゃまなチエと硬派な橘とのやり取りに、クスっと笑って心温まる。だが、本作は任侠アクション。その後は熱い戦いが待っている。

日本刀、猟銃を手に馬に乗って決闘!

炭鉱を仕切る一派は鉱山の権利書をオーナーの娘に奪い返され、ある悪行を企てる。それに大槻ら坑夫が巻き込まれ、憤る橘。刑務所仲間の鬼寅(嵐)も駆け付けての闘争に。

橘たちも敵方も、大雪原での機動力となる馬に乗り、日本刀や猟銃、拳銃での激しい戦いは、さながら和風西部劇といったところ。雪が降り積もる一面の銀世界での騎馬を遠景でとらえた画も見どころのひとつ。

そのクライマックスでの戦いでは凛々しい橘だが、クラブのマスターで元ボクサーの白木(丹波)とちょっとした小競り合いになったときには、繰り出すパンチをすべてよけられてしまう場面も。スマートな身のこなしの白木を演じる丹波さんに対して、かなわない様子で悔しがる橘を表現する健さんがキュートだったりする。後年の健さんは寡黙な渋さが大きな魅力の一つだったが、本シリーズの若き日ならではの演技にも魅了される。

◆文=ザテレビジョンシネマ

高倉健“橘”と丹波哲郎“白木”/(C)東映